著者
冨田 晴雄 坂本 薫 John Henderson 竹森 利和
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.18-25, 2015 (Released:2015-03-06)
参考文献数
16
被引用文献数
2

充分に糊化された米飯の構造とテクスチャーとの関係を明らかにするため,4種類の浸漬時間の異なる浸漬米(10℃ 0分,20分,60分,120分)を調製し,同一条件で炊飯した米飯の構造や物性を評価した。SEMでの米飯の割断面構造観察から,割断面表層付近には多孔質構造があり,最表面には緻密な層が確認できた。浸漬時間が長くなるにつれ,多孔質構造が徐々に拡大し,緻密層は120分で急激に厚くなることが分かった。また,テクスチャー試験から,浸漬時間が長くなるほど弾性率が小さくなり,破断エネルギーや粘性率も60分まで減少後,120分で増加に転じた。多孔質構造とテクスチャーとの相関を定量評価するため,画像解析により多孔質構造の孔の平均面積を求めたところ,浸漬米の水分率や弾性率と高い相関を示すことが分かった。以上の結果より,従来の糊化度評価では差がない炊飯米において,構造と破断エネルギーや弾性率といったテクスチャーとの関係を示すことに成功し,構造観察から食感を推察できる可能性を示した。
著者
冨田 晴雄 竹森 利和
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】炊飯米の保存による老化を抑制するために、保存方法の制御や添加材の投入、炊飯プロセスによる老化低減などが行われてきた。本研究では、炊飯手法による老化低減を目指し、日本を中心に用いられている炊飯法である炊き干し法と東南アジアを中心とした湯とり法について、米飯の老化傾向の違いについて評価し、微細構造や成分比較などにより老化原因の特定を試みた。<br>【方法】湯とり法の沸騰時間を7分~15分で変えた4種類の米飯及び炊き干し法の米飯を試料とし、SEMによる微細構造観察とテクスチャー測定を行なった。それぞれの米飯について、炊飯直後及び冷蔵庫(5℃)保管3日後の米飯の老化度合いを調べるため、XRD解析による結晶構造評価及びDSCによる再糊化に伴う吸熱エンタルピーの評価を行った。さらに、高温環境(70℃)下での水分保持率及び米飯の成分を比較した。<br>【結果】湯とり法では10~12分の沸騰時間の米飯が炊き干し法と同等の微細構造及びテクスチャーを示した。これらの米飯に対し、XRD及びDSCにより老化度合いを評価した結果、湯とり法の米飯の方がXRDのピーク及び吸熱エンタルピーが小さく、老化が遅いことが分かった。さらに、湯とり法の米飯は水分保持率が高く、3日経過後も初期の95%以上の水分を維持していた。米飯の成分を比較した結果、湯とり法の米飯は還元糖や遊離アミノ酸が検出されなかったが、それ以外は炊き干し法の米飯とほぼ同じであり、成分の違いが老化に及ぼす影響は少ないと考えらえる。また、湯とり法の米飯は沸騰時間に依存して老化が遅くなり、水分保持率も高くなったことから、沸騰時間に対する各種成分の変化を見たところ、米飯に含まれるスクロース量の増加及びデンプンが低分子化していることが分かった。