著者
前 晋爾
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.107-113, 1975-09-30 (Released:2009-07-23)
参考文献数
8

純度の高い氷多結晶内に, 局所的照射を行い, 結晶粒内および粒界内に独立の内部融解像, すなわちチンダル像を形成し, その形態を観測した.結晶粒界に形成したチンダル像は, その形態が結晶粒内チンダル像と異なっていた.結晶粒内チンダル像には, perturbationを持たない円盤型チンダル像, あるいはperturbationのwave numberが6のチンダル像が存在するが, この実験で観測された粒界内チンダル像のperturbationのwave numberの最小は12であった.樹枝状になったチンダル像の樹枝間の角度を測定すると, 粒界内チンダル像では15°の倍数であることがわかった.この結果は底面に平行な樹枝間の角度が60°であることとかなり異なっているが, 粒界内チンダル像の形態はHiguchiにょって単結晶内で発見された, 底面に直交するチンダル像の形態と良く似ている.とがった先端をもつ粒界内チンダル像のperturbationの発生について, 粒内チンダル像と比較して論じた.
著者
若濱 五郎 成瀬 廉二 庄子 仁 藤井 理行 中澤 高清 高橋 修平 前 晋爾
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、南極クィ-ンモ-ドランド氷床、グリ-ンランド氷床、北極氷冠、およびアジア内陸地域の氷河等にて堀削し採取された氷コアの解析を行い、諸特性を相互に比較検討することを目的として進められた。特に、最終氷期以降の大気環境変動の過程ならびに氷床・氷河の変動におよぼす氷の動力学的特性を明らかにすることに重点をおいた。研究成果の概要を、以下の1〜4の大項目に分けて述べる。1,氷の物理的性質の解析:氷床氷中の氷板、気泡、クラスレ-ト水和物の生成過程、ならびに多結晶氷の変形機構や再結晶について新しい知見が得られるとともに、氷コアの構造解析の新手法が開発された。2,氷の含有化学物質の分析:氷床氷中の酸素同位体、トリチウム、二酸化炭素、メタン、固体微粒子、主要化学成分、火山灰等の分析結果から、最終氷期以降あるいは近年500年間の大気環境変動過程について多くの情報が集積された。特に、両極地の比較検討も行われた。3,雪の堆積環境に関する解析と数値実験:南極地域にて観測された気象・雪氷デ-タ等の解析、および数値シミュレ-ションを行うことにより、中・低緯度から極地氷床への物質・水蒸気の輸送過程ならびに雪の堆積・削はく現象と分布について研究された。4,氷河・氷床の流動と変動機構に関する解析と数値実験:南極東クィ-ンモ-ドランド氷床の平衡性、白瀬氷河の変動、山脈周辺の氷床の動力学的特性、深層氷の年令推定法などについて考察された。1990年9月、札幌において本総合研究の全体研究集会を開催し、各研究結果の総合的討論を行った。この成果は、総合報告書(B5版、312ペ-ジ)として1991年3月に出版された。同報告書では、将来の氷床コア研究の展望と諸課題も論じられている。