著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第9回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.O06, 2020 (Released:2022-04-22)

【目的】高校野球選手の競技力向上に向けた増量に関する情報が散見する中で、形態や体組 成を詳細に分析した報告は少ない。そこで本研究は高校野球選手の打力と盗塁能力との関 連性に着目し、高校野球選手における形態及び体組成の特徴について明らかにすることを 目的とした。 【方法】対象は全国の高校野球選手465 名(全国大会出場校から都道府県大会ベスト32 以 上)とした。測定項目は身体組成(TANITA 社製MC-780A-N)、周径囲(ISAK 身体計測方法)、 スイングスピード(SSK 社製マルチスピードテスターⅡ)とした。測定は各高校野球部のグ ラウンドまたは室内施設にて実施した。さらにアンケート調査を行い、プロフィール、打力 (本塁打数、打者タイプ)、盗塁能力(盗塁数、主観的な足の速さ)について回答を得た。 なお、統計分析は身体計測値と本塁打数およびスイングスピードとの相関係数を求めた。ア ンケートで回答した盗塁数から盗塁5 個以下を「盗塁が苦手な群」、盗塁16 個以上を「盗塁 が得意な群」に分けて各計測値をt 検定にて検討し、主観的な足の速さ盗塁数との関係につ いてはクロス集計からχ2 検定を行った。なお、有意水準は5%未満とした。 【結果】本塁打数は両腕の前腕、胸囲、腹囲、臀囲、両脚大腿部、軸足下腿の周径囲との間 で有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。除脂肪量については、全身の除脂肪量、腕、 足、体幹の除脂肪量と有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。スイングスピードは、 引き手前腕の周径囲、腕、足、体幹の除脂肪量との間で有意な正の相関関係が見られた(p <0.01)。右投げ右打ちと右投げ左打ちそれぞれで左右差を検討したところ、右投げ右打ち における右の上腕周径囲が左よりも有意に大きかった(p<0.01)。盗塁においては、盗塁 が苦手な群よりも盗塁が得意な群の体脂肪率が有意に低く(p<0.01)、さらに腕の除脂肪 量は盗塁が得意な群の方が有意に大きかった(p<0.05)。また、盗塁が苦手な群と盗塁が 得意な群において主観的な足の速さに関してχ2 検定を行ったところ、盗塁が得意な群は 盗塁が得意な群に比べて主観的に足が速いと回答したものが有意に多かった(p<0.01)。 【考察】打力向上において、周径囲では特定した部位に限って大きいということなかったが、 身体組成では全身の除脂肪量、すなわち筋量の増加が必要であることが示唆された。また、 盗塁能力については、自覚的な足の速さが必要であり、身体組成としては体脂肪率が低く、 腕のスイングに影響する腕の除脂肪量が影響することが示唆された。 【現場への提言】高校野球選手の本塁打数やスイングスピードの向上を目的とする場合、周 径囲では特定の部位に特化して大きくする必要はなく、全身の除脂肪量の増加に務めるこ とが必要であると言える。また、盗塁など走ることを得意とする選手については、体脂肪率 を増加させないよう配慮することが必要である。なお、双方を高めるとするならば、体脂肪 率を極端に増加させないように配慮しながら、除脂肪体重増加に務めることが求められる。
著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.83-93, 2022-10-31 (Released:2022-11-19)
参考文献数
30

高校野球現場の熱中症予防に関する全体的な実態を明らかにし,今後の熱中症予防を推進していく上での課題を検討することを目的とした.質問内容は,熱中症予防に関する知識・態度・実践(KAP),実践する際の促進要因と阻害要因についてであった.その結果,選手・指導者ともに態度は良好であったものの,知識と実践については十分ではなかったため,教育の強化をしていく必要がある.また,選手と指導者間でKAPのスコアにはギャップがあり,熱中症予防の実践にあたっては,他者の存在に影響を受ける可能性が高いことから,選手と指導者がコミュニケーションを取って共通認識を高めることが,熱中症予防を強化する一助になると考えられる.