著者
佐藤 讓 前川 英己 朝倉 祝治 岡部 徹 山口 勉功
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

カネミ油症事件を引き起こしたPCBや、ゴミ処理時に発生するダイオキシン等の有機ハロゲン化合物は、人体に有害で環境に深刻な影響を及ぼし、かつ処理困難である。本研究の目的はこれらをほぼ完全に分解することにある。有機ハロゲン化合物の処理で最も困難なものは、成分であるハロゲンを如何に効率よく無害な物質に変化させるかである。化学的に最も安定なハロゲン化合物はアルカリ金属等との無機塩である。そこで、これに最適な方法として塩基性の溶融塩による分解処理を選定した。本研究では、強塩基性の溶融塩としてKOH-K_2CO_3およびNaOH-Na_2CO_3混合塩を用い、これに被処理物の溶液とキャリアガスである模擬空気を混合して吹き込み、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメータ(MS/GC)を用いて排ガスの分析を行った。15年度においては四塩化炭素を対象にして、16年度においてはモノクロロ、ジクロロおよびトリクロロベンゼン等を対象として実験を行った。17年度においては、これらのクロロベンゼン類の確認実験を行うと共に、PCBの一種である4-4'ジクロロビフェニルベンゼンを対象として実験を行った。実験では試料を含む溶液をキャリアガス(模擬空気、酸素あるいは窒素)に混合して溶融塩中に吹き込んだ。これらの流量を独立のコントローラによって制御し、吹き込む混合物の流量・濃度を変化させた。トリクロロベンゼンおよび4-4'ジクロロビフェニルは常温で固体であるために溶媒に溶かし、比較的希薄な溶液とした。その結果、総ての化合物について700℃以下の低温で99.998%以上の分解効率を得た。またキャリアガスとして窒素用いた実験でも同程度の分解効率を得たが中間生成物が検出された。しかし、それらは何れも塩素を含まないものであり、CO_2やH_2Oまでの完全分解とは行かずとも無害化の観点からは有効であり、本方法のPCB分解処理への適用が有効であることが確認された。