著者
劉 晶妮 福島 宏器
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PH-014, 2021 (Released:2022-03-30)

アレキシサイミアは,映像や言語刺激などに対する感情的な経験の乏しさと相関することが報告されている。しかし近年,質問紙調査によって,音楽という刺激に対する日常的な感情経験については,逆にアレキシサイミア傾向が高いほど感情的な経験が強いことが示唆されている。本研究は,こうした知見をさらに直接的に検討するため,参加者に実際に音楽を聴取させ,音楽聴取前後の顕在・潜在的な感情の変化とアレキシサイミア傾向との関連を明らかにすることを目的とした。参加者間計画としてHappy音楽を聴取する群とFear音楽を聴取する群に分けて調査を行った。結果として,音楽聴取に対する顕在・潜在的な感情反応の仕方は,音楽の感情価(HappyとFear)による差異が見られたものの,アレキシサイミア傾向と音楽による感情誘導効果の大きさとの間にほぼ正の相関があることが示された(つまり,先行研究の知見が再確認された)。特に,Happy音楽を聴取する群ではアレキシサイミア傾向が高い人ほど顕在的なネガティブ感情が低下していた。一連の結果は,音楽聴取がアレキシサイミアに伴うメンタルヘルスの問題に良い効果をもたらす可能性を示唆している。