著者
福田 朱里 内海 真生 杉浦 則夫 佐竹 隆顕
出版者
日本水処理生物学会
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.9-18, 2007 (Released:2018-03-10)
参考文献数
28

筑波大学構内の沼沢「松美池」において淡水産巻貝有肺類であるサカマキガイ(Physa acuta Draparnaud)とヒメモノアラガイ(Austropeplea ollula Gould)は同じnicheを占める競争関係にあり、ともに歯舌を用いて大型水生植物表面の付着性藻類を摂食している。同じ資源を巡る複数種においては、その体サイズの相違によって食い分けを行うことで食性を分化させ種間競争を回避する方法が知られているが、松美池では両種のサイズ分布に年間を通じてほとんど差がないことが演者らにより明らかにされている。そこで本研究では同所的に生息している両貝において、餌となる池の付着性・浮遊性ケイ藻類と両貝が摂食したケイ藻類組成の季節変動を比較することで、両個体群が共存するために食い分けの戦略をとっているのか考察した。対応分析を用いて6-12月の貝の腸管内のケイ藻類と池の付着性・浮遊性ケイ藻類の属構成を解析した結果、貝の食性は付着性・浮遊性ケイ藻類の季節変動より変化に富んでいた。選択指数の解析により、選択的に摂食したケイ藻類の属数は、サカマキガイよりヒメモノアラガイのほうが多いことが示された。本研究により、サカマキガイとヒメモノアラガイの食性にわずかに違いがあることが明らかとなった。2種間で明確な食い分けはないと考えられるが、2種間の食性の違いが松美池で2種が共存するための要因の1つとなっているかもしれない。
著者
内海 真生
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究は、申請者自身が開発した採水機ROCSの時系列採水機能を用い、高温熱水噴出孔とその周辺環境に生息する微生物の増殖速度や増殖特性について現場培養から定量評価することを目的に、熱水噴出孔域で使用できる新型微生物培養装置を開発・作成する。具体的には、申請者が中心となり開発した深海用新型採水機(ROCS)と本申請対象である新型培養装置を組み合わせた現場培養実験を通じて、熱水噴出孔生態系内の各種微生物群集の増殖速度やメタン酸化速度など微生物に由来する各種活性の測定と定量評価を試みる。研究最終年度であるH22年度は、まず、チタン製培養槽を用いてH22年3月に無人潜水艇「ハイパードルフィン」を使用し鹿児島湾熱水噴出孔で行った現場培養実験の微生物群集解析を行った。また、有光層下に存在する海洋性古細菌群集の代謝特性を現場培養で測定することを目的に静岡県焼津市沖駿河湾の水深400m環境での基質添加現場培養実験を実施した。鹿児島湾若尊火口海底水中には、全菌数として7.2×10^5 cells/mL存在し、その内訳は真正細菌が4.5×10^5 cells/mL、ユーリアーキオータ(7.0×10^4 cells/mL)、クレンアーキオータ(4.1×10^4 cells/mL)であった。全菌数の値は、一般的は外洋海水の値より1桁高い。現場微生物増殖速度は基質添加系で真正細菌およびクレンアーキオータ群集とも負の値を示した。駿河湾400m水深現場培養実験においても海水置換、基質添加および培養試料の時系列現場固定に成功し、基質添加現場培養から400m水深の真正細菌およびクレンアーキオータ群集の増殖速度を測定した。本研究の結果、潜水艇や調査船・漁船を利用した、任意の水深において基質添加可能な現場微生物培養装置の開発にほぼ成功した。