著者
加藤 讓 野津 和己 古家 寛司 谷川 敬一郎
出版者
島根医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

下垂体成長ホルモンならびにプロラクチンの分泌は視床下部に存在するセロトニンによって促進的に調節されている。セロトニンは下垂体に直接作用するのではなく、視床下部の成長ホルモン分泌促進因子(GRF)を介して成長ホルモン分泌を促進し、プロラクチン分泌促進因子の1つであるVIPを介してプロラクチン分泌を促進する。我々はVIPの分泌に視床下部ガラニンが関与することを見出した。本研究ではセロトニンとガラニンとの関係についてラットを用いて詳細に検討した。ラットの脳室内にセロトニンやガラニンを注入すると血漿プロラクチンは用量反応的に増加した。しかしガラニンの投与はセロトニンによるプロラクチン分泌に相加的な影響を与えなかった。セロトニンのH_1受容体拮抗剤メチセルジドの前投与はガラニンによるプロラクチン分泌を部分的に抑制した。しかしセロトニンH_2ならびにH_3受容体拮抗剤の前投与はガラニンによるプロラクチン分泌に影響を与えなかった。セロトニン合成阻害剤であるパラクロロフェニ-ルアラニンの前投与はガラニンによるプロラクチン分泌を明らかに増強した。この効果はセロトニン神経阻害剤5、6ジハイドロトリプタミンの投与によって部分的に抑制された。パラクロロフェニ-ルアラニンはセロトニンによるプロラクチン分泌を増強させた。この効果はセロトニン受容体の感受性の増大によると考えられた。従ってガラニンによるプロラクチン分泌にセロトニン受容体が少なくとも部分的に関与することが示唆される。次に成長にホルモン分泌は視床下部ソマトスタチンニよって抑制されるが、ソマトスタチンノ誘導体である酢酸オクとレオチドはより強力かつ待続的な下垂体成長ホルモン分泌抑制作用を示した。従って視床下部ペプチドの誘導体ないし拮抗剤による成長ホルモンやプロラクチン分泌の抑制効果は、これらの神経ペプチドが下垂体腫瘍に対する薬物療法に応用可能である。
著者
宗宮 基 金沢 一平 澄川 美穂 長戸 妙 米原 さなえ 猪俣 信子 加藤 讓
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.259-262, 2003

症例は34歳, 男性. 飲食業. 主訴は口渇, 多飲, 多尿. コンタクトレンズ装用時検査の際に眼底出血と高血糖を認めたため, 紹介入院となった. 幼少時より注射に対する極度の恐怖心をもち, 成人してからも注射時の針を全く見ることができない状態であった. インスリン導入を行ったが, インスリン注射に対して拒否的であり, 注射時間になると明らかな焦燥感を認めた, 原因は針恐怖症と考えられた. 針を自ら刺す行為は実施不可能であった. 針無圧力注射器 (ShimaJET<SUP>&reg;</SUP>) の導入を試みたところ, 開始当初から患者に自己注射が可能であった. インスリン注射後180分間の血中インスリン濃度の指標である曲線下面積 (AUC) はダイヤル式携帯用インスリン注入器 (ノボペンIII<SUP>&reg;</SUP>) が3727.5μU, 針無圧力注射器が3687.8μUと差を認めなかった.<BR>これらの成績から, 針恐怖症を有する糖尿病患者のインスリン注射導入において, 針無圧力注射器の使用は有用と結論される.
著者
加藤 讓
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.2052-2057, 1994-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

視床下部は内分泌,自律神経機能を調節する中枢であり,視床下部障害によって多彩な症状が認められる.下垂体機能低下症においては視床下部障害と下垂体障害の鑑別が重要であり,内分泌負荷試験が有用である. LHRHの間欠的投与による視床下部性性腺機能低下症の治療は神経内分泌学の研究の成果の一つである.体重,体温,電解質異常に対しても視床下部病変の関与を常に考慮することが大切である.