著者
石原 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

1.精子の活性度をATP量をもって測定する場合、ATPの抽出操作までと抽出操作中の損失が第一の課題となったが、以下の点が判明した。(1)射精後の時間経過による変動が大きかった。これは発現時間とその後の推移から考えて単にATP量の自然な減少のみではなく、射精後の精液の液化現象も関連していると思われ、追加検討が必要であると思われた。(2)希釈操作による影響は回収率から検討した結果、特に認められなかった。(3)抽出方法は化学的に行なう方法を用いたが、抽出時間などの影響は少なく、特に技術的な問題がなかった。(4)最終的にATP量をルシフェリン=ルシフェラーゼ系発光分析で定量する時点で、イオン強度が高い場合などでは発光が阻害されるため、検体を採取してから精漿などを除去する洗浄操作を加える必要性が示唆された。(5)(4)以外の点では最終的な定量法に特に問題はなかった。2.通常の凍結・解凍を行なった場合、ATPが大量に消費されるためか、活性は一割程度となった。緩衝液等の検討でこれを防止することを試みたが、満足な結果が得られなかった。ATP自身は凍結・解凍を行なっても良好に保存されることが確認された。このため、完全にATPを抽出して凍結保存できる方法のうち、臨床の現場で容易に実施できる方法を求めて継続検討中である。
著者
石原 哲也 平田 幸一 辰元 宗人 山崎 薫 佐藤 俊彦
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.180-186, 1997-06-25 (Released:2009-09-16)
参考文献数
30

一過性全健忘 (TGA) の発症機序については, 未だに統一した見解は得られていない.われわれは, 従来の臨床的およびMRI, SPECTによる画像診断的検討に加え, proton MRspectroscopy (1H-MRS) を用い, その成因に関する検討をおこなった.TGAの急性期におけるSPECTでは, 側頭葉内側および基底核を中心とした脳血流の低下が示唆された.一方, 側頭葉内側および基底核部における急性期の1H-MRSでは, 虚血性変化の急性期にみられるようなコリン, クレアチンの低下や乳酸の増加は認めず, 脳細胞の代謝異常または脳機能の低下を示すとされるN-アセチルアスパラギン酸 (NAA) の相対的な低下のみがみられた.この結果から, TGAの発症には必ずしも一過性脳虚血発作と同様なatherothrombo-embolicな機序による脳血流低下のみが関与するものではないことが示唆された.
著者
石原 哲 小林 覚 前田 真一 斉藤 昭弘 兼松 稔 栗山 学 坂 義人 河田 幸道 小口 健一 小林 克寿 出口 隆 北島 和一
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.1291-1295, 1991-09-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

血液透析患者における膿尿, 細菌尿の実態を知る目的で, 尿路感染症の急性症状を示さない時期に尿検査を実施した結果を報告する.尿沈渣白血球数は5コ/hpf以上が59.7%, 10コ/hpf以上が43.5%, 細菌尿は104CFU/ml以上が29.8%, 105CFU/ml以上が21.0%と, いずれも高頻度であった. 膿尿, 細菌尿の頻度に有意な性差はなかった. 腎炎群, 糖尿病腎症群間にも有意差は認められなかったが, 多発性嚢胞腎が原疾患である症例では, 膿尿, 細菌尿の程度が高い傾向が認められた.1日尿量と膿尿および1日尿量と細菌尿の分布および統計学的検討より, 少なくとも1日尿量400ml以下の場合には通常の基準を用いて感染尿の決定をすることは好ましくないと考えられた.
著者
石原哲男編著
出版者
日本髪資料館
巻号頁・発行日
2004
著者
松橋 亘 梅津 荘一 佐々木 勝海 石原 哲
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.501-505, 2003-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
16

足底の発汗過多を主訴とする足底多汗症に対して内視鏡的腰部交感神経遮断術を行い,検討を加えた.対象は4例7肢.検討項目は年齢,性別,多汗症に関する家族歴と既往歴,観察期間,発汗過多部位,手術時間,術後入院期間,遮断方法,発汗停止部位,代償性発汗部位,術後合併症.結果は全例で治療が有効であり,最長40カ月の経過観察で再発を認めなかった.重篤な術後合併症は男性の1例で一過性の勃起障害を認めた.内視鏡的腰部交感神経遮断術の手術手技は手術用手袋に600~800mlの生食を注入し人工的な後腹膜腔を作製した.次いで炭酸ガスで8~12mmHgに保ち, 3ないし4本のトロッカーから腰部交感神経幹L2-4の範囲を電気凝固ないしは超音波凝固により遮断した.神経節の部位は術中のX線で確認した.内視鏡的交感神経遮断術は手掌多汗症と同様に足底多汗症でも適応となり得る術式であることが示された.
著者
森村 尚登 櫻井 淳 石川 秀樹 武田 宗和 泉 裕之 石原 哲 有賀 徹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.921-929, 2008-09-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
8

背景:市民が傷病の緊急性を判断するにあたり医学的な観点で看護師及び医師が24時間体制で相談に応じ,救急車要請適応の判断や症状に応じた口頭指導や受診科目・医療機関情報を提供するため,2007年 6 月に救急相談センター(受付番号#7119,以下救急相談センター)が開設された。目的:本研究の目的は,緊急度判断のプロトコールに基づく電話救急医療相談の現状と課題について検討することである。方法:予測し得る相談対象者の主訴ごとに90のプロトコールを作成した。緊急度のカテゴリーは,(1)救急車要請を必要とする病態(赤),(2)救急車要請の必要はないと判断できるが,少なくとも1時間以内の緊急受診を必要とする病態(橙),(3)6 時間以内を目安とした早期受診を必要とする病態(黄),(4)当日ないし翌日日勤帯の病院受診を必要とする病態(緑)の 4 段階とした。開始後 3 か月間の交信記録を集積して検討した。結果: 3 か月間の相談件数6,549件中プロトコール使用率は75.7%で,小児の発熱,小児の頭頸部外傷,異物誤飲の順に使用頻度が高かった。プロトコールに従った緊急度判断は,赤 24.6%,橙 29.4%,黄 23.7%,緑 22.4%であった。諸因子を勘案して最終的に赤と判断した925例中救急車搬送は786例で,うち病院初診時重症度が判明した673例中の30.9%が緊急入院していた。結論:赤カテゴリー以外の判断は結果として救急車需要増加の対応に寄与したと考えられ,他方赤カテゴリーと判断した症例のうち緊急入院を要した症例が存在したことから,プロトコールに基づく緊急度判断が緊急性の高い患者の早期医療機関受診に寄与したといえる。プロトコール導入によって対応が標準化され,相談者の受診行動に影響を与えたと考えられるが,今後はデータ集積を継続し更なる検討が必要である。