著者
菅野 昌明 濱田 和樹 長谷川 裕
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
トレーニング指導 (ISSN:24336742)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-17, 2017 (Released:2020-03-26)
参考文献数
25

本研究の目的は、国内最高峰のラグビートップリーグに所属するチームの男子ラグビー選手25名を対象に、爆発的な加速能力に重要な役割を果たすと考えられる1-4Step区間のスプリントスタート能力の向上のための、スプリント変数や下肢筋機能との関連性 を明らかにすることであった。その結果、1-4Step区間のスプリント走速度とステップ長、滞空時間、接地時間との間に有意な相関関係が認められたが、ステップ頻度との間には有意な相関関係は認められなかった。下肢筋機能では、20kg、30%1RM、60%1RM、80%1RMに対するジャンプ・スクワット・パワーの体重比、およびリバウンドジャンプ指数との間に有意な相関関係が認められた。また、1-4Step区間のスプリント走速度で区分した上位群と下位群とのスプリント変数と下肢筋機能の違いを比較した結果、スプリント変数ではステップ長、滞空時間が、下肢筋機能では20kg、および60%1RMのジャンプ・スクワット・パワー体重比、リバウンドジャンプ指数において上位群が有意に大きい値を示した。さらに、 接地時間と30%1RMおよび80%1RMに対するジャンプ・スクワット・パワーの体重比において有意ではないが大きな差が示され、上位群が下位群よりも接地時間が短くジャンプ・スクワット・パワーでは高値を示した。これらの結果から、1-4Stepスプリント走速度の向上には、ステップ長を高めつつも、短い接地時間を達成することが重要であると考えられた。また、1-4Stepスプリント走速度を改善するためには、軽負荷から高負荷領域までの下肢伸展パワーを増大することや、ストレッチ・ショートニング・サイクル筋活動で行われる下肢反応筋力能力を改善することが必要であると考えられた。
著者
木村 征太郎 笠原 政志 山本 利春
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第9回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.O07, 2020 (Released:2022-04-22)

【目的】高校野球投手の競技力向上に向けた増量に関する情報が散見する中で、形態や体 組成を詳細に分析した報告は少ない。そこで本研究は高校野球投手の球速と競技レベルに 着目し、高校野球投手の形態及び体組成の特徴について明らかにすることを目的とした。 【方法】本研究における測定は各高校野球部のグラウンドまたは屋内施設にて実施した。 測定対象は全国の高校野球投手120 名(年齢:16.2±0.7 歳、身長:173.6±5.1cm、体 重:68.9±10.2kg)とした。測定項目は体組成(TANITA 社製MC-780A-N)、周径囲(ISAK 身 体計測方法)とした。さらにアンケート調査を行い、プロフィール、プレースタイル(投 球タイプ、最高投球速度など)について回答を得た。分析方法は、球速はアンケートから 得られた最高投球速度とし、高速群23 名(130km/h 以上)、中速群26 名(120km/h 以 上)、低速群37 名(120km/h 未満)に分類した。また、競技レベルをエリート群28 名(過 去5 年以内に春夏含め複数回甲子園出場校)と非エリート群18 名(都道府県予選敗退 校)に分類した。各群における体組成と周径囲の差に対する分析は、球速別の比較は一元 配置分散分析を行い、Tukey のHSD 法により多重比較検定を行った。競技レベル別の比較 は対応のないt 検定を行った。いずれも有意確率は5%未満とした。 【結果】球速別からみた高校野球投手における形態では前腕、上腕以外の全ての項目にお いて高速群が低速群に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。また、体組成では体重、ア ーム長、除脂肪量において高速群が低速群に比べて有意に高値を示した〔体重、アーム長 (p<0.05)、除脂肪量(p<0.01)〕。投手の軸脚とステップ脚の下肢周径囲を比較した結 果、両脚ともに高速群が低速群よりも有意に高値を示した[大腿両脚(p<0.01)、両脚下 腿(p<0.05)]。競技レベル別の体組成及び周径囲はエリート群が非エリート群よりも有 意に高値を示した〔身長、除脂肪量、腹囲、大腿、下腿(p<0.05)〕。 【考察】高速群およびエリート群における投手の形態及び体組成の特徴については、上肢 の周径囲に差はない一方で、体幹および下肢の周径囲と除脂肪量が有意に高値を示した。 このことから、球速を向上させるためには、体幹および下肢における筋量の増加が必要で あることが示唆された。また、投手の軸脚とステップ脚については、一側有意性がなく、 両脚とも低速群よりも高速群の方が有意に高値を示し、球速向上のためには下肢全体の筋 量の増加が必要であることが示唆された。 【現場への提言】これまで高校野球投手の競技パフォーマンス向上に向けた増量の必要性 を示されていたが、本研究結果から球速向上や各大会上位へ勝ち進むための投手へのトレ ーニング指導の際には、主に筋量の増加と共に体幹や下肢を中心とした身体づくりをする 必要があると言える。なお、形態及び体組成の本研究結果は、高校野球投手に対して左右 共に下肢を鍛えることを支持する根拠となった。
著者
刀根 隆広 笠原 政志 山本 利春
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第9回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.O06, 2020 (Released:2022-04-22)

