著者
内田 三香子 村上 亜由美 松浦 寿喜 市川 富夫
出版者
武庫川女子大学
雑誌
武庫川女子大学紀要. 自然科学編 (ISSN:09163123)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.35-41, 1996
被引用文献数
2

本研究は,生体内酵素においての水解活性が極めて低いとされるトレハロースに注目し,ラットのカルシウム吸収に及ぼす影響を検討した.1)in vitroでのラット小腸アセトン粉末による糖の消化分解性を検討した.37℃3時間反応ではトレハロースはシュクロース同様,殆どが消化分解された.ラクトースでは15%しか消化されなかった.2)5週齢SD系雄ラットを1群6匹の3群に分け,15%シュクロース飼料,15%ラクトース飼料,15%トレハロース飼料でそれぞれ23日間飼育後解剖した.飼育期間中に2回の出納実験を行い,カルシウム吸収に及ぼす影響を検討した.解剖時には臓器および大腿骨を摘出し,盲腸については盲腸内pHおよび盲腸内揮発性脂肪酸量を定量し,大腿骨についてはカルシウム含有量を測定した.(1)カルシウム吸収率ならびに体内保留率はラクトース群で有意に高くなり,トレハロースによる影響は見られなかった.(2)ラクトース群はシュクロース群,トレハロース群よりも2倍以上もの盲腸重量を産出した.また,ラクトース群は盲腸内pHを有意に低下させ,揮発性脂肪酸量は有意に高値を示した.トレハロースはシュクロース同様,差は見られなかった.以上から,トレハロースは小腸内で殆どが消化分解された可能性があり,カルシウム吸収には影響を及ぼさなかったと考えられる.