- 著者
-
増田 晃
助川 剛
水本 直恵
谷 浩行
宮本 忠
笹井 知美
馬場 栄一郎
- 出版者
- 社団法人日本獣医学会
- 雑誌
- The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.11, pp.1177-1182, 2000-11-25
- 被引用文献数
-
4
31
イヌの外耳炎ではMalassezia pachydermatisが優勢な起炎菌として検出されるが, この真菌の持つ宿主特異性や部位特異性を解明する一助とするため以下の調査と実験を行った.1370頭の来院犬中にみられた120頭の外耳炎症例を対象に, 外耳炎の発生率, 耳翼の形状, 犬種との関係について疫学的調査を行った.垂耳犬種では672頭中85例(12.6%)が, 立耳犬種では698頭中35例(5.0%)が外耳炎であり, 両犬種間には有意差がみられた(P<0.05).脂肪酸定量のための耳垢材料が採取できた95例の耳垢サンプルについて, 培養によりM.pachydermatisを確認した後, 主な脂肪酸をガスクロマトグラフィーにより定量した.M.Pachydermatisの検出率は垂耳犬種で55.2%, 立耳犬種で53.6%と差がなかったが, 総脂肪酸量の平均値は垂耳犬種の方が立耳犬種よりも高く, 立耳犬種でありながら極端に高い脂肪酸値を示したシベリアンハスキーの値を棄却すると両耳型群の間には有意な差(P<0.05)がみられた.42株のM.pachydermatis分離株について脂肪酸の発育増強効果を調べたところ, 大多数の菌株が脂肪酸を利用しながら速く発育することが分かった.以上の結果から、犬種により差はあるものの脂質が多量に分泌されるイヌの耳道内では脂肪酸を好むM.pachydermatisがよく発育し, これはM.pachydermatisがイヌ外耳炎の優勢起炎菌になる理由の一つであると考えられる.