著者
草野 凌 吉川 憲一 宮田 一弘 Neil David Parry 石本 立 古関 一則 冨田 洋介 佐野 歩 矢吹 惇 水上 昌文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12304, (Released:2022-12-09)
参考文献数
23

【目的】Spinal Cord Injury Functional Ambulation Inventory(以下,SCI-FAI)を翻訳し,信頼性を検討した。【方法】国際基準に準じてSCI-FAIを日本語へ翻訳した。不全脊髄損傷者34名を対象とした。評価者2名が動画上でSCI-FAI評価を2回実施した。級内相関係数,Cronbachのα係数,Weighted K係数,Bland-Altman分析を用いて信頼性を確認した。【結果】検者内信頼性Intraclass Correlation Coefficients(以下,ICC)(1, 1)は0.928~0.973,α係数0.967~0.986,K係数は0.713~1.00,1名の評価者に固定誤差・比例誤差が確認された。検者間信頼性ICC(2, 1)は0848,α係数は0.916,K係数は0.349~0.899,固定誤差,比例誤差は確認されなかった。【結論】日本語版SCI-FAIは本邦の臨床設定において信頼性を有する評価であることが確認された。
著者
吉田 剛 松本 季 冨田 洋介 居村 茂幸
出版者
日本予防理学療法学会
雑誌
日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集 第8回 日本予防理学療法学会学術大会 (ISSN:27587983)
巻号頁・発行日
pp.33, 2022-12-01 (Released:2023-06-07)

【はじめに,目的】我々は2003年に,簡便な舌骨上筋筋力の評価指標としてGSグレードを開発し,その後の臨床場面などで幅広く使用されてきた.これは,背臥位で頭部挙上し,顎を引いた位置で保持させ落下の程度を4段階で評価する方法であり,測定信頼性および臨床的有用性について検証済みである.近年サルコペニア嚥下障害という概念が登場したが,フレイル高齢者の嚥下筋が筋力低下していてもそれを簡便にスクリーニングする方法がないのが現状である.現行のGSグレードは抵抗を加える段階がない4段階であるため,筋力の高い対象者の軽微な変化をみることが難しい.また,通常の徒手筋力検査は抵抗を加える段階のある5段階である.そこで,本研究では5段階の修正GSグレードの妥当性を検証し,加えて,修正Gr.4と5の違いを検証し,修正GSグレードの意義を検討することを目的とした.【対象】健常成人29名(男5名,女24名,21.07±0.72歳)を対象とした.【方法】評価項目は,修正GSグレード,頸部可動域(4方向),舌圧,舌骨上筋筋力の実測値として開口筋力,相対的喉頭位置とした.なお,修正GSグレードの抵抗は約10mmhg程度とした.本研究では(1)修正GSグレードの妥当性検証,(2)修正Gr.4と5の各群とその他の項目との関係を検証した.(1)では開口筋力の実測値と修正GSグレード評価の結果の分析を行い,(2)ではGr.4とGr.5の2群に分け,2群の差を Mann-WhitneyのU検定により検証した.有意水準は5%とした.【結果】(1)開口筋力はGr.4群は6.65±1.70(kg),Gr.5群は9.26±2.50(kg)と有意差を認め,基準関連妥当性が高かった.(2)Gr.4群は,頸部回旋可動域が有意に小さく,舌圧ではGr.4群は29.94±11.10(kPa),Gr.5群は39.31±10.26(kPa)と舌圧も有意に低かった.相対的喉頭位置はGr4.は0.35±0.03,Gr5は0.39±0.03とGr4.で喉頭位置は有意に上昇していた.【考察】今まで健常レベルと考えてきたGSグレード4の中には,修正GSグレードでは4と5の人が混在しており,健常若年者でも判別可能であった.舌圧基準値は30kPaがボーダーであり,修正Gr.4群はボーダーラインにあると考えられた.また,Gr.4群は頸部回旋可動域が低下し,舌圧も低いことから,舌骨上筋筋力には頸部筋緊張や舌圧も影響していると考えられた.サルコペニア摂食嚥下障害の嚥下筋の筋力低下を示す指標として舌圧が用いられているが,修正GSグレードで評価できる可能性があり,地域在住高齢者のフレイル予防に対しても,舌骨上筋筋力低下を早期に発見するツールになると考える.今後は高齢者や脳卒中者を対象に臨床的有用性について検討していく必要がある.【倫理的配慮、説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言及び「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を遵守した.研究対象者には書面及び口頭にて説明し書面にて同意を得た.また,データはすべて匿名化して扱い個人情報の保護を徹底した.なお,本研究は高崎健康福祉大学倫理審査委員会の倫理審査の承認を受けている(高崎健康大倫理第2011号).
著者
草野 凌 吉川 憲一 宮田 一弘 Neil David Parry 石本 立 古関 一則 冨田 洋介 佐野 歩 矢吹 惇 水上 昌文
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.399-407, 2022-12-20 (Released:2022-12-20)
参考文献数
23

