著者
八木橋 勉 齋藤 智之 前原 紀敏 野口 麻穂子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.63-65, 2014-10-31 (Released:2017-07-26)

従来,カブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(Fraxinus griffithii)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(Fraxinus japonica)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2009-01-23)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6∼8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3∼5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
八木橋 勉 齋藤 智之 前原 紀敏 野口 麻穂子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.63-65, 2014

従来,カブトムシ(<i>Trypoxylus dichotomus septentrionalis</i>)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(<i>Fraxinus griffithii</i>)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(<i>Fraxinus japonica</i>)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
著者
酒井 敦 野口 麻穂子 齋藤 智之 櫃間 岳 正木 隆 梶本 卓也
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.374-379, 2022-12-28 (Released:2023-01-21)
参考文献数
25

長伐期施業は多様な森林を造成する選択肢の一つである。スギやヒノキでは高齢林の成長データが充実しているが,カラマツに関しては少ない。そこで,秋田県の120年生カラマツ人工林で成長経過を調べ,多雪地におけるカラマツ人工林の長期的な成長や適切な伐期について検討した。カラマツ林には四つの調査区が設定され,初期段階に強度の異なる間伐が実施された。120年生時の立木密度は160~240本・ha-1,胸高直径は平均45.8~56.0 cm,樹高は平均31.6~36.6 mだった。直近10年間に冠雪害による樹高成長の鈍化がみられたが,直径は旺盛に増加していた。そのため,直近の材積成長量は5.5~8.6 m3・ha-1・yr-1と120年生になっても成長を維持していた。間伐材積を含めた総材積は1,035~1,173 m3・ha-1であり,間伐強度や回数の影響は小さかった。総平均成長量は約60~90年生時に最大となり,材積成長の面から伐期の目安となり得る。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios V. 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008 (Released:2011-04-05)

北海道北部の森林では、ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6〜8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に、9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ、それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド、ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は、周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし、シラカンバについては、施業後3〜5年目の時点では促進効果が認められていたものの、今回の結果では競争効果に転じていた。一方、生存率については、多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して、周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから、多様な樹種の定着を図るうえで、除伐や下刈りの実行は、少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
原田 茜 吉田 俊也 Resco de Dios Victor 野口 麻穂子 河原 輝彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 = Journal of the Japanese Forest Society (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.6, pp.397-403, 2008-12-01
参考文献数
14
被引用文献数
4

北海道北部の森林では, ササ地を森林化させるために掻き起こし施業が広く行われてきた。施業から6&sim;8年が経過した樹冠下の掻き起こし地を対象に, 9種の高木性樹種を対象として樹高成長量と生存率を調べ, それらに影響する要因(植生間の競争・促進効果)を明らかにした。成長量と生存率が高かったのはキハダとナナカマド, ともに低かったのはアカエゾマツであった。多くの樹種の成長は, 周囲の広葉樹または稚樹以外の下層植生の量から促進効果を受けていた。ただし, シラカンバについては, 施業後3&sim;5年目の時点では促進効果が認められていたものの, 今回の結果では競争効果に転じていた。一方, 生存率については, 多くの樹種について周囲の針葉樹による負の影響のみが認められた。密度または生存率の低かった多くの樹種に対して, 周囲のシラカンバやササの回復が負の要因として働いていないことから, 多様な樹種の定着を図るうえで, 除伐や下刈りの実行は, 少なくともこの段階では有効ではないと考えられた。
著者
野口 麻穂子 奥田 史郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.4, pp.192-195, 2012-08-01 (Released:2012-09-13)
参考文献数
26
被引用文献数
2