【目的】高校野球選手の競技力向上に向けた増量に関する情報が散見する中で、形態や体組 成を詳細に分析した報告は少ない。そこで本研究は高校野球選手の打力と盗塁能力との関 連性に着目し、高校野球選手における形態及び体組成の特徴について明らかにすることを 目的とした。 【方法】対象は全国の高校野球選手465 名(全国大会出場校から都道府県大会ベスト32 以 上)とした。測定項目は身体組成(TANITA 社製MC-780A-N)、周径囲(ISAK 身体計測方法)、 スイングスピード(SSK 社製マルチスピードテスターⅡ)とした。測定は各高校野球部のグ ラウンドまたは室内施設にて実施した。さらにアンケート調査を行い、プロフィール、打力 (本塁打数、打者タイプ)、盗塁能力(盗塁数、主観的な足の速さ)について回答を得た。 なお、統計分析は身体計測値と本塁打数およびスイングスピードとの相関係数を求めた。ア ンケートで回答した盗塁数から盗塁5 個以下を「盗塁が苦手な群」、盗塁16 個以上を「盗塁 が得意な群」に分けて各計測値をt 検定にて検討し、主観的な足の速さ盗塁数との関係につ いてはクロス集計からχ2 検定を行った。なお、有意水準は5%未満とした。 【結果】本塁打数は両腕の前腕、胸囲、腹囲、臀囲、両脚大腿部、軸足下腿の周径囲との間 で有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。除脂肪量については、全身の除脂肪量、腕、 足、体幹の除脂肪量と有意な正の相関関係が見られた(p<0.01)。スイングスピードは、 引き手前腕の周径囲、腕、足、体幹の除脂肪量との間で有意な正の相関関係が見られた(p <0.01)。右投げ右打ちと右投げ左打ちそれぞれで左右差を検討したところ、右投げ右打ち における右の上腕周径囲が左よりも有意に大きかった(p<0.01)。盗塁においては、盗塁 が苦手な群よりも盗塁が得意な群の体脂肪率が有意に低く(p<0.01)、さらに腕の除脂肪 量は盗塁が得意な群の方が有意に大きかった(p<0.05)。また、盗塁が苦手な群と盗塁が 得意な群において主観的な足の速さに関してχ2 検定を行ったところ、盗塁が得意な群は 盗塁が得意な群に比べて主観的に足が速いと回答したものが有意に多かった(p<0.01)。 【考察】打力向上において、周径囲では特定した部位に限って大きいということなかったが、 身体組成では全身の除脂肪量、すなわち筋量の増加が必要であることが示唆された。また、 盗塁能力については、自覚的な足の速さが必要であり、身体組成としては体脂肪率が低く、 腕のスイングに影響する腕の除脂肪量が影響することが示唆された。 【現場への提言】高校野球選手の本塁打数やスイングスピードの向上を目的とする場合、周 径囲では特定の部位に特化して大きくする必要はなく、全身の除脂肪量の増加に務めるこ とが必要であると言える。また、盗塁など走ることを得意とする選手については、体脂肪率 を増加させないよう配慮することが必要である。なお、双方を高めるとするならば、体脂肪 率を極端に増加させないように配慮しながら、除脂肪体重増加に務めることが求められる。
著者
菊池 雄太 砂川 力也 増澤 拓也
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
トレーニング指導 (ISSN:24336742)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-11, 2020 (Released:2020-09-11)
参考文献数
26

