著者
岩野 君夫 伊藤 俊彦 中沢 伸重
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.526-533, 2004-07-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
4 8

1, 吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒のアミノ酸組成を調べ平均値の差の検定を行った結果, 製造区分間に全アミノ酸含有量と組成に大きな違いが認められ, 醸造法の違いが製成酒のアミノ酸組成に影響することを知った。2, アミノ酸を甘味,酸味,苦味,その他の4区分にグルーピングし, 各種清酒間の有意差を調べた結果, 吟醸酒は他に比べて甘味アミノ酸, 酸味アミノ酸の割合が高く苦味アミノ酸が少ないなど, 製造区分によって構成比が異なることが明らかとなった。3, アミノ酸を変数とする変数選択型判別分析を行った結果, グルタミン, プロリン, リジン, グルタミン酸, アラニン, ヒスチジンの6個のアミノ酸を変数として吟醸酒, 純米酒, 本醸造酒及び普通酒を高精度で判別できる判別関数を得た。
著者
伊藤 俊彦 橋爪 克己 藤田 直子
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

A. luchuensisが生成するグルコアミラーゼは、生デンプン結合ドメインを有するグルコアミラーゼの働きにより超高アミロース米を消化することを明らかにした。また、難消化性米を原料米とし、A. oryzaeで作成した麹は超高アミロース米を消化することを明らかにした。さらに、A. oryzaeが生成する難消化性デンプン分解酵素は、α-アミラーゼ及びグルコアミラーゼであることを明らかにした。しかし、グルコアミラーゼはpIの異なる3種の酵素が見出されており、これらの詳細な検討は今後の課題である。
著者
石川 匡子 内田 詩乃 佐藤 春香 伊藤 俊彦 渡辺 隆幸
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成27年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.105, 2015 (Released:2015-08-24)

【目的】生活習慣病のため,減塩が推奨されており,おいしさを損なわない減塩には,うま味や風味の付与が有効だと言われている。日本の伝統調味料である魚醤はその両方を有しており,減塩に効果があるのではないかと考えた。しかし魚醤は魚種や製造法により,その特性は多種多様である。本研究では市販魚醤の成分分析,官能評価を行い,減塩に対する魚醤の効果について検討した。 【方法】市販魚醤33種を用い,塩分,アミノ酸,有機酸、グルコース測定を行った。香りをSD法により評価した。有機酸及びアミノ酸組成に特徴的な5種類の魚醤を塩分濃度0.8%に調整し,一対比較法にて官能評価を行った。また,醤油ベースのお吸い物と魚醤を添加したものを2点比較法にて評価し,調理への利用についても検討した。 【結果】各魚醤の製法は,魚介類と塩のみを原料としたもの,これらに麹や酵素を加えたものの2種に大別された。魚介類と塩のみで製造された魚醤の塩分濃度は,25%以上と高かった。一方麹や酵素を添加した魚醤は20%未満と低かった。アミノ酸はいずれの魚醤もAsp,Glu,Gly,Ala,Leu,Lysが多く含まれていたが,麹添加魚醤のGlu量はわずかに少ない傾向がみられた。グルコース濃度は麹添加魚醤で高かった。香りは魚介類と食塩のみで製造したものは,製品毎に独特の香りが感じられたが,麹添加魚醤は麹由来の甘い香りであった。官能評価の結果、GluやAlaが多い魚醤はうま味や甘味が強く,乳酸が多い魚醤は酸味が強く感じられた。一方,乳酸量が多くてもGluやAlaが多い魚醤では酸味が弱く感じられた。うま味や甘味が強い魚醤はお吸い物に添加した場合,好ましく感じられる傾向にあり,魚醤の添加量を工夫することで,減塩調味料として料理への利用が期待できる。
著者
伊藤 俊彦 高橋 仁 志賀 拓也 佐藤 勉 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.453-460, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 2

清酒麹に残存するアミノ酸について,品種の異なる麹米5点と麹菌17株を用いて清酒麹85個をシャーレ法で製麹し,レベル変動に関与する要因について検討したところ以下の知見を得た。1.麹の残存アミノ酸はグルタミンとアルギニンが多く,次いでリジン,グルタミン酸,ロイシン,チロシン,アラニンの順であった。2.麹米タンパク質が酵素分解されて生成する全アミノ酸の約80%は麹菌の増殖に利用され,約20%が麹の残存アミノ酸となることが推定された。3.麹の残存アミノ酸量の多い麹はタンパク質分解酵素活性が高かった。4.麹の残存アミノ酸量は麹米品種と麹菌株に共に影響された。5.麹菌株の選択により麹の残存アミノ酸量を約半分に低減できる可能性がある。
著者
伊藤 俊彦 小松 幸恵 高堂 斐 高橋 仁 田母神 繁 小泉 武夫 中沢 伸重 岩野 君夫
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.562-569, 2008-07-15
参考文献数
10
被引用文献数
5 4

