著者
諸頭 三郎 内藤 泰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.494-508, 2020-12-28 (Released:2021-01-16)
参考文献数
72

要旨: 人工内耳小児のマッピングや言語ハビリテーション, 心理的及び社会適応上の課題と対応などの術後ハビリテーションの概要を述べた。 人工内耳による聴覚入力と音声表出とは密接な関係にあり, 小児ではマッピングの結果が聴覚による言語学習や構音の発達に大きく影響する。従って, 小児での人工内耳マッピングでは, 強すぎる電荷量での刺激を避け, 適切な電荷量のマップで, 人工内耳を安定して継続的に装用できることが基本となる。個々の難聴原因や合併症などを勘案し, 最適な言語モダリティや言語ハビリテーションの方法や内容を検討することが重要である。また, 小児から成人に至るまで, すべてのライフステージで人工内耳での聴こえの限界に起因する心理的及び社会適応上の課題が起きることを想定し, 人工内耳の補聴援助システムを活用するなどの対応や指導が必要である。そして, 人工内耳小児自身が自分本来の人生を歩んでいけるよう, 人工内耳小児に関わる医師や言語聴覚士, 聴覚特別支援学校の教諭といった多職種による, 長期的視点にたった継続的なハビリテーションと支援が必須であると考える。
著者
大西 晶子 諸頭 三郎 前川 圭子 山崎 朋子 玉谷 輪子 藤井 直子 藤原 敬三 内藤 泰
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.531-538, 2020-12-28 (Released:2021-01-16)
参考文献数
11

要旨: 人工内耳 (CI) 装用小児の装用状況と音環境についての知見を得ることを目的とし, 18歳未満の CI 装用小児100例のデータロギングから得られたログデータについて, 各項目の分布を調べ, 就学前群, 小学生群, 中高生群で3群間の比較を行った。 CI 装用時間は, 年齢が高くなるごとに装用時間が長くなり, 中高生になると送信コイルの装用が安定した。音環境は, 雑音下の話声の方が静寂下よりも高い割合を占め, ログデータからも情報保障のための環境調整の重要性が示唆された。 CI データロギングは, 一定数の結果を集積した値と, 個々の小児の経時的変化を医療者が把握し, 保護者や関連機関と共有することで, より個々の小児に即したハビリテーションを行うことを可能にすると期待される。
著者
諸頭 三郎 山崎 博司 内藤 泰 眞鍋 朋子 山本 輪子 藤原 敬三 篠原 尚吾
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.68-76, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
23

当科で人工内耳手術を行った小児内耳奇形例11例をSennaroglu分類による奇形の型と人工内耳使用マップ, 術前聴力と術後人工内耳装用域値, 術前後の語音聴取や言語発達の成績, 発話明瞭度との関連を評価し, この分類法の臨床的妥当性について検討した。内耳奇形の内訳は2例がcommon cavity (CC), 2例がincomplete partition type I (IP-I), 5例がincomplete partition type II (IP-II), 1例がcochleovestibular hypoplasiaとcochlear nerve deficiencyの合併例 (CVH/CND), 1例が内耳道狭窄とCNDの合併例であった。11例中8例において人工内耳で音感を得るのに通常より大きな電荷量を必要とした。嚢胞状の蝸牛を呈するCCとIP-Iの4例中2例は術後語音聴取成績, 言語発達は良好であったが2例は不良でばらつきがあった。IP-II5例はすべての検討項目で術後成績が良好で言語メディアに聴覚-音声を使用していた。CND合併例2例は術後も語音聴取や言語発達の成績が不良で視覚言語の併用を必要とした。IP-IとIP-IIを峻別するSennaroglu分類とMRIによる蝸牛神経の評価の臨床的意義が確認された。