著者
柳瀬 裕輝 西 正博 新 浩一 吉田 彰顕
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J94-B, no.2, pp.176-184, 2011-02-01

現在筆者らは,UHF帯テレビ放送波に着目し,全国4箇所にてその伝搬損変動特性を昼夜連続観測している.本論文では,瀬戸内地域において海上伝搬したテレビ放送波の伝搬特性について述べ,その伝搬損を推定する新たな方法を提案する.瀬戸内地域では,直接波と海面反射波の2波の伝搬が支配的であり,大気屈折率と潮位の変化を考慮することで2波モデルにより任意の周波数の伝搬特性を推定できる可能性がある.大気屈折率の指標として等価地球半径係数Kが一般に用いられるが,従来Kを推定するにはラジオゾンデで上空の気象データを取得する必要があった.しかし,ラジオゾンデを有する気象観測点は限られており,特に瀬戸内地域においてはその観測点が存在せず,これまでKを推定することは困難であった.そこで本研究では,UHF帯電波の伝搬特性を推定する新たな試みとして,2波モデルに基づき伝搬損の実測値からKを推定する方法を考案した.1年間の実測値からKを推定した結果,Kの累積確率50 %値は冬季に1.4~1.5,夏季に1.6~1.7となり,その変動幅は夏季に増加する傾向を確認した.また推定したKから異なる周波数の伝搬損を推定し実測値と比較した結果,累積確率の1 %値において6 dB以内の精度で伝搬損を推定できた.
著者
西 正博
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.101-109, 2015-10-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

VHF 帯及びUHF 帯の電波は,気象現象に伴うダクト伝搬により,非常に長い距離を伝搬することが知られており,無線システムにおいては,異常伝搬によるオーバリーチ干渉が問題となる.特に地上テレビ放送では,そのディジタル化により,干渉波の同定が困難になり,対策がより困難になってきている.本稿では,異常伝搬とディジタル放送時代の新しい異常伝搬対策技術について解説する.
著者
小林 真 増長 遥 新 浩一 西 正博
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J104-B, no.6, pp.471-480, 2021-06-01

VHF帯周波数は広く放送などで用いられている.特に,災害時には重要な情報伝達手段の一つとして利用されていることから,ノイズの大きさ等の電波環境を把握することが重要である.本研究では,湿度(相対湿度)変化とVHF帯ノイズの増減の関係を明らかにするために,VHF帯ノイズと湿度を含む気象現象との関係を調査した.2015年から2019年までの観測結果から,湿度40%以下のときに,湿度の低下に従ってVHF帯ノイズが急激に上昇することが分かった.更に,VHF帯ノイズと湿度の関係を表す式を導出した.
著者
西 正博 古川 達也 新 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.736-744, 2017-03-15

近年,全国的にゲリラ豪雨が発生しており,それにともなう土砂災害が発生し甚大な被害をもたらしている.広島市においては,2014年8月20日に安佐北区や安佐南区等の住宅地において大規模な土砂災害が発生し,また1999年6月29日にも集中豪雨により佐伯区等で土砂災害が発生しており,これまで多くの被害が生じてきた.土砂災害による被害を最小限に抑えるためには,住民らの適切なタイミングでの避難が重要となる.我々は,避難判断に必要な情報を住民が自ら入手できる環境を整える必要があると考え,24時間連続稼働可能な電源自立型の土砂災害監視カメラシステムを構築した.本システムは太陽光発電とバッテリ蓄電による自立的な電源供給を可能とし,赤外線カメラによる昼夜連続した危険箇所の監視を実現できる.また無線通信ネットワークを利用することで,リアルタイムに現地のカメラ撮影画像を住民らへ提供することが可能である.実際に土砂災害が発生し今後も危険が予想される広島市内の3カ所に本システムを設置し,2015年の5月から運用を開始した.山中での運用となるため,日々の日照時間が限られており,特に梅雨や冬季の日照時間が少ない時期にはシステムが停止することを経験した.本研究では,1年間の運用を行い山中での電源自立型システムの稼働データを得るとともに,その実績に基づき,実際のシステムの稼働状況をシミュレーションし,稼働率を100%にするためのシステム要件を明確化した.Recently, guerrilla rainstorms have frequently occurred all over Japan, possibly inducing land slide disasters which cause severe damage. In Hiroshima city, the serious land slide disasters attacked the residential areas of Asa-kita-ku, and Asa-minami-ku on Aug. 20, 2014, and heavy rainstorms induced land slide in Saeki-ku on June 29, 1999. There were a lot of damages in these disasters. To suppress the damages caused by land slide disasters as much as possible, it is important for residents to evacuate at appropriate timings. The authors consider that it is necessary to develop the environment where the residents can obtain information required for their decisions of evacuating or staying. Therefore we developed the self-powered camera systems for natural disasters monitoring, which are able to continuously work for 24 hours. The systems are self-powered by use of solar panels and a battery, and can monitor the dangerous area both in day and night by use of an infrared camera. Also the systems can provide real time images taken by the camera to residents through by wireless communication networks. In May, 2015, we began to operate the monitoring systems in the three areas where the land slide actually occurred in Hiroshima city. In these areas, there are few hours of sunlight in one day because the solar panels are installed in the wooded mountain. In our operation period, we experienced that the monitoring systems were down because of less sunlight particular in rainy season and winter season. In this study, based on the one-year actual operation results, we evaluated the operational features in the systems and clarified the required conditions to realize 100% in operation rate.
著者
岩見 哲也 西 正博 吉田 彰顕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.224-232, 2009-01-01
被引用文献数
2

