著者
笠原 政志 山本 利春 川原 貴
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.541-548, 2010 (Released:2010-11-16)
参考文献数
47
被引用文献数
1

The present study was conducted to examine whether stretching was effective to control muscular atrophy.Subjects were eight male undergraduate students (height 171.4 ± 5.8 cm, body weight 72.2 ± 7.8 kg, and age 20.6 ± 1.1 years) and the muscle analyzed was the vastus lateralis.Firstly, the subjects were instructed to perform strength training for a period of 16 weeks, which was followed by a 12-week detraining period. During the detraining period, either the right or the left leg was stretched daily for 10 minutes (2 sets). The mass of the vastus lateralis muscle was estimated based on its cross-sectional area (CSA), as assessed by magnetic resonance imaging (MRI). Relative decreases in muscle mass were compared between the stretched and the non-stretched control leg.Muscle mass in the non-stretched leg showed significant decreases during detraining, while no significant decreases in muscle mass were detected in the stretched leg. This outcome indicates that stretching can influence muscle plasticity and, therefore, is effective for preventing decreases in muscle mass.In conclusion, this study suggests that, added to its known ability to improve flexibility, accelerate recovery from fatigue, and prevent injuries, static stretching is effective for controlling muscle atrophy.
著者
木村 征太郎 笠原 政志 山本 利春
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第9回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.O07, 2020 (Released:2022-04-22)

【目的】高校野球投手の競技力向上に向けた増量に関する情報が散見する中で、形態や体 組成を詳細に分析した報告は少ない。そこで本研究は高校野球投手の球速と競技レベルに 着目し、高校野球投手の形態及び体組成の特徴について明らかにすることを目的とした。 【方法】本研究における測定は各高校野球部のグラウンドまたは屋内施設にて実施した。 測定対象は全国の高校野球投手120 名(年齢:16.2±0.7 歳、身長:173.6±5.1cm、体 重:68.9±10.2kg)とした。測定項目は体組成(TANITA 社製MC-780A-N)、周径囲(ISAK 身 体計測方法)とした。さらにアンケート調査を行い、プロフィール、プレースタイル(投 球タイプ、最高投球速度など)について回答を得た。分析方法は、球速はアンケートから 得られた最高投球速度とし、高速群23 名(130km/h 以上)、中速群26 名(120km/h 以 上)、低速群37 名(120km/h 未満)に分類した。また、競技レベルをエリート群28 名(過 去5 年以内に春夏含め複数回甲子園出場校)と非エリート群18 名(都道府県予選敗退 校)に分類した。各群における体組成と周径囲の差に対する分析は、球速別の比較は一元 配置分散分析を行い、Tukey のHSD 法により多重比較検定を行った。競技レベル別の比較 は対応のないt 検定を行った。いずれも有意確率は5%未満とした。 【結果】球速別からみた高校野球投手における形態では前腕、上腕以外の全ての項目にお いて高速群が低速群に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。また、体組成では体重、ア ーム長、除脂肪量において高速群が低速群に比べて有意に高値を示した〔体重、アーム長 (p<0.05)、除脂肪量(p<0.01)〕。投手の軸脚とステップ脚の下肢周径囲を比較した結 果、両脚ともに高速群が低速群よりも有意に高値を示した[大腿両脚(p<0.01)、両脚下 腿(p<0.05)]。競技レベル別の体組成及び周径囲はエリート群が非エリート群よりも有 意に高値を示した〔身長、除脂肪量、腹囲、大腿、下腿(p<0.05)〕。 【考察】高速群およびエリート群における投手の形態及び体組成の特徴については、上肢 の周径囲に差はない一方で、体幹および下肢の周径囲と除脂肪量が有意に高値を示した。 このことから、球速を向上させるためには、体幹および下肢における筋量の増加が必要で あることが示唆された。また、投手の軸脚とステップ脚については、一側有意性がなく、 両脚とも低速群よりも高速群の方が有意に高値を示し、球速向上のためには下肢全体の筋 量の増加が必要であることが示唆された。 【現場への提言】これまで高校野球投手の競技パフォーマンス向上に向けた増量の必要性 を示されていたが、本研究結果から球速向上や各大会上位へ勝ち進むための投手へのトレ ーニング指導の際には、主に筋量の増加と共に体幹や下肢を中心とした身体づくりをする 必要があると言える。なお、形態及び体組成の本研究結果は、高校野球投手に対して左右 共に下肢を鍛えることを支持する根拠となった。
著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第9回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.O06, 2020 (Released:2022-04-22)

