著者
内海 さやか 菅野 武 大友 正隆
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-829, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)阻害薬は安全性,忍容性に加え,比較的良好な血糖改善効果があり,多剤との併用が可能であることなどから急速に処方が増加している.しかし,重大な副作用として,腸閉塞が報告され,開腹手術や腸閉塞の既往のある患者には慎重投与である.今回我々は,リナグリプチンが関与した可能性のある麻痺性腸閉塞を経験した.本症例では,腹部手術歴はなく,髄膜炎の診断で入院加療中であった.リナグリプチンの投与後,嘔吐,腹痛で発症し,同薬の中止と保存的加療にて腸閉塞は治癒した.既往の脳出血や髄膜炎などの神経疾患の存在や糖尿病性ガストロパレーシスが本症例の腸閉塞発症に関与していた可能性がある.中枢性,末梢性にかかわらず神経疾患が基礎にある症例では,DPP-4阻害薬を使用する際は,たとえ腹部手術歴がなくとも,腸閉塞が起こり得ると念頭に置く必要がある.
著者
木田 真美 吉越 仁美 小西 秀知 内海 さやか 佐藤 修一 小泉 勝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.540-547, 2017-08-30 (Released:2017-08-30)
参考文献数
19

2型糖尿病患者は年々増加傾向で,加齢に伴い種々の臓器障害を合併する.腎機能障害が高率にみられる高齢者では,薬剤の選択・用量調整が重症低血糖回避のために必要となる.汎用されているDPP-4阻害薬の中で,胆汁排泄型リナグリプチンを75歳以上の39例に,新規・上乗せあるいはシタグリプチン,ビルダグリプチン常用量からの切り替え投与を行い,血糖及び肝腎機能,脂質の変動を観察した.75歳未満75例と比較すると,6か月後の血糖,HbA1cが新規および切り替え両群で有意に改善し,全体の改善度も高かった.Crea>1.0 mg/dLの腎機能障害例でもHbA1cは有意に改善し,肝腎機能悪化や脂質代謝異常,低血糖,体重増加その他の副作用もなかった.高齢2型糖尿病患者において,腎機能障害に関わらず,リナグリプチンは単一用量で安全に使用でき,有用な薬剤と考えられた.