著者
前場 康介 竹中 晃二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.36-40, 2012 (Released:2014-07-03)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究の目的は、セルフ・エフィカシー(SE)の強化を意図した介入が高齢者の運動継続に及ぼす効果をメタ・アナリシスにより検討することであった。国内および国外における論文について、「高齢者(older)」、「運動(exercise)」、および「自己効力感/セルフ・エフィカシー(self-efficacy)」をキーワードとして検索した。論文の採択基準として、①60歳以上の高齢者を対象としていること、②SEの向上を意図した介入を行っていること、③ランダム化比較試験であること、④SEおよび運動継続に関する評価を行っていること、および⑤メタ・アナリシスに必要な統計量が記載されていること、という5つを設定した。これらの基準を満たす5件の研究を対象としてメタ・アナリシスを実施した結果、運動SEの強化を意図した介入が高齢者の運動継続に有効であること、さらに、その効果はフォローアップ時により顕著に表れることが明らかになった。高齢者を対象とした今後の運動介入研究においては、SEの強化を意図することが重要であるとともに、その具体的な介入方法について詳細に検討することが必要になると考えられる。
著者
寺上 愛香 前場 康介
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学心理学部紀要 (ISSN:24348295)
巻号頁・発行日
no.4, pp.147-153, 2022-03

本研究では,大学生の進路選択における不安を,自己効力感の情報源の1つである生理的・情動的喚起として扱い,自己効力感と不安の関連について明らかにすることを主な目的とした。調査対象者は4年制大学に所属する大学生130名であり,進路選択行動変容ステージ,自己効力感,および就職不安についてWeb アンケート方式にて実施してもらった。その結果,進路選択行動変容ステージの進行,すなわち進路選択行動への動機づけや行動頻度が高まるにつれて,自己効力感は向上し,同時に不安が低減していくことが明らかとなった。しかしながら,行動変容ステージにおける3段階目の,30日以内に進路選択行動を開始する意図があるという段階を示す準備ステージでは,一時的にその傾向が反転するという,他の行動とは特異的な点がみられた。また,就職活動そのものに関する不安と比較して,選択すべき職業への適性に関する不安の方が,自己効力感をより強く阻害する可能性が考えられた。さらに,進路選択やキャリアに伴う不安は,就職活動が終了すれば消失するものではなく,就職が決まった後もその決定が正しかったのか思い悩むなど,長期にわたり継続するものであることが示唆されており,本研究においても就職不安におけるそのような特質が反映された結果となった。
著者
前場 康介 竹中 晃二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.12-18, 2012 (Released:2014-07-03)
参考文献数
25
被引用文献数
3

本研究では、高齢者における運動セルフ・エフィカシー(Self-efficacy; SE)に影響する4つの情報源および運動変容ステージとの関連について検討し、各変容ステージにおける情報源の特徴を明らかにすることを目的とした。60歳以上の高齢者を対象とした質問紙調査を実施し、合計365名(男性166名、女性199名:平均年齢74.21歳)の回答が分析対象となった。質問紙の内容は、①基本属性、②運動SEの情報源、③運動SE、および④運動変容ステージ、をそれぞれ測定するものであった。分析の結果、定期的な運動習慣を有する高齢者は192名(52.6%)であり、運動SEの情報源における合計得点、および運動SE得点は変容ステージが進行するにつれて高まっていくことが明らかになった。さらに、運動SEの各情報源も同様に、変容ステージが進行するにつれてそれらの得点も漸増する傾向にあることが示された。本研究から得られた知見に従うことで、高齢者を対象とした運動介入においてより効果的な方略を提案することが可能となる。