鑑評会の審査成績と相関の高い未知成分を単離・精製し, これらの未知成分がチロソール, β-フェニルエタノール, トリプトフォールで有ることを明らかにした。更に, 吟醸酒中に存在する濃度での呈味性を合成清酒を用いて三点識別嗜好試験を行い調べた結果, チロソールは苦味, 渋味, 雑味を, β-フェニルエタノールは渋味, 雑味を, トリプトフォールは酸味, 苦味, 渋味を呈する事を知った。
著者
石川 匡子 内田 詩乃 佐藤 春香 伊藤 俊彦 渡辺 隆幸
出版者
日本海水学会
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.308-316, 2016 (Released:2017-09-27)
参考文献数
30
被引用文献数
2

市販魚醤を用い,品質ならびに呈味評価を行った.魚介類と食塩のみで製造する場合は,魚介類自体のタンパク質の自己消化のみで分解するため,長期熟成が必要であり,微生物繁殖抑制のため塩分濃度が高めに設定されていたが,遊離アミノ酸総量やグルタミン酸量も多いという特徴があった.魚介類に食塩と麹を添加する方法では,短期熟成が可能であり,塩分濃度が低く,麹により甘くクセが抑えられた香りという特徴があった.魚種や製法の違いは,アミノ酸量や有機酸量にも反映された.特に,グルタミン酸,アラニン,乳酸量は魚醤のうま味や甘味,酸味の強さとなって現れた.これらの味質は,お吸い物に用いた際に,まろやかさや好ましさに影響しており,魚醤の味質に合わせた最適添加量を求める必要性が示唆された.
著者
伊藤 俊彦
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.55-63, 1982-05-20 (Released:2018-01-21)

Polya,G.(1945)の提唱した発見学的戦略による数学的問題解決モデルの実験的,実証的研究が,1970年代米国で数多くなされた。それらの実験的研究について共通していえることは,数学における問題解決過程に焦点をあて,Polya,Gの発見学を問題解決戦略として用い,問題解決過程を行動分析してその過程のメカニズムを解明することである。これらの実験的研究に共通した実験方法,問題解決過程の行動分析体系,よく使われる統計的手法などは,数学的問題解決の教授-学習の研究方法論や評価論の構築の基礎になると考えられる。数学的問題解決についての研究方法や評価は,わが国では明確に客観化されていない。そこで本報告は,数学的問題解決の研究方法や評価を明確に客観化するための基礎的研究として,1970年代の米国における数学的問題解決の実験的研究の考察を試みた。
著者
伊藤 俊彦
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
岩鉱 (ISSN:09149783)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.209-219, 1996 (Released:2006-11-25)
参考文献数
22
被引用文献数
8 27

氷点下の気温になる冬季間,北海道足寄町螺湾のシオワッカ冷泉からの弱い流れの中で,ikaiteが生じている。積雪の少ない年には,氷に閉じこめられた産状でikaiteからなる輪縁石ダムが見られた。海洋,湖沼以外である流水域におけるikaiteの生成はこれまでは知られていない。先年の夏に同地域から,calciteといっしょにmonohydrocalciteの生成が知られたところから,冬のikaiteの生成が予想された。シオワッカ冷泉石灰華からはikaiteからの転移鉱物のvateriteを加えると,aragoniteを除き,自然界での炭酸カルシウム塩鉱物のほとんど全てが得られた。本地における夏から冬の間の炭酸カルシウム塩鉱物の生成の過程を,産状から考察した。これらの鉱物の生成における必要条件は,水質のほか,水温(ikaite,calcite),地表面の濡れ(monohydrocalcite:伊藤,1993),など,それぞれによって異なる。また,シオワッカ冷泉の水質,ikaiteおよびvateriteのX線粉末回折線値,ikaiteから転移した後の方解石の化学組成を示した。     Ikaiteが冷たい海域,深海堆積物から次々と発見されたことから,1982年来,これまで源鉱物の明らかでなかったglendoniteや玄能石と呼ばれてきた方解石仮像の源鉱物がikaiteであるとする説が多く出されてきた。しかし,ikaiteの結晶形と一般的な大きさはこれまでに知られている方解石仮像と一致しない。ここでは,方解石仮像に特徴的な四角錐に対応する結晶形が,走査型電子顕微鏡で観察されたikaiteの結晶面の組み合わせによって導かれることを示した。Ashoro-cho 足寄町,Rawan 螺湾,Shiowakka シオワッカ,Konbumori 昆布森