著者
冨士 仁 古山 恒夫 菅野 文友
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.91-101, 1996-07-15

ソフトウェアのプロジェクトの見積りや管理のために,これまでに様々な特性を測定する試みがなされてきた.プログラムの複雑さの尺度もその一つであり,早期にプログラムの品質を予測する有力な手段となっている.従来は,複雑さの尺度を単独または複雑さの特質ごとに使用している研究がほとんどであり,複合的な尺度は花田らの研究などごく少数しか提案されていなかった.本論文では,従来の制御構造などの特質に関するの尺度の他に,新しくプログラミング・スタイルにも着目した.そして,ソフトウェアの信頼性の指標として,プログラムの欠陥の密度と複雑さの尺度との関係を分析した.すなわち,欠陥の密度と各尺度との相関係数の検定によって,複雑さの尺度が信頼性の指標として有効かどうかを検討した.また有効な尺度について,プログラムの欠陥の密度を少なくするための最適値も検討し,プログラムの作成時およびテスト時の指針として示す.そして,重回帰分析によって有効な尺度を複合化し,プログラム完成時の品質予測を可能にした.