【目的】Spinal Cord Injury Functional Ambulation Inventory(以下,SCI-FAI)を翻訳し,信頼性を検討した。【方法】国際基準に準じてSCI-FAIを日本語へ翻訳した。不全脊髄損傷者34名を対象とした。評価者2名が動画上でSCI-FAI評価を2回実施した。級内相関係数,Cronbachのα係数,Weighted K係数,Bland-Altman分析を用いて信頼性を確認した。【結果】検者内信頼性Intraclass Correlation Coefficients(以下,ICC)(1, 1)は0.928~0.973,α係数0.967~0.986,K係数は0.713~1.00,1名の評価者に固定誤差・比例誤差が確認された。検者間信頼性ICC(2, 1)は0848,α係数は0.916,K係数は0.349~0.899,固定誤差,比例誤差は確認されなかった。【結論】日本語版SCI-FAIは本邦の臨床設定において信頼性を有する評価であることが確認された。
著者
冨田 洋介 新谷 和文 臼田 滋
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ba0286, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 中枢神経損傷に伴う上位運動ニューロン症候群は、陽性徴候と陰性徴候に分類される。伝統的に痙縮は拮抗筋の筋力低下や協調運動障害をきたすとの考えから、痙縮の抑制が重要視された。しかし近年、痙縮は拮抗筋の筋力低下あるいは協調運動障害とは関連が無く、また陽性徴候よりも陰性徴候の方が運動パフォーマンスに関連するとの報告がある。したがって本研究は脳卒中患者と脊髄疾患患者にて陽性徴候と陰性徴候との関連性を検討し、上位運動ニューロン症候群に関する理解を深め、理学療法介入の参考とすることを目的とした。【方法】 対象は当院に入院中の脳卒中患者15名 (68.1±9.1歳)、脊髄疾患患者16名(67.6±10.6歳)とした。測定肢は脳卒中群では麻痺側、脊髄疾患群では利き足(ボールを蹴る側)とした。痙縮はAnkle Plantar Flexors Tone Scale(APTS)のStretch Reflex(SR)を用い、0から4の5段階で評価した。当指標は数値が大きいほど神経学的な筋緊張が亢進した状態を意味する。足関節背屈筋力は背臥位にてベルトにて固定したHand Held Dynamometer(μTAS F-1,アニマ社製)を使用し、3回測定を行いその平均を代表値とした。協調運動障害は、椅子座位にてFoot Pat Test(FPT)、単純反応時間(Simple Reaction Time: SRT)、リズム課題の3種をデジタルカメラ(EX-FC100, CASIO社製)にて測定した。FPTは足関節底背屈をできるだけ速く行い10秒間で足底面が床に触れた回数を指標とした。SRTはメトロノーム(DB-30, Roland社製)の音が鳴ってから足底面が床から離れるまでに要した時間を指標とした。リズム課題は3条件(0.8Hz、1.6Hz、2.4Hz)の各リズムでメトロノームの音に合わせて足関節を底背屈(タップ)し測定した。リズム誤差(指定のリズムから各タップに要した時間の平均を減じた値の絶対値)、リズム変動(各タップに要した時間の変動係数)を 3条件において各々算出した。SRの結果と足関節背屈筋力、SRT、FPT、リズム誤差、リズム変動との関連性の検討にはSpearmanの順位相関係数を算出した。統計処理はIBM SPSS Statistics(Version 19、SPSS Japan社)を使用し、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には書面と口頭で説明を行い、自筆あるいは御家族の代筆により書面に同意を得た。なお本研究は榛名荘病院倫理審査委員会にて承認を受けた。【結果】 SRは脳卒中群では膝伸展位にて0が6名、1が5名、2が2名、3が1名、4が1名、膝屈曲位にて0が5名、1が5名、2が1名、3が2名、4が2名、脊髄疾患群では膝伸展位にて0が6名、1が7名、2が3名、3が0名、4が0名、膝屈曲位にて0が5名、1が5名、2が5名、3が0名、4が1名だった。脳卒中群と脊髄疾患群それぞれ、足関節背屈筋力は6.0±4.3kg、7.6±2.4kg、SRTは0.34±0.07秒、0.28±0.05秒、FPTは19.5±11.8回、29.3±6.9回、リズム誤差は0.8Hzでは0.05±0.07秒、0.01±0.01秒、1.6Hzでは0.03±0.04秒、0.02±0.03秒、2.4Hzでは0.10±0.14秒、0.03±0.07秒、リズム変動は0.8Hzでは0.11±0.07、0.07±0.02、1.6Hzでは0.15±0.13、0.07±0.03、2.4Hzでは0.24±0.17、0.09±0.03だった。痙縮と足関節背屈筋力、SRT、FPT、リズム誤差、リズム変動の相関係数は脳卒中群ではSRとFPTは膝屈曲位がrs=-0.70(p<0.01)、膝伸展位がrs=-0.64(p<0.05)といずれも中等度の相関を示し、その他の指標と有意な関連性は認めなかった(rs=-0.23~0.34)。一方、脊髄疾患群では膝屈曲位SRと2.4Hzリズム誤差がrs=0.52(p<0.05)と中等度の相関を示し、その他の指標と有意な関連性は認めなかった(rs=-0.24~0.26)。【考察】 脳卒中群・脊髄疾患群において足関節背屈筋力はその拮抗筋である下腿三頭筋の痙縮の程度とは関連を認めず、両者は独立した事象であるといえる。また痙縮と協調運動障害の関連性は脳卒中群と脊髄疾患群では異なることが明らかとなったが、これは痙縮の分布や協調運動障害の程度が両群で異なること、また注意・認知機能や感覚障害の関与などが考えられる。加えて本研究は、中枢神経疾患患者の足関節協調運動障害をFPT、SRT、リズム変動、リズム誤差という異なる観点から評価した。これらの方法は簡便に時間的協調運動障害を多面的に評価できると考える。【理学療法学研究としての意義】 脳卒中患者、脊髄疾患患者の足関節において、痙縮による筋力、協調運動障害への関与は限定的だった。したがってこれらの対象には協調性向上や筋力向上を目的とした痙縮抑制治療の効果は低いと考える。