【目的】高校野球選手の競技力向上に向けた増量に関する情報が散見する中で、形態や体組 成を詳細に分析した報告は少ない。そこで本研究は高校野球選手の打力と盗塁能力との関 連性に着目し、高校野球選手における形態及び体組成の特徴について明らかにすることを 目的とした。 【方法】対象は全国の高校野球選手465 名(全国大会出場校から都道府県大会ベスト32 以 上)とした。測定項目は身体組成(TANITA 社製MC-780A-N)、周径囲(ISAK 身体計測方法)、 スイングスピード(SSK 社製マルチスピードテスターⅡ)とした。測定は各高校野球部のグ ラウンドまたは室内施設にて実施した。さらにアンケート調査を行い、プロフィール、打力 (本塁打数、打者タイプ)、盗塁能力(盗塁数、主観的な足の速さ)について回答を得た。 なお、統計分析は身体計測値と本塁打数およびスイングスピードとの相関係数を求めた。ア ンケートで回答した盗塁数から盗塁5 個以下を「盗塁が苦手な群」、盗塁16 個以上を「盗塁 が得意な群」に分けて各計測値をt 検定にて検討し、主観的な足の速さ盗塁数との関係につ いてはクロス集計からχ2 検定を行った。なお、有意水準は5%未満とした。 【結果】本塁打数は両腕の前腕、胸囲、腹囲、臀囲、両脚大腿部、軸足下腿の周径囲との間 で有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。除脂肪量については、全身の除脂肪量、腕、 足、体幹の除脂肪量と有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。スイングスピードは、 引き手前腕の周径囲、腕、足、体幹の除脂肪量との間で有意な正の相関関係が見られた(p <0.01)。右投げ右打ちと右投げ左打ちそれぞれで左右差を検討したところ、右投げ右打ち における右の上腕周径囲が左よりも有意に大きかった(p<0.01)。盗塁においては、盗塁 が苦手な群よりも盗塁が得意な群の体脂肪率が有意に低く(p<0.01)、さらに腕の除脂肪 量は盗塁が得意な群の方が有意に大きかった(p<0.05)。また、盗塁が苦手な群と盗塁が 得意な群において主観的な足の速さに関してχ2 検定を行ったところ、盗塁が得意な群は 盗塁が得意な群に比べて主観的に足が速いと回答したものが有意に多かった(p<0.01)。 【考察】打力向上において、周径囲では特定した部位に限って大きいということなかったが、 身体組成では全身の除脂肪量、すなわち筋量の増加が必要であることが示唆された。また、 盗塁能力については、自覚的な足の速さが必要であり、身体組成としては体脂肪率が低く、 腕のスイングに影響する腕の除脂肪量が影響することが示唆された。 【現場への提言】高校野球選手の本塁打数やスイングスピードの向上を目的とする場合、周 径囲では特定の部位に特化して大きくする必要はなく、全身の除脂肪量の増加に務めるこ とが必要であると言える。また、盗塁など走ることを得意とする選手については、体脂肪率 を増加させないよう配慮することが必要である。なお、双方を高めるとするならば、体脂肪 率を極端に増加させないように配慮しながら、除脂肪体重増加に務めることが求められる。
著者
砂川 憲彦 真鍋 知宏 半谷 美夏 細川 由梨 奥脇 透 広瀬 統一 中山 晴雄 武冨 修治 笠原 政志 眞下 苑子 増島 篤
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.155-171, 2022-04-30 (Released:2022-06-05)
参考文献数
43

一般社団法人日本臨床スポーツ医学会および一般社団法人日本アスレティックトレーニング学会は,スポーツ外傷・障害調査の標準化に向けた有識者によるワーキンググループ(WG)を2020年12月に立ち上げ,本邦のスポーツ現場の実態に即した調査の実施方法について検討した.WGではスポーツ外傷・障害および疾病調査が国内の大学スポーツ現場において前向きに実施されることを想定し,基本項目についてノミナル・グループテクニックおよびデルファイ法を用いて検討した.その結果,記録者の属性,調査対象の定義,記録項目,疫学データの表現方法,収集されたデータの取り扱いに関する留意事項などに関する全8つの推奨文をまとめた.
著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.83-93, 2022-10-31 (Released:2022-11-19)
参考文献数
30