本研究は、大学ラグビー部に所属する健常な男子大学生18名を対象に、スラックライン上での歩行トレーニングがバランス制御能力に与える影響について明らかにすることを目的とした。実験参加者を3群(スラックライン群;SL 群、フロント・サイドブリッジ群;FS 群、コントロール群;Cnt 群)に分け、週に2 回のトレーニングを4 週間実施した。トレーニング前後に、重心動揺、筋力および反応ジャンプテストを測定し、各トレーニングセッションの終了直後に、主観的運動強度(RPE)を聴取した。その結果、SL群とFS 群において、トレーニング後に、重心動揺速度が有意に低い値を示した。SL 群およびFS 群の背筋力の変化は認められず、Cnt 群では、トレーニング後に低下する傾向であった。また、主観的運動強度はFS 群に比べSL 群が有意に低い値を示した。このことから、スラックラインを活用したトレーニングを行うことで、スタビライゼーション型の体幹トレーニングと同等にバランス制御能力が向上し、実践者は、トレーニング強度として主観的に小さく感じていることが明らかとなった。
著者
下河内 洋平 井川 貴裕 渡邊 有実 油谷 浩之 井口 理 内田 靖之 楠本 繁生
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
トレーニング指導 (ISSN:24336742)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.4-9, 2014 (Released:2020-03-30)
参考文献数
17

本研究はハンドボールにおいてシュートを打つ時の踏切脚と非踏切脚による片脚リバウンドジャンプの遂行能力と、両脚を用いたスクワット1RM(SQ1RM)及びスクワットジャンプ最大パワー値(SQJP)との関係性を検証した。19人の大学女子ハンドボール選手が本研究に参加した。彼女らは異なった負荷を用いてバックスクワットとスクワットジャンプを行い、SQ1RMとSQJPを決定した。また、測定参加者は片脚リバウンドジャンプ(RJ)をマットスイッチの上で10回行い、その時の接地時間、跳躍高、RJ指数(跳躍高/接地時間)をRJ遂行能力の指標として測定/算出した。各RJ遂行能力の指標をSQ1RMまたはSQJPで予測する直線回帰分析を、踏切脚と非踏切脚別々に行った。その結果、踏切脚においてはSQ1RM (R2 = 0.235~0.454, p < 0.05)とSQJP (R2 =0.238~0.426, p < 0.05)がより高いほど、跳躍高とRJ指数がより高く、接地時間がより短い関係性が示された。一方、非踏切脚においては、有意な関係性はSQ1RMとRJ指数の間にのみ見られた(R2= 0.158, p < 0.05)。これらの結果は、女子ハンドボール選手においては、SQ1RMとSQJPは踏切脚のRJ遂行能力のみ反映していることを示している。よって、これらの選手の下肢の筋力及び筋パワーを評価するためには、片脚スクワット1RMや片脚スクワットジャンプパワーを高精度で測定する方法を確立する必要がある。また、本研究結果は、下肢神経筋機能の左右不均衡を有する選手が両脚を効率的に鍛えるためには、より片脚での閉鎖性運動連鎖による運動をトレーニングプログラムにおいて強調する必要性があることを示している可能性がある。
著者
砂原 秀哉 棚橋 京香 仲 立貴 菅野 昌明
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
日本トレーニング指導学会大会プログラム・抄録集 第8回日本トレーニング指導学会大会 (ISSN:24337773)
巻号頁・発行日
pp.46, 2019 (Released:2022-02-25)

