著者
鈴井 江三子 吉村 正 沖野 幸 柳井 晴夫 判治 康代 加納 尚美 毛利 多恵子 廣瀬 健
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.611-619, 2010-01
参考文献数
14

本研究では,自然出産を提唱してきたA診療所における1972〜2007年までの36年間の分娩記録17,687件を基に,分娩時の母体年齢,在胎週数,分娩時刻や出生体重の推移を明らかにした。また,開院10年目頃から変化した出産管理の方法が,どう周産期のアウトカムに影響を与えているのかを考察した。その結果,分娩時の母体年齢の推移は,1972〜1981年は約50%の人は25歳までに出産していたものが,2002〜2007年は約50%の人は34歳までに出産し,5歳上昇し,約80%の人は34歳までに出産していた。平均在胎週数の推移は,1979年を境に在胎週数は有意(P<0.01)に短くなっており,同診療所の妊婦健診に超音波診断が導入された時期とほぼ一致していることが明らかになった。分娩時刻の推移は,1972〜1981年にかけては,午前8時〜午後4時までが分娩時刻のピークであったものが,1982年以降の30年間は午前0時〜午前8時までが分娩時刻のピークとなり,自然出産を提唱し始めた1982年を境に有意(P<0.01)に分娩時刻に差がみられた。平均出生体重の推移は,出生体重の分布図を10年ごとにみた場合,1972〜1991年の20年間は出生体重の分布幅は大きかったが,1992年頃から徐々に偏差が狭くなり,2002年以降は出生体重の平均値あたりに分布が集中し,とくに偏差が狭くなっていることがわかった。以上,A診療所における周産期のアウトカムは,出産管理の内容を変化させた年次によってその様相が異なっていることが明らかになった。