著者
石原 哲 小林 覚 前田 真一 斉藤 昭弘 兼松 稔 栗山 学 坂 義人 河田 幸道 小口 健一 小林 克寿 出口 隆 北島 和一
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.1291-1295, 1991-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

血液透析患者における膿尿, 細菌尿の実態を知る目的で, 尿路感染症の急性症状を示さない時期に尿検査を実施した結果を報告する.尿沈渣白血球数は5コ/hpf以上が59.7%, 10コ/hpf以上が43.5%, 細菌尿は104CFU/ml以上が29.8%, 105CFU/ml以上が21.0%と, いずれも高頻度であった. 膿尿, 細菌尿の頻度に有意な性差はなかった. 腎炎群, 糖尿病腎症群間にも有意差は認められなかったが, 多発性嚢胞腎が原疾患である症例では, 膿尿, 細菌尿の程度が高い傾向が認められた.1日尿量と膿尿および1日尿量と細菌尿の分布および統計学的検討より, 少なくとも1日尿量400ml以下の場合には通常の基準を用いて感染尿の決定をすることは好ましくないと考えられた.
著者
兼松 稔
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1140-1160, 1983-07-20
被引用文献数
1

尿路における難治性感染症の問題のひとつに混合感染症の存在があり, また最近とくに臨床上使用頻度が高いβ-lactam系薬剤の不活化の問題として, β-lactamaseの存在がある.著者は尿路混合感染症におけるβ-lactamase産生菌の重要性に着目し, まず混合感染の臨床的特徴を把握するために, 全国的規模で行われた well controlled studyの複雑性尿路感染症2218例について種々の臨床統計学的検討を加え, 次に2種の細菌の組合せによる試験管内混合培養実験を施行し, 以下の結論を得た.1) 総合臨床効果は単独感染例に比べて混合感染例で有意に低く, その理由は細菌尿効果が低いためであった.この傾向は penicillin系薬剤やβ-lactamaseに比較的不安定な cephem系薬剤投与例に顕著であった.2) 投与薬剤別に細菌消失率を検討したところ, penicillin投与例では感受性菌の消失率が単独感染例に比べて混合感染例に有意に低かった.