著者
石川 匡子 内田 詩乃 佐藤 春香 伊藤 俊彦 渡辺 隆幸
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.105, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】生活習慣病のため,減塩が推奨されており,おいしさを損なわない減塩には,うま味や風味の付与が有効だと言われている。日本の伝統調味料である魚醤はその両方を有しており,減塩に効果があるのではないかと考えた。しかし魚醤は魚種や製造法により,その特性は多種多様である。本研究では市販魚醤の成分分析,官能評価を行い,減塩に対する魚醤の効果について検討した。 【方法】市販魚醤33種を用い,塩分,アミノ酸,有機酸、グルコース測定を行った。香りをSD法により評価した。有機酸及びアミノ酸組成に特徴的な5種類の魚醤を塩分濃度0.8%に調整し,一対比較法にて官能評価を行った。また,醤油ベースのお吸い物と魚醤を添加したものを2点比較法にて評価し,調理への利用についても検討した。 【結果】各魚醤の製法は,魚介類と塩のみを原料としたもの,これらに麹や酵素を加えたものの2種に大別された。魚介類と塩のみで製造された魚醤の塩分濃度は,25%以上と高かった。一方麹や酵素を添加した魚醤は20%未満と低かった。アミノ酸はいずれの魚醤もAsp,Glu,Gly,Ala,Leu,Lysが多く含まれていたが,麹添加魚醤のGlu量はわずかに少ない傾向がみられた。グルコース濃度は麹添加魚醤で高かった。香りは魚介類と食塩のみで製造したものは,製品毎に独特の香りが感じられたが,麹添加魚醤は麹由来の甘い香りであった。官能評価の結果、GluやAlaが多い魚醤はうま味や甘味が強く,乳酸が多い魚醤は酸味が強く感じられた。一方,乳酸量が多くてもGluやAlaが多い魚醤では酸味が弱く感じられた。うま味や甘味が強い魚醤はお吸い物に添加した場合,好ましく感じられる傾向にあり,魚醤の添加量を工夫することで,減塩調味料として料理への利用が期待できる。
著者
石川 匡子 内田 詩乃 佐藤 春香 伊藤 俊彦 渡辺 隆幸
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.308-316, 2016 (Released:2017-09-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2

市販魚醤を用い,品質ならびに呈味評価を行った.魚介類と食塩のみで製造する場合は,魚介類自体のタンパク質の自己消化のみで分解するため,長期熟成が必要であり,微生物繁殖抑制のため塩分濃度が高めに設定されていたが,遊離アミノ酸総量やグルタミン酸量も多いという特徴があった.魚介類に食塩と麹を添加する方法では,短期熟成が可能であり,塩分濃度が低く,麹により甘くクセが抑えられた香りという特徴があった.魚種や製法の違いは,アミノ酸量や有機酸量にも反映された.特に,グルタミン酸,アラニン,乳酸量は魚醤のうま味や甘味,酸味の強さとなって現れた.これらの味質は,お吸い物に用いた際に,まろやかさや好ましさに影響しており,魚醤の味質に合わせた最適添加量を求める必要性が示唆された.