これまで陸上伝搬のみならず海上伝搬特性を明らかにすることを目的として,多くの電波伝搬実験が行われてきた.本研究で対象とした瀬戸内地域は,対岸からの電波が到来しやすい環境であるが,その測定例は少ない.筆者らは,今後地上デジタルテレビ放送や移動通信への利用が検討されているUHF帯に着目し,標高の異なる2箇所の受信点において瀬戸内海上を伝搬したUHF帯テレビ放送波の定点測定を行った.18か月間の測定データから各受信点における伝搬損の月ごと累積確率分布や1時間ごとの伝搬損変動幅を算出することで,伝搬特性の定量的な評価を行った.また,直接波と海面反射波を想定し,従来から知られている2波モデルに基づいて大気屈折率と潮位の変動を考慮し,伝搬特性の考察を行った.測定の結果,受信点の標高が高く直接波と海面反射波の経路長差が大きいほど,伝搬損の変動が大きくなることを確認した.この伝搬損変動は大気屈折率の変化に伴うK形フェージングによって生じること,また大気屈折率が変化せず伝搬路が安定する場合にも,反射点の潮位の変化に伴って約12時間周期の伝搬損変動が生じることが分かった.また2波モデルによる考察から,瀬戸内地域におけるUHF帯電波の海上伝搬特性は,大気屈折率と潮位の両方の影響を考慮する必要があることを示した.
著者
市坪 信一 秦 正治 冨里 繁 西 正博 新 浩一
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

携帯電話システムの無線回線設計のためにマイクロセル内にある傾斜地での伝搬損失の推定方法を検討した。基礎データを取得するために、岡山市内の2地区、広島市内の3地区、北九州市内の4地区で傾斜地の伝搬損失を測定した。送受信の角度をパラメータとした4つの推定法を提案した。測定データを用いて提案方法の有効性を検証し、大まかな推定ができることを明らかにした。今後の推定精度向上のためには実際の傾斜地の状況をさらに推定法に反映させることが必要であることも明らかになった。
著者
吉田 彰顕 西 正博 新 浩一
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,地上ディジタルテレビ放送の近隣圏混信問題について,オーバーリーチ電波干渉に着目し,高層大気の電波屈折率との関連に取り組んだ。広島市立大学,広島大学(盆地),阿蘇山(山岳地)に観測系を構築し,3年間テレビ放送波の受信品質を観測した。その結果,上空数kmに電波ダクトが発生した場合,電波混信となること,またFM放送波の受信レベル変動の同時観測からその混信源を特定できることを明らかにした。
著者
前田 貴博 西 正博 新 浩一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J95-B, no.10, pp.1353-1363, 2012-10-01

