著者
宮 淳 前田 肇 堀 原一
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.1953-1958, 1985

大動脈弁閉鎖不全(AR)に起因した左心不全に対する緊急的かつ短期的な治療を目的として, (1) 経末梢動脈的に挿入・抜去が可能で, (2) 良好な固定性を有し, (3) 駆動装置の不要な新形式のカテーテル式傘型人工大動脈弁(CAV)を作製し, 実験的にARに起因した急性左心不全犬にてその左心補助効果を検討した. ARの作成によって拡張期および平均大動脈圧はそれぞれ42.0, 30.3mmHg低下, 平均左心房圧は8.7mmHg上昇し, 心拍出量は46.4%減少した. このARに対し, CAVを挿入, 作用させると拡張期および平均大動脈圧はそれぞれ22.9, 16.2mmHg上昇, 平均左心房圧は3.1mmHg低下し, 心拍出量は50.9%増大した. CAVによるAR治療の試みは過去にも行なわれていたが本CAVはその構造上バルブ部の良好な血流中心への固定性によって逆流防止作用が確実なこと, 冠状動脈入口部閉塞の危険性のない点が特徴であり, 重症ARの術前・術中の心負荷の軽減, 術前突然死の予防等に使用しうると考えられた.
著者
児玉 亮 広津 敏博 井島 宏 前田 肇 Marcel E. NIMNI
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.38, no.10, pp.725-731, 1981-10-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
22
被引用文献数
3

血小板を凝集および粘着させない修飾コラーゲンをプラズマ処理により人工血管に結合させ, その生体適合性と抗血栓性を検討した. グルタルアルデヒド処理により線維状コラーゲンの血小板凝集能は低下した. また, コラーゲンの線維形成を阻害すると凝集能は喪失した. 線維状コラーゲンもコンドロイチン硫酸とイオン結合すると血小板凝集能を失う. ヒアルロン酸はコラーゲンの血小板凝集能に影響を与えなかった. コラーゲン線維・コンドロイチン硫酸複合体膜は, 血小板の変形も小さく, 血漿たんばく質の吸着も抑制した. ポリエステル製人工血管をプラズマ処理して, コラーゲンを結合させ, 次に, コンドロイチン硫酸をイオン結合させた. これを成犬静脈に置換した. 急性実験 (3時間) では, フィブリン形成や血小板付着が抑制されていることがわかった. 長期 (3~6か月) 開存例もあり, 安定な偽内膜形成が観察された.