- 著者
-
前田 利松
小室 昌仁
松下 仁
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学療法学会
- 雑誌
- CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.Supplement2, pp.206-216, 1994-10-24 (Released:2011-08-04)
- 参考文献数
- 14
Tazobactam/piperacillin (TAZ/PIPC) は広域ペニシリン系抗生物質であるpiperacillin (PIPC) にβ-ラクタマーゼ阻害剤であるtazobactam (TAZ) を4: 1の力価比で配合した新規抗生剤である。今回マウス, ラット, ウサギ, イヌおよびサルを用い, TAZ/PIPC静脈内投与後の体内動態を検討し, 以下の結果を得た。1. TAZ/PIPC単回投与後の血漿中からの消失半減期は, TAZ, PIPCともにマウスで約5分, ラットで約10分, ウサギで約15分, イヌ, サルでは約25~35分であり, TAZ, PIPCはよく似た血漿中動態を示した。2. TAZ/PIPC単回投与後の尿中排泄率は, 未変化体TAZが約70~85%, TAZの代謝物M-1が約2~15%, 合計約80~90%であり, いずれの動物種においても主として尿中に排泄されたが, PIPCでは未変化体として約25~70%の排泄率であり, 種差が認められた。3. イヌにTAZ/PIPC16.6, 50または150mg/kgを単回投与した場合, TAZ, PIPCとも全身クリアランスおよび定常状態における分布容積の変動はほとんど認められず, この投与量範囲内では見かけ上ほぼ線形な動態を示すものと考えられた。4. イヌにTAZ/PIPCを反復投与した場合, TAZおよびPIPCの消失半減期, 全身クリアランス等のファーマコキネティックパラメーターや尿中排泄率は単回投与時とほぼ同じで, 反復投与により体内動態は変動せず, 蓄積性はないものと考えられた。5. マウスにTAZ/PIPC単回投与後のTAZの組織内濃度は血漿, 肝, 腎, 皮膚および肺に高く分布した。PIPCもTAZと同様の組織に高く分布した。6. In vitroにおける各種動物の血清蛋白に対するTAZの結合率は, TAZ/PIPC併用時, いずれの動物種においても0~4%と低かったが, PIPCの結合率は6.1~23.8%と種差が認められた。これはTAZ単独, PIPC単独時の結合率と比べて差は認められず, 併用による相互作用はないものと考えられた。7. イヌにおいて, プロベネシド併用による影響を検討した結果, TAZおよびPIPCはプロベネシド併用により, 血漿中からの消失が遅延した。