著者
八幡 耕一
出版者
龍谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究から得られた示唆は、情報通信技術の革新が、先住民族の権利宣言の立案過程とその議論にも影響を及ぼし、国家が先住民族テレビを制度的に支援する意義が、起草・交渉の過程を通じて低減または変質していったと推察される点である。また、事例分析からは、国内法における先住民族問題の認知が重要な役割を果たすことは明らかであり、技術革新だけに依拠していては、先住民族テレビの成立・存続は十分に達成しえないと考えられる。
著者
八幡 耕一
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.3-10, 2013-12-15

本稿は,情報文化学の理論的深化を目的に,「ハクティビズム」と呼ばれるサイバー空間を中心に展開される集合的な社会運動を事例として,情報文化空間をめぐる主体間のせめぎ合いについて考察する。その際,フランスの歴史家・思想家であるミシェル・ド・セルトーが論じた,日常的実践にかかる「戦術」の概念をその理論的な枠組みとして援用する。これにより,情報文化空間をめぐる主体間の力学や駆け引き等についてさらなる理解を試みる。本稿の考察は,ハクティビズムがセルトーのいう「戦術」を越えたところにある,アノニマスな情報文化主体による抵抗あるいは対抗の実践として理解可能であること,そして情報文化空間の公益性(とその変質)がハクティビズムと関係することを明らかにする。本稿の考察は同時に,ハクティビズムも含む情報文化空間内での主体間のせめぎ合いをさらに探究していく必要性を提起する。