著者
前田 貴博 西 正博 新 浩一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.10, pp.1353-1363, 2012-10-01

筆者らはヒトの屋内への侵入検知を目的とし,UHF帯テレビ放送波を用いたヒト検知システムを提案している.本システムは,テレビ放送波の受信レベルがヒトの動きに応じて変動することを利用してヒトの有無を判定している.これまでは,テレビ放送波を受信するアンテナを屋内に設置し,受信レベルが変動した場合に「屋内にヒトが居ると判定(検知)」していた.一方,受信レベルは屋内のヒトだけではなく,屋外のヒトや車などの外乱の影響でも変動するため,「屋内にヒトが居なくても外乱により屋内にヒトが居ると判定(誤検知)」することがある.そこで本論文では,より高精度な検知性能を実現するために,屋内と屋外にアンテナを設置し,それぞれの受信レベル変動から外乱を判定し誤検知を低減する協調検知手法を新たに提案する.検知対象として屋内のヒト,また誤検知対象の外乱として屋外のヒト,車を想定し,検知確率及び誤検知確率を従来手法と比較し,協調検知手法の性能を評価した.実測結果から,従来手法では外乱により誤検知が生じる一方,協調検知手法ではどの外乱に対しても誤検知が低減されたことを確認した.またシミュレーション結果により,継続時間が3秒の外乱が10秒に1回生じるような状況においても,提案手法は,誤検知を従来手法と比べて約1/100に低減でき,また約50%の時間率で確実にヒトを検知できることを明らかにした.