著者
加藤 佐知子 竹原 健二 新田 知恵子 大田 えりか
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.110-119, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

目 的 本研究では電子カルテを用いて,切迫流早産で入院した妊婦を対象に実施されてきた,「衣服による体幹への締め付けを回避する保健指導」が早産のリスク低減にもたらす効果を検討することを目的とした。対象と方法 本研究のデザインは電子カルテのデータを用いた後ろ向き研究である。本研究の対象は2011年4月1日から2013年3月31日の時点で,調査協力施設に切迫流早産の診断を受けて入院をしていた妊婦230人のうち,対象基準を満たした208人とした。入院期間中に看護師や助産師が「衣服による体幹への締め付けを回避する保健指導」を実施した者を保健指導実施群,実施されなかった者を対照群とした。すべてのデータは電子カルテから収集された。結 果 対象者の基本属性では,平均年齢が34.7歳(標準偏差(SD):5.0),経産婦が103人(49.8%)であった。保健指導が実施された保健指導実施群は150人(72.1%)であった。二変量解析の結果,保健指導の実施の有無は,妊娠34週未満の早産(p=0.077),妊娠37週未満の早産(p=0.875)のいずれとも統計学的に有意な関連は認められなかった。しかし,先行研究の知見をもとに,社会経済的な要因や過去の受診歴などの交絡因子の影響を調整した多変量解析では,保健指導実施群の妊娠34週未満の早産に対するAdjusted Odds Ratio(AOR)は0.15(95% Confidence Interval(CI):0.04-0.57)と妊娠34週未満の早産のリスクを低下させることが示された。妊娠37週未満の早産との関連は示されなかった(AOR:0.67(95%CI: 0.28-1.60))。結 論 衣服による体幹への締め付けを回避する保健指導が妊娠34週未満の早産のリスクを低下させる可能性が示唆された。本研究は探索的な研究であり,サンプルサイズが小さいことや,対象者の無作為割付をおこなっていないなどの限界がある。今後,無作為化比較試験のような,この保健指導の有効性をより強く証明するような研究の実施が求められる。