- 著者
-
前川 圭子
- 出版者
- 日本音声言語医学会
- 雑誌
- 音声言語医学 (ISSN:00302813)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.4, pp.241-247, 2022 (Released:2022-11-17)
- 参考文献数
- 26
本邦では,職業歌手の音声障害に対して言語聴覚士(ST)による音声治療が行われることは少ない.しかし,微細な声帯病変でも歌声の異常をきたし仕事の成果にも影響する職業歌手に対してこそ,音声治療は積極的に行われるべきと考える.本稿では職業歌手の音声障害に対する音声治療の効果について文献的に考察し,実際に音声治療を行ううえでの要点について述べる.職業歌手に対する声の衛生指導の要点としては,1)歌唱以外の声の乱用・誤用を防ぐ,2)声帯の湿潤を心掛ける,3)vocal warm-up/cool-downを励行する,ことに留意している.また,発声訓練の要点としては,1)来院できる機会に集中的訓練を行う,2)試験的音声治療を行い最適な手技を使う,3)うまく歌うための技術指導は歌唱指導者から受ける,ことに留意している.発声訓練には,声帯の接触によるダメージを減らし,歌唱者の発声機能を改善することが報告されている半遮蔽声道エクササイズを利用している.