- 著者
-
中村 幸代
堀内 成子
毛利 多恵子
桃井 雅子
- 出版者
- 一般社団法人 日本助産学会
- 雑誌
- 日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.2, pp.205-214, 2010 (Released:2011-04-07)
- 参考文献数
- 20
- 被引用文献数
-
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目 的 ブラジル在住のブラジル人妊婦を対象に,冷え症の自覚がある妊婦の体温及び,妊娠中の随伴症状や日常生活行動の特徴の実態を分析する。対象と方法 妊娠20週以降のブラジル在住ブラジル人妊婦200名を対象とし,体温測定と質問紙調査を行った。調査期間は2007年10月から2008年2月である。結 果 1,冷え症の自覚があった妊婦は114名(57%)であった。前額部深部温と足底部深部温の温度較差の平均は,冷え症の自覚がある妊婦は,2.8℃,冷え症の自覚がない妊婦は2.0℃で,2群間に有意差が認められた(p=0.018)。2.冷え症の自覚と冷え症を判断する基準(寺澤,1987)との比較にて,冷え症の自覚がある妊婦のうち,冷え症を判断する基準(寺澤,1987)でも冷え症である妊婦は70.2%であり,冷え症の自覚がない妊婦のうち,89.5%は冷え症を判断する基準(寺澤,1987)でも冷え症ではないと判断できた。3.妊婦の冷え症と随伴症状・日常生活行動との関連性では,「冷えの認識」と「冷えに関連した妊娠に伴う症状」は相互に因果関係は認められなかった。「不規則な生活」は「冷えに関連した妊娠に伴う症状」に正の影響を与えていた(β=0.41, p=0.049)。さらに「不規則な生活」は「冷えに関連した妊娠に伴う症状」を介して「陰性食品の摂取」に正の影響を与えていた(β=0.38, p=0.021)。結 論 1.冷え症の自覚がある妊婦の,前額部深部温と足底部深部温の温度較差は,冷え症の自覚がない妊婦に比べて有意に大きい。冷え症の自覚は,客観指標となる温度較差を反映している。2.冷え症の自覚がない妊婦と,冷え症を判断する基準(寺澤,1987)の一致率は約8割と高かった。3.ブラジル人妊婦は,「深部温温度較差」や「冷えの認識」と,「冷えに関連した妊娠に伴う症状」や「不規則な生活」や「陰性食品の摂取」との間に因果関係はなく,日常生活行動が冷え症に影響を与えない。