著者
内野 眞也
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.158-164, 2019 (Released:2019-11-25)
参考文献数
28

甲状腺髄様癌は他の甲状腺癌と大きく異なる特徴がある。第1に遺伝性と散発性(非遺伝性)を明らかすることができる点である。原因遺伝子はRETがん遺伝子であり,血液からDNAを抽出して検査することにより遺伝性か散発性かの鑑別が可能である。第2に髄様癌に特異的な腫瘍マーカーであるカルシトニンが存在することである。これを測定することにより,髄様癌細胞の存在が微小な数であっても診断可能であり,鋭敏に髄様癌細胞を検出することができるマーカーであるため,再発が画像診断で明らかになる前に生化学的に診断できる利点がある。もうひとつの髄様癌の腫瘍マーカーでもあるCEAは,髄様癌に特異的ではないが,髄様癌がより低分化でカルシトニン上昇の程度が低い場合に,カルシトニンを補足する意味で重要となる。これら腫瘍マーカーの倍加時間が短いほど,腫瘍細胞の増殖速度が速いことを意味し,予後不良であることを意味する。術後カルシトニン値の正常化は腫瘍遺残のないことを示し,再発予後は良好となるので,術前のカルシトニン値あるいはCEA値からリンパ節転移の拡がりを予測し,系統的な郭清を行うことが重要である。その他の臨床的因子で生命予後に関わる重要な因子は,年齢,腫瘍径,甲状腺外浸潤,リンパ節転移,遠隔転移,非根治手術である。
著者
野口 仁志 内野 眞也 村上 司 山下 裕人 野口 志郎
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.128-134, 2016 (Released:2016-08-02)
参考文献数
5

甲状腺未分化癌は極めて予後不良な疾患であり,確立した治療法は今のところ存在しない。われわれは2006年からドキソルビシン(DXR)とシスプラチン(CDDP)を使用する化学療法にバルプロ酸を併用する方法を試行しており,手術と放射線治療を加えた集学的治療によって予後の改善に努めている。その結果として,手術から2年以上経過しても無再発生存している症例を3例経験したのでここに報告する。