著者
加藤 純 前田 宗則 小沢 年弘
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.8, pp.1-10, 2012-07-25

Twitter や YouTube,Yahoo! Video などの大量データを扱うデータインテンシブな大規模サイトで人気データにユーザーのアクセスが集中すること (データスパイク) によるレスポンス性能の低下が問題になっている.本稿では時間軸に沿って重み付けされた人気度を省メモリで推定することによってデータスパイクの検出を高速に行い,データスパイク時のアクセス頻度の高さによって動的にレプリカ数を調節することでデータスパイクによるレスポンス性能の低下問題を解決する ARD (Adaptive Replication Degree) 機構を提案する.ARD 機構の評価を Michael Jackson の突然死に伴って Wikipedia で発生したデータスパイクを模したワークロードで行ったところ,データスパイクが発生した 5 秒後にはそのスパイクを検出でき,データスパイク時の平均レスポンス時間を 70% 削減できることを確認した.In Internet-scale data-intensive sites (e.g., Twitter, YouTube and Yahoo! Video), extremely concentrated accesses for a piece of popular data, called data spike, cause a high latency problem. This report proposes ARD (Adaptive Replication Degree) to solve such problem. The ARD estimates a time-weighted popularity of data by a memory-efficient manner and quickly detects a data spike through the estimated weighted popularity. When the ARD detects the data spike, it automatically changes the number of replicas of data by access rate of the data spike and levels the concentrated accesses. The evaluation of the ARD is performed by simulating the data spike caused by the sudden death of Michael Jackson at Wikipedia. This result shows that the ARD detects the data spike in five seconds after the rise of the spike and reduces average response time during the data spike by 70%.
著者
田邨 優人 中島 耕太 山本 昌生 前田 宗則
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.22, pp.1-6, 2017-07-19

ハードウェアの進歩に伴い,従来よりも大幅に低レイテンシな記憶装置やインターコネクタが登場している.計算機環境のさらなる高性能化,大規模化が求められる昨今では,今後これらのデバイスが主流になると考えられるが,大部分の計算機システムではその高速性を活かせない場合が多い.その一つの原因としてカーネル内でデバイスからの応答の検知にハードウェア割り込みを使用していることが挙げられる.性能が重要視される HPC 分野などではハードウェア割り込みよりも高速にデバイスからの応答検知を行うために polling という手法が用いられる.しかし polling は CPU リソースを占有してしまうという特性から汎用的な計算機システムには積極的に用いられることはなかった.そこで本研究では CPU リソースを管理しながらカーネル内で polling を行うための polling idle ドライバを提案する.提案手法を NVMe over Fabrics に実装して評価を行ったところ,最大 47.1% のレイテンシ削減効果,最大 77.3% の iops 向上を確認し,また iops の上限値が従来から 40.2% 向上したことを確認した.
著者
前田 宗則 田邨 優人 松尾 勇気 佐藤 充 中島 耕太
雑誌
研究報告システム・アーキテクチャ(ARC) (ISSN:21888574)
巻号頁・発行日
vol.2016-ARC-221, no.29, pp.1-5, 2016-08-01

ユーザ空間から直接にハードウェアをボーリングするスレッドを立ち上げ,I/O リクエストに即時応答することで低レイテンシと高スループットを両立するカーネルバイパス型ソフトウェアアーキテクチャが注目されている.カーネルバイパス方式では,スレッド間の排他処理や実行割り当ては,性能に影響するため繊密な設計が必要とされる.これまでに我々は,低レイテンシなスレッド待ち合わせ処理を軽量スレッドとボーリングの組み合わせで実現する方式を提案している.本稿では,軽量スレッドと高速待ち合わせ機構をカーネルバイパス型アーキテクチャの一方式である DPDK に適用することで性能向上を実現した.
著者
前田 宗則 小中 裕喜 石川 裕 友清 孝志 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 記号処理研究会報告
巻号頁・発行日
vol.93, no.81, pp.17-24, 1993-09-17

本稿では,循環参照カウント方式(CRC)を基礎とする新しいGCアルゴリズムCRC_<IW>を提案する.CRCは,ポインタによる循環構造も含めた任意の使用不能なメモリブロック(オブジェクト)を回収可能なGC方式であるが,対象言語がコンビネータに制限されること,循環構造を管理するアルゴリズムが逐次的であることという二点により,並列マシン上の一般の高級言語にはそのまま適用できなかった.CRC_<IW>は,各オブジェクトに順序数を与えることで任意の言語に適用可能とし,複数のプロセスによって並列に循環構造を管理するようアルゴリズムを拡張している.さらに,分散メモリを持つ並列マシンにおいてGCによる通信オーバーヘッドを低減するために,参照を3タイプに分けて管理することと各参照に重みを与えることが考察される.
著者
前田 宗則 小中 裕喜 石川 裕 友清 孝志 堀 敦史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. [プログラミング-言語基礎実践-]
巻号頁・発行日
vol.93, no.73, pp.113-120, 1993-08-19

参照カウント方式ゴミ集めは,アプリケーションが生成する参照に循環構造が存在しないことを前提とする既に広く知られたゴミ集め技法である.これまでに,循環参照を取り扱えるよう拡張された循環参照カウント方式が提案されているが,アルゴリズム上その方式の適用可能な計算モデルがコンビネータマシンに限定される問題がある.本稿では,オブジェクト指向言語を含めて,参照の循環を任意の時点で引き起こすようなポインタ操作を許す言語に対する循環参照カウント方式ゴミ集めを提案する.さらに本方式は,ゴミ集めの並列処理と重み付き参照による参照複製に関して考察し,並列/分散環境のための基礎を与える.