高校野球現場の熱中症予防に関する全体的な実態を明らかにし,今後の熱中症予防を推進していく上での課題を検討することを目的とした.質問内容は,熱中症予防に関する知識・態度・実践(KAP),実践する際の促進要因と阻害要因についてであった.その結果,選手・指導者ともに態度は良好であったものの,知識と実践については十分ではなかったため,教育の強化をしていく必要がある.また,選手と指導者間でKAPのスコアにはギャップがあり,熱中症予防の実践にあたっては,他者の存在に影響を受ける可能性が高いことから,選手と指導者がコミュニケーションを取って共通認識を高めることが,熱中症予防を強化する一助になると考えられる.
著者
山本 利春 笠原 政志 清水 伸子
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.101-108, 2020-04-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1

学校現場において,救急対応やスポーツ外傷・障害予防の必要性は高く,その対応を担う専門家が具体的に介入することが有用ではあると考えられるが,学校現場の多くにおいて,児童・生徒の事故やスポーツ外傷・障害に対して最初に対応しなければならないのは教員である.つまり,その教員が救急対応やスポーツ外傷・障害予防のコンディショニングに対して正しい知識を持って的確に対応できることが,学校現場でより求められていることになる.しかしながら現状では教員の救急対応能力は十分とは言えない状況である.したがって,今後は様々な場で多くの指導者(教員)を対象に救急対応やスポーツ外傷・障害予防のためのコンディショニングに関する講習会を開催していく必要があると考えられる.同時に,学校現場へ救急対応やスポーツ外傷・障害予防ができるトレーナーなどの専門的スタッフが配置することができれば,従来からの課題であるスポーツ外傷・障害を減らすための質を高めることができると考えられる.
著者
齊藤 訓英 山本 利春 笠原 政志
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.219-228, 2021-06-01 (Released:2021-05-13)
参考文献数
54

A few studies have reported that nighttime sleep and daytime napping are significantly associated with sleep disorders, memory, concentration, cognitive ability, and academic performance in children. Moreover, sleep is identified as an important factor that has a profound effect on children’s athletic performance. If a short daytime nap is shown to benefit children involved in sports activities, this evidence could be used to improve children’s athletic performance in the afternoon. In this study, we investigated whether a short daytime nap could reduce the decline in athletic performance observed in the afternoon in children involved in basketball games. We investigated 10 elementary school-age male basketball players. The study was performed under two conditions, with and without a 20-min nap during the lunch break, and evaluation was performed under both conditions for 3 days each. The reaction and 20-m sprint times were measured after morning practice, before afternoon practice, and at the end of practice on all days. At the beginning of afternoon practice, the 20-m sprint time was significantly shorter (p<0.05) in the no-nap group (4.18±0.27 s) than in the nap group (4.24±0.24 s). In conclusion, our results suggest that a short daytime nap in children may reduce the decline in exercise performance observed in the afternoon.
著者
石郷岡 旭 山本 利春 笠原 政志
出版者
一般社団法人 日本アスレティックトレーニング学会
雑誌
日本アスレティックトレーニング学会誌 (ISSN:24326623)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.125-132, 2017-03-31 (Released:2019-05-27)
参考文献数
15
被引用文献数
3

運動部活動におけるスポーツトレーナー(以下:トレーナー)介入の実態を調査するため,高等学校の部活動指導者814名に質問紙調査を行った(回収率34%).その結果,多くの指導者がスポーツ傷害への対応に困っており,それらの対応や予防を期待し,トレーナーの介入を望んでいたが,トレーナーの介入率は32%と少なかった.トレーナーが介入している部活動では,競技成績の向上や怪我の減少等の介入効果を実感している指導者が多いことが明らかとなった.トレーナーの介入を実施していない部活動では,金銭面や指導者のトレーナーに対する認識不足が,介入に至らない原因と考えられ,高等学校運動部活動へのトレーナーの介入には,これらの問題点についての検討が必要であることが推察された.
著者
山本 利春 笠原 政志
出版者
国際武道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本取組では、日本の体育系大学における「学生選手におけるスポーツ医科学的健康管理」と「スポーツ医科学サポートを担う人材(以下トレーナー)育成」を結合した新たな学生教育システムの遂行を試みた。このシステムを通じて、学生は専門知識の習得だけではなく、様々な実地訓練から運営・実行に必要な実践的な経験を積むことができた。つまり、この体育系大学での実習経験は、スポーツ界および広く国民の健康づくりのサポートができる人材育成に寄与すると期待される。