- 著者
-
内海 真生
- 出版者
- 筑波大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
本研究は、申請者自身が開発した採水機ROCSの時系列採水機能を用い、高温熱水噴出孔とその周辺環境に生息する微生物の増殖速度や増殖特性について現場培養から定量評価することを目的に、熱水噴出孔域で使用できる新型微生物培養装置を開発・作成する。具体的には、申請者が中心となり開発した深海用新型採水機(ROCS)と本申請対象である新型培養装置を組み合わせた現場培養実験を通じて、熱水噴出孔生態系内の各種微生物群集の増殖速度やメタン酸化速度など微生物に由来する各種活性の測定と定量評価を試みる。研究最終年度であるH22年度は、まず、チタン製培養槽を用いてH22年3月に無人潜水艇「ハイパードルフィン」を使用し鹿児島湾熱水噴出孔で行った現場培養実験の微生物群集解析を行った。また、有光層下に存在する海洋性古細菌群集の代謝特性を現場培養で測定することを目的に静岡県焼津市沖駿河湾の水深400m環境での基質添加現場培養実験を実施した。鹿児島湾若尊火口海底水中には、全菌数として7.2×10^5 cells/mL存在し、その内訳は真正細菌が4.5×10^5 cells/mL、ユーリアーキオータ(7.0×10^4 cells/mL)、クレンアーキオータ(4.1×10^4 cells/mL)であった。全菌数の値は、一般的は外洋海水の値より1桁高い。現場微生物増殖速度は基質添加系で真正細菌およびクレンアーキオータ群集とも負の値を示した。駿河湾400m水深現場培養実験においても海水置換、基質添加および培養試料の時系列現場固定に成功し、基質添加現場培養から400m水深の真正細菌およびクレンアーキオータ群集の増殖速度を測定した。本研究の結果、潜水艇や調査船・漁船を利用した、任意の水深において基質添加可能な現場微生物培養装置の開発にほぼ成功した。