著者
細見 彰洋 内山 知二
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.44-50, 1998-01-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
16
被引用文献数
7 8

ネコブセンチュウが生息し, かつ生育障害の発生している大阪府下のイチジク栽培圃場から土壌を採取し, これを接種していや地を起こさせた圃場の土をいや地土壌として実験に供した.いや地土壌, あるいはこれを添加した用土でのポット試験では, 挿し木イチジクの萌芽や発根が阻害されて活着率が低下し, 活着した個体の生育も著しく劣った.いや地土壌を予め60℃で2時間湯煎し, いや地土壌に含まれるネコブセンチュウを死滅させた場合, このような生育阻害は軽減されたが, 対照土壌に比べると活着率が低く, 活着しても新梢や根の生育が劣った.ネコブセンチュウ幼虫を, ポットで生育中の挿し木イチジクの用土に添加すると, 新梢や根の生育が抑制された.しかし, この抑制程度は, ほぼ同数のネコブセンチュウ幼虫を含むいや地土壌を添加した場合に比べてはるかに軽微であった.静止液法による養液栽培で生育中のイチジクに対し, 培養液にいや地土壌の懸濁液を添加すると, 根部へのセンチュウの寄生がなくても新梢や根の生育が著しく抑えられた.この生育抑制は懸濁液をメンブレンフィルターで濾過したり電子レンジで2分間の加熱処理することで消滅した.以上から, 本実験で使用したいや地土壌には, センチュウ以外の強い生育阻害要因が存在すると考えられた.この要因が単一のものかどうか不明だが, 生育阻害が, いや地土壌やその懸濁液を熱処理することによって軽減もしくは消滅したり, メンブレンフィルターによる濾過で消滅することから, この要因は微生物に由来する可能性が高い.