高知県東部の暖温帯域に位置するスギ人工林皆伐跡地において, 皆伐5年後から11年後までの林分構造と種組成の変化を明らかにした。調査地では, 皆伐5年後の2003年の時点で胸高直径2 cm以上の広葉樹の幹密度が11,300本 ha−1に達し, 調査期間中一貫して増加した。2009年には胸高断面積合計が29.8 m2 ha−1に達した。個体の約65%が多幹個体であったことから, 前生樹からの萌芽再生が更新に重要であったことが示唆された。期間中の林分構造と種組成の変化から, クサギなどの先駆性の低木種の大部分が枯死し, 常緑広葉樹林の林冠構成種, 特にシイ類が優占する傾向が強まったことが示された。これらの結果から, 本研究の調査地では針葉樹人工林の皆伐後に常緑広葉樹林が成林し, その植生回復過程は, これまでに報告されている萌芽更新由来の常緑広葉樹二次林の遷移とおおむね同様の経過をたどっていると考えられた。
著者
宮本 和樹 奥田 史郎 稲垣 善之 小谷 英司 野口 麻穂子 伊藤 武治
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.21-26, 2009
参考文献数
32
被引用文献数
1

四国のヒノキ人工林において本数率30〜50%の間伐を行い,5年経過後の残存木の成長と葉面積指数(LAI)を林分間で比較した。プラントキャノピーアナライザ(LAI-2000,Li-Cor社)を用いて測定した2007年における50%区のLAIは30%区と同程度の値を示し,強度間伐区において葉量が速やかに回復していることが示唆された。5年間の胸高断面積合計(BA)の増加量についても30〜50%区間で顕著な差は見られなかった。個体レベルの成長についてみると,間伐により単位BAあたりおよび個体あたりのLAIが大きくなるほど幹胸高直径の成長速度(中央値)は増加した。本調査地においては,これまでのところ強度な間伐による残存木への著しい負の影響は現れておらず,間伐率が高くても胸高断面積合計ベースの林分成長には従来の間伐と比べて差がほとんどないことが示された。またその要因として,個体あたりの葉量の増加が残存木の個体成長を促進していることが示唆された。
著者
成松 眞樹 八木 貴信 野口 麻穂子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.167-175, 2016
被引用文献数
1

<p>カラマツコンテナ苗の植栽適期を明らかにするために,5月から11月の各月に苗を植え,翌月以降に掘り取って,活着と根,樹高,地際直径の成長を植栽月で比較した。植栽月は当年と翌年の成長に影響し,植栽月によっては根と樹高の成長が連関した。苗は各植栽月で97% 以上の活着率を示したが,秋植えでは根鉢からの根の伸長量が減少した。8月以前は地温が高く迅速に根が伸長し,10月以降は地温が低く根の伸長が抑制されたと考える。植栽当年の樹高成長は5月と6月の植栽でのみ明瞭だった。そのピークは各々8月と9月に現れ,根長成長ピークから1カ月遅れた。7月以降の植栽では,樹高成長が根長成長後に生じるカラマツの特性により,樹高成長開始前に秋を迎えたと考えられる。植栽当年11月の地下部重量は早い植栽月で大きく,植栽翌年7月までの樹高成長率と正の相関を示した。その結果,植栽当年11月にみられた樹高の差は,その1年後でも完全には回復せず,11月植栽苗の樹高は,8月以前の植栽苗より小さかった。本研究の結果は,カラマツのコンテナ苗は春から秋まで植栽可能だが,9月以降の植栽は冬季枯損や植栽翌年までの成長不良のリスクが高まる可能性を示唆している。</p>
著者
野口 麻穂子
出版者
国立研究開発法人森林総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

斜面崩壊が冷温帯林の更新初期過程に果たす役割を明らかにするため、2013年8月の大雨に由来する斜面崩壊跡地と、隣接する未攪乱の林床で実生の動態を調べた。2014年に定着した実生は、複数の林冠構成種において斜面崩壊跡地に多く、斜面崩壊による地表攪乱が定着を促進していることが示された。小型の種子を持つスギとウダイカンバの実生は、斜面崩壊跡地でのみ認められたが、落下種子量が少なく、実生の生存率も低かったことにより、優占には至らなかった。また、斜面崩壊跡地内では、攪乱タイプ(発生域、流走域、堆積域)の違いが、土壌の水分条件を介して実生の成長と植生回復のプロセスに影響を及ぼしていることが示唆された。