【目的】チェストプレスやショルダープレスでは、シートに後頭部、上背部、殿部を床面に右足、 左足を接触させる5ポイントコンタクトを保持することが推奨され、指導の実践現場において も、姿勢の重要性が強調されたレジスタンストレーニング指導が行われている。しかし、これ までのレジスタンストレーニングの指導書には、このような姿勢を維持する理由や姿勢の相違 に伴う発揮筋力の違いを示すエビデンスは明確に示されていない。そこで本研究は、チェスト プレスとショルダープレスの最大挙上重量(1RM)を、後頭部を背もたれシートに付けた姿勢と、 頸部を35°屈曲した姿勢で測定し、頸部の傾斜角度が1RMに影響を及ぼすかどうかを検討した。 【方法】対象者は、トレーニング経験を有する大学生28名(男性13、女性15名)、年齢は20.2±1.0 歳(男性20.8±0.4、女性19.7±1.1歳)であった。チェストプレスの測定はチェストプレスマ シン(FUNASIS社製)を用い、ショルダープレスの測定はショルダープレスマシン(LIDO社製) を用いた。姿勢条件は肩峰を通る床への垂直線-外耳孔と頭頂を結ぶ線の頸部角度が0と35° の2条件で実施した。角度の測定にMINATO神中式角度計7040を用いた。各姿勢条件における測 定はランダムに1RMに達するまで行った。チェストプレス、ショルダープレスの姿勢条件の1RM の比較には、対応のあるt 検定を行った。 【結果】対象全体のチェストプレス0°は50.5±18.0㎏、35°は50.7±18.5㎏、男子0°は67.5 ±9.0㎏、35°は68.3±9.9㎏、女子0°は35.7±6.9㎏、35°は35.5±6.4㎏であった。対象全 体および男女別ともにチェストプレス0°と35°の姿勢条件に有意差は認められなかった。一 方、対象全体のショルダープレス0°は27.1±9.1㎏、35°は25.9±8.9㎏、男子0°は36.0±5.1 ㎏、35°は34.4±4.9㎏、女子0°は19.5±2.7㎏、35°は18.5±2.8㎏であった。対象全体およ び男女別ともにショルダープレス0°が35°より有意に高値を示した。 【考察】頸部屈曲角度を変化させチェストプレスとショルダープレスでは、主働筋の長さが頸 部の屈曲により変化した場合に、筋の長さと張力の関係を示す「長さ-張力関係」によって 1RMに影響を及ぼすと考えられる。ショルダープレスでは、主に三角筋と僧帽筋上部が主働筋 であるが、頸部屈曲位35°条件では、肩甲骨や鎖骨の位置が変化し、これらの筋の長さが変化 し至適筋節長ではなかったと考えられる。一方で、0°条件では至適筋節長であったため高い 力を発揮することができたと考えられる。また、チェストプレスにおいて有意差が認められな かったことは、肩甲骨が起始部とは異なる大胸筋が代表的な主働筋であるため、頸部屈曲角度 の変化が大胸筋の長さに影響を及ぼさなかったと思われる。 【現場への提言】ショルダープレスのトレーニングにおいて、より適切に発揮筋力やパワーを 高めるためには、筋の長さ‐張力関係から、頸部屈曲角度を0°にしてトレーニングを行う必 要があると考えられる。一方、チェストプレスでは筋力発揮の観点からは頸部屈曲角度は影響 を及ぼさないと考えられる。
著者
菊池 雄太 砂川 力也 増澤 拓也
出版者
日本トレーニング指導学会
雑誌
トレーニング指導 (ISSN:24336742)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.3-11, 2020

本研究は、大学ラグビー部に所属する健常な男子大学生18名を対象に、スラックライン上での歩行トレーニングがバランス制御能力に与える影響について明らかにすることを目的とした。実験参加者を3群(スラックライン群;SL 群、フロント・サイドブリッジ群;FS 群、コントロール群;Cnt 群)に分け、週に2 回のトレーニングを4 週間実施した。トレーニング前後に、重心動揺、筋力および反応ジャンプテストを測定し、各トレーニングセッションの終了直後に、主観的運動強度(RPE)を聴取した。その結果、SL群とFS 群において、トレーニング後に、重心動揺速度が有意に低い値を示した。SL 群およびFS 群の背筋力の変化は認められず、Cnt 群では、トレーニング後に低下する傾向であった。また、主観的運動強度はFS 群に比べSL 群が有意に低い値を示した。このことから、スラックラインを活用したトレーニングを行うことで、スタビライゼーション型の体幹トレーニングと同等にバランス制御能力が向上し、実践者は、トレーニング強度として主観的に小さく感じていることが明らかとなった。