筆者らはヒトの屋内への侵入検知を目的とし,UHF帯テレビ放送波を用いたヒト検知システムを提案している.本システムは,テレビ放送波の受信レベルがヒトの動きに応じて変動することを利用してヒトの有無を判定している.これまでは,テレビ放送波を受信するアンテナを屋内に設置し,受信レベルが変動した場合に「屋内にヒトが居ると判定(検知)」していた.一方,受信レベルは屋内のヒトだけではなく,屋外のヒトや車などの外乱の影響でも変動するため,「屋内にヒトが居なくても外乱により屋内にヒトが居ると判定(誤検知)」することがある.そこで本論文では,より高精度な検知性能を実現するために,屋内と屋外にアンテナを設置し,それぞれの受信レベル変動から外乱を判定し誤検知を低減する協調検知手法を新たに提案する.検知対象として屋内のヒト,また誤検知対象の外乱として屋外のヒト,車を想定し,検知確率及び誤検知確率を従来手法と比較し,協調検知手法の性能を評価した.実測結果から,従来手法では外乱により誤検知が生じる一方,協調検知手法ではどの外乱に対しても誤検知が低減されたことを確認した.またシミュレーション結果により,継続時間が3秒の外乱が10秒に1回生じるような状況においても,提案手法は,誤検知を従来手法と比べて約1/100に低減でき,また約50%の時間率で確実にヒトを検知できることを明らかにした.
著者
望月 慶輔 西 正博 吉田 彰顕 福田 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.605, pp.21-27, 2002-01-17

約33年周期で現れる, しし座流星群において, 2001年は期待通りの大出現が日本各地で観測された.天候や時間帯に左右されず流星活動を捕らえることができる電波観測には, これまではアナログFMチューナを用いた観測が行われてきた.筆者らは, 高感度なディジタルFMチューナを用いて, FM放送波による反射と広帯域ノイズを区別できる二周波観測法という観測法を考案し, しし座流星群のVHF帯流星エコー観測を全国3ヶ所で同時に行った.その結果, 流星の出現時刻に呼応し, 多数の流星エコーを観測することができたので, その観測方法および観測結果を報告する.また, 流星自身からの放射とみられる電磁波を検出したので, 結果を報告する.
著者
生越 重章 秦 正治 吉田 彰顕 西 正博
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

(1)伝搬損失距離特性市街地(岡山・広島)、郊外地(高松・岡山)、丘陵地(広島・岡山・高松)を自動車で走行しながら、UHFテレビ放送波の受信レベルを測定し、伝搬損失距離特性を求めた。(1)市街地では、平均建物高と送信アンテナ高との関連で見通伝搬の影響が大きく、伝搬損失は、奥村-秦式より10dB程度小さい。伝搬定数は、奥村-秦式の値2.8とほぼ一致する。(2)郊外地では見通伝搬が顕著であり、伝搬損失は奥村-秦式より10dB程度小さい。高松では、変動幅が10〜20dB程度と大きい。伝搬定数は、奥村-秦式の値より大きい。(3)丘陵地では、伝搬損失は奥村-秦式とほぼ一致する。伝搬損失の変動幅は20〜30dB程度と大きい。伝搬定数は、広島では奥村-秦式の値とほぼ一致し、岡山、高松では奥村-秦式の値より大きい。これから、固定送信・固定受信を前提としたUHFテレビ放送帯を用いた通信・放送融合型情報ネットワークの構築においては、上記結果を考慮したシステム設計を行う必要があることを明らかにした。ダイバーシティ受信時にも見通伝搬が顕著であることが示された。具体的な改善効果については今後の検討を待たなければならない。(2)システム関連事項(1)通信放送融合システムの形態下りにテレビ放送、上りに移動通信システムの適用を前提として、セル構成と周波数割当について検討した。overlapped法とsuperimposed法の特性について比較した。(2)サービスエリア評価走行受信を前提としたシステムのサービスエリアを評価した。受信レベル変動幅が大きいことにより、デジタル放送では、従来のアナログ放送エリアの35〜55%に減少する可能性があることを指摘した。(3)情報配信アルゴリズム利用者のアクセス頻度、データサイズ、リンク伝送速度などに基づいて、次のフェーズに配信するデータを適切なリンクに割り振る方法について有効性を明らかにした。