著者
古山 恒夫 菊地 奈穂美 安田 守 鶴保征城
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2608-2619, 2007-08-15

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)では,国内のソフトウェアベンダのエンタプライズ系ソフトウェア開発に関するプロジェクトデータを収集している.このデータに含まれる,コスト・納期・品質それぞれに関するプロジェクト遂行の成否を示すデータに着目し,それらと規模や工数などの量的データやさまざまなプロジェクト特性を示す質的データとの関係を分析することにより,次のようなプロジェクトを計画どおりに遂行できなかった要因,すなわちコスト超過・納期遅延・品質低下を起こす要因を明らかにした.(1) プロジェクト規模そのものが大きく,特に工期あたりの規模が大きいプロジェクトはコスト超過を起こす割合が高く,(2) 要求仕様があいまいなプロジェクトは納期遅延や品質低下を起こす割合が高い.一方,(3) 事前に工期の妥当性を評価したプロジェクトでは納期遅延を起こす割合が低く,(4) 業務分野の経験者を揃えたプロジェクトでは納期遅延や品質低下を起こす割合が低く,(5) テスト体制を整備したプロジェクトでは,コスト超過・納期遅延・品質低下を起こす割合が低い.
著者
古山 恒夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.2326-2333, 1996-12-15
参考文献数
12
被引用文献数
12

ソフトウェア信頼度成長曲線に関する統合モデル^<1) 2)>は これまで提案された代表的なモデルをカバーするだけでなく これまでモデル化されていなかった領域もカバーできる. そのため このモデルを用いれば既存のソフトウェア信頼度成長モデルより高い精度で残存フォールト数を推定することができる. しかしながら 統合モデルを表す微分方程式の解の形式は 既存モデルの種別を表すパラメータγの値により飽和型モデルに限っても3つのグループに分かれる. そのため 最適なパラメータ群を推定するためには それぞれのグループに対してパラメータの推定を試みる必要があった. また 最尤推定法によるパラメータ推定では 超越方程式を数値的に解く必要があることから 解の収束に時間がかかったり 解そのものが求まらない場合があるという問題もあった. 本論文では 統合モデルを表す微分方程式の対数をとることにより 得られたデータ系列からこのモデルを表す微分方程式のパラメータを解析的に推定できることを示す. また 推定したパラメータをもとに具体的な推定曲線を求めるための手順を示す. 実際の累積バグデータを用いて 本方式と最尤推定法による残存バグの推定誤差を比較した結果 その差は2%以下であった.The manifold growth model that unifies existing software reliability growth models can cover a wide range of accumulated fault data including various types of data which are difficult to treat with existing models^<1),2)>. However, there are problems. For example, it sometimes takes a long time to solve transcendental equations to estimate parameters of the model by using maximum likelihood estimation, and the solution is difficult to obtain in some cases. This paper shows that the parameters of the differential equation that defined the manifold model can be analytically estimated for the given data by using a "Y-equation" derived from the differential equation. This paper also shows the concrete procedure for determining the most appropriate software reliability growth model, or the most appropriate shape of curve from Y-equation. Finally, the effectiveness of the Y-equation is shown by applying it to both ideal and actual data.
著者
冨士 仁 古山 恒夫 菅野 文友
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.91-101, 1996-07-15

ソフトウェアのプロジェクトの見積りや管理のために,これまでに様々な特性を測定する試みがなされてきた.プログラムの複雑さの尺度もその一つであり,早期にプログラムの品質を予測する有力な手段となっている.従来は,複雑さの尺度を単独または複雑さの特質ごとに使用している研究がほとんどであり,複合的な尺度は花田らの研究などごく少数しか提案されていなかった.本論文では,従来の制御構造などの特質に関するの尺度の他に,新しくプログラミング・スタイルにも着目した.そして,ソフトウェアの信頼性の指標として,プログラムの欠陥の密度と複雑さの尺度との関係を分析した.すなわち,欠陥の密度と各尺度との相関係数の検定によって,複雑さの尺度が信頼性の指標として有効かどうかを検討した.また有効な尺度について,プログラムの欠陥の密度を少なくするための最適値も検討し,プログラムの作成時およびテスト時の指針として示す.そして,重回帰分析によって有効な尺度を複合化し,プログラム完成時の品質予測を可能にした.