著者
千葉 太郎 加藤 明子 浜渡 千春
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.408-415, 2011-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
14

近年は医療に関する種々の問題が表面化しており,これらの問題は過重労働を介して医療従事者の健康を損ねることにつながっていると思われる.そこで,問題点と過重労働との関連や医療従事者の健康を守るための対策について,特に勤務医を対象として考察した.わが国はOECD諸国の中で人口あたりの医師数は少なく,また病院数は減少傾向にある.厚生労働省によると,勤務医の1週間の総労働時間は63.3時間ときわめて長い.さらには医療関係訴訟も増加している.これらの状況から,勤務医は劣悪な労働状況の中で過重労働を強いられているといえる.日本医師会の調査では,勤務医には睡眠状況の悪い者が多く,また自分の体調不良を他の医師に相談する者は少なく,悲しみを自覚する医師,死や自殺について考える医師も少なからずみられるという.さらに医師の自殺は2005年に年間90件あり,自殺率は一般の日本人と比べて1.3倍と高い.このような労働状況とその帰結としての心身の不健康は,医療費抑制政策,新医師臨床研修制度,さらに医師-患者間の関係性の希薄化などと関連すると考えられる.勤務医の健康を守るために最も重要なのは,「人的資源」としての医療従事者の健康を守ることによって国民の健康と命を守るという立場から,国が対策に取り組むことである.
著者
芝山 幸久 滝井 英治 加藤 明子 松村 純子 島田 涼子 坪井 康次 中野 弘一 筒井 末春
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.547-551, 1999-10-01

症例は初診時18歳女性で, 身長163cm, 体重37kg, 無月経と体重減少を主訴に来院した. 自己嘔吐や過食のエピソードはなく, 治療経過中に心窩部痛が出現したため内視鏡検査施行したところ, GradeBの逆流性食道炎を認めた. さらに約1年後胸のつかえ感, 心窩部痛が出現したため内視鏡検査再検したところ, GradeDの重症逆流食道炎を呈してした, プロトンポンプ阻害薬(PPI)のランソプラゾール投与にて1カ月後には著明に改善していた. 発症機序として, 低栄養状態に伴う胃排出能低下によりTLESRが増加し, 逆流性食道炎を発症したと考えられた. BNに逆流性食道炎が合併することは知られているが, ANでも胸やけや心窩部痛は胃食道逆流症を想定すべきである. 自覚症状は摂食不良の一因にもなるため, 早期に内視鏡検査を施行して, PPIなどの投与を考慮すべきである.