- 著者
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加藤 良徳
- 出版者
- 日本語学会
- 雑誌
- 国語学 (ISSN:04913337)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.1, pp.31-41, 2001-03
藤原定家以前の仮名文書記史について,「システムの変遷」という視点から考察した。「システムの変遷」の面から見ると,定家と定家以前とでは大きな違いが認められる。定家以前には「文節」を示すために連綿を使っていたのを,定家が連綿と「異体文字遣」とによって示す方式に「改新」した点である。定家による仮名文書記システム「改新」の目的を,書記システム内,およびシステム外的条件を洗い出すなかで明らかにした。当時の歌壇では,歌書などの一字一句が重要視されていたので,一字一字をしっかりと表記することが必要となった(システム外的条件)。そこで定家は,平安末頃までに連綿の続き方がほぼ固定していた異体仮名について,例外をなくし,厳密に連綿の仕方を統一した上で,「異体文字遣」に利用した(システム内的条件)。連綿の使用を減らしながらも語句の境界を標示できる方法として,「異体文字遣」が選ばれたのである(「改新」の目的)。