著者
宇治村 信明 大森 貴允 冨岡 真光 滝野 佑介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-3_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中殿筋は股関節外転筋として周知されており、基本動作や日常生活動作時の骨盤安定性に重要な役割を果たす。股関節術後患者では中殿筋速筋線維の顕著な萎縮が認められ、中殿筋の質的機能向上の必要性が報告されているが、中殿筋速筋線維に対する治療手段は、限られた手段しか報告がなされていない。よって本研究の目的は、股関節外転運動速度を変化させることで、中殿筋速筋線維に対する質的トレーニングとなり得るかを表面筋電図を用いて検証した。【方法】対象は整形外科学的疾患及び神経学的疾患の既往歴を有さない健常男性30人(年齢29.3±5.9歳、身長171.1±5.2㎝、体重65.1±8.1㎏)とした。方法は、測定肢位は側臥位、股関節屈曲伸展角度中間位、骨盤帯での代償予防のためベルトにて骨盤を固定した。股関節外転運動は0°から20°への運動とし、運動開始のタイミングを把握するためフットスイッチを用いた。なお運動課題遂行前に無負荷にて練習を行った。負荷量は股関節外転最大筋力の10%の負荷量とした。運動課題はメトロノームを使用し1分間に60拍、40拍、20拍のリズムでの3条件とし、各1条件10人の3群にて中殿筋速筋線維の発火頻度量を比較した。解析した波形の中央部より前半を求心性、後半を遠心性とした。発火頻度量はwavelet変換を用いて表面筋電図周波数解析(EMGマスター小沢医科器械)にて測定を行った。統計学的解析は、各群及び求心性、遠心性収縮時における中殿筋速筋線維の発火頻度量を一元配置分散分析を用いて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】各群での中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は60拍群(173.7±63.9Hz)、40拍群(92.9±52.5Hz)、20拍群(74.9±40.6Hz)であり、運動速度を速めるにつれ有意に高い値を認めた(p<0.05)。求心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、いずれも有意差を認めなかった。遠心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、60拍群(477.0±191.9Hz)が40拍群(227.5±99.6Hz)、20拍群(179.4±111.3Hz)と比較し、有意に高い値を認めた(p<0.05)。【結論】股関節外転運動速度を速めることは、中殿筋速筋線維の発火頻度量の増大へ寄与することが示唆された。さらに中殿筋速筋線維の発火頻度量は、運動速度が速く、遠心性収縮にて高い値を示した。これは運動速度を速めることで遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であると報告されており、本研究においても運動速度を速くしたことで運動単位の動員と運動ニューロンの発火頻度量増大に繋がったと考える。求心性と遠心性を比較し、遠心性ではエネルギー消費量が少なく、強い力を出すことができる収縮様式と報告されており、本研究においても遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であったと考える。本研究の結果から股関節外転運動における運動速度や収縮様式を変化させることは、中殿筋の質的トレーニングの一助となり得ることが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は松山リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭にて研究の趣旨を説明し、その内容について十分に理解を得た。
著者
岡田 一馬 中田 衛樹 山崎 裕司 山下 望 青木 早紀 山崎 倫 大森 貴允 冨岡 真光
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 = Journal of Kochi Rehabilitation Institute (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.17-22, 2017-03-31

高次脳機能障害を合併した高齢の重症片麻痺患者のベッドへの移乗動作練習に応用行動分析学的技法を取り入れた. ベースライン期(第93病日から106病日)には,総課題提示法による移乗動作練習を実施した.移乗動作手順の忘れや立ち上がり,ベッドへのピボッドターンに介助を要し,移乗動作能力得点は停滞していた.介入では,車椅子のブレーキ操作,フットレスト操作についてベットサイドに文字教示を行った.立ち上がり,ピボットターンの練習では,段階的な難易度設定を実施した.介入開始後,動作能力得点は上昇しはじめ, 16セッション目で満点の45点に到達した.発症から3か月以上を経過した本症例がわずか16日間の介入によって監視下の移乗動作が自立したことから,今回の介入は移乗動作能力を向上させるうえで有効に機能したものと考えられた.
著者
中田 衛樹 岡田 一馬 山崎 裕司 山崎 生希 山崎 倫 大森 貴允 冨岡 真光
出版者
高知リハビリテーション学院
雑誌
高知リハビリテーション学院紀要 (ISSN:13455648)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.13-16, 2015-03-31

認知症を合併した重症片麻痺患者に対し,逆方向連鎖化の技法を用いた寝返り・起き上がり動作練習を実施した.寝返り動作は介入セッション,起き上がり動作は8セッション目に動作が自立した.介入中,身体機能および認知機能の改善は認められなかった.介入後,速やかに起居動作が自立したことから,認知症を合併した重症片麻痺患者に対する今回の動作練習は,有効に機能したものと考えられた