著者
勝俣 昌也 石田 藍子 豊田 裕子
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.164-172, 2013-12-26 (Released:2014-05-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 2

生産現場で栽培した飼料用米の化学組成の情報をえるために,国産飼料資源活用総合対策事業に参加した17協議会から,平成20年と平成21年産の飼料用米(玄米が14品種25サンプル,籾米が10品種17サンプル)を入手して分析した。さらに,保管条件による酸化劣化の程度を明らかにするために,玄米と籾米を28°C相対湿度80%の条件で保管して脂肪酸度の変化を調査し,4°Cで保管したときと比較した。測定したすべての玄米の化学組成と籾米の化学組成のあいだに差があった(P<0.01)。総エネルギー,粗蛋白質,粗脂肪,総リンの含量は玄米のほうが高く,粗灰分,カルシウム,NDF の含量は籾米のほうが高かった。さらに,玄米の必須アミノ酸含量のほうが,籾米の必須アミノ酸含量よりも高かった(P<0.05)。また,調査した玄米と籾米の粗蛋白質含量と総リン含量には正の相関があった(P<0.05)。28°C相対湿度80%で保管すると4°Cで保管するよりも脂肪酸度が高く(P<0.01),玄米として保管するほうが籾米として保管するよりも脂肪酸度が高かった(P<0.01)。28°C相対湿度80%で保管しても,籾米であれば脂肪酸度は変化しなかった。玄米と籾米の粗蛋白質含量と総リン含量の正の相関は,施肥量が多いと粗蛋白質含量が高くなったことを示唆している。保管中の酸化劣化の結果は,常温で保管するなら,籾米で保管するのが望ましいことを示唆している。
著者
石田 藍子 芦原 茜 勝俣 昌也
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.64-72, 2015-06-26 (Released:2015-09-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1

我々はこれまでに,飼料用玄米と規格外カンショを配合した飼料を肥育豚に給与することを想定して飼養試験をおこなってきた。その結果,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論づけている。また,茨城県内ではカンショ加工残さの飼料化がおこなわれている。そこで本実験では,実証試験として,茨城県内の養豚生産者の一般管理下において,飼料用玄米50%とカンショ加工残さ(試験1:干し芋残さ,試験2:芋ようかん残さ)22.5%を配合した飼料を肥育後期豚(体重65 kgから120 kg)へ給与し,飼養成績および肉質に及ぼす影響をトウモロコシ主体の市販飼料と比較して検討した。試験1では,日増体重が飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により高くなったが(P<0.05),試験2では差が無かった。背脂肪内層の脂肪酸組成は,試験1および試験2で,飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により一価不飽和脂肪酸割合が高くなり,多価不飽和脂肪酸割合は低くなった(P<0.05)。以上の結果より,飼料用米およびカンショ加工残さの併給は,実際の養豚生産者の飼養管理下において,トウモロコシ主体の市販飼料と遜色ない飼養成績を示し,脂肪酸組成に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
大森 英之 守谷 直子 石田 三佳 大塚 舞 小橋 有里 本山 三知代 佐々木 啓介 田島 清 西岡 輝美 蔡 義民 三津本 充 勝俣 昌也 川島 知之
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-200, 2007 (Released:2007-11-26)
参考文献数
33
被引用文献数
7 6

コンビニエンスストアから排出された消費期限切れ食品(コンビニ残さ)の肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料としての利用について検討した.コンビニ残さを分別し,弁当めし,おにぎり,菓子パンを主体とする発酵リキッド飼料を調製した.4頭を対照区(新豚産肉能力検定用飼料)に,10頭を発酵リキッド区(FL区)に割り当てた.さらにFL区を5頭ずつCa無添加区(FLN区)とCa添加区(FL+Ca区)に分けた.FL区の肥育成績は対照区と遜色なく,胸最長筋内脂肪含量は対照区(2.9%)に比べて有意に高い値を示した(P<0.01,FLN区 : 4.9%,FL+Ca区 : 5.2%).またFL区の皮下内層脂肪中のリノール酸比率は対照区に比べて有意に低かった(P<0.01).FLN区とFL+Ca区の肥育成績および肉質に大きな差はなかったが,FL+Ca区で血清中総コレステロール濃度は有意に低い値を示した(P<0.05).以上の結果から,分別により粗脂肪含量を抑え,タンパク質源,ミネラル,ビタミンを適切に配合することで,コンビニ残さは肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料として利用できることが示された.
著者
勝俣 昌也 芦原 茜 石田 藍子 小林 裕之
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.17-28, 2015-03-05 (Released:2015-06-30)
参考文献数
16
被引用文献数
2 5

玄米でトウモロコシの全量を代替できるか確認すること,玄米とカンショを併給するときの配合割合を検討することを目的として,3つの肥育試験を実施した。実験1では,トウモロコシ(75%配合)の全量を玄米で代替して肥育後期豚に給与したが,日増体量,飼料摂取量,飼料効率ともに影響はなかった。実験2では,玄米の配合割合を3水準(30,52.5,75%)設定し,玄米とカンショの併給が肥育後期豚の飼養成績と肉質におよぼす影響について検討した。日増体量,飼料摂取量に飼料の影響はなかった。飼料効率には飼料が影響する傾向があり(P<0.10),玄米30%配合区が低かったが,ほかの試験区のあいだに差はなかった。1頭あたりの玄米の給与量を増やすために,実験3では肥育前期から玄米(52.5%配合)を給与し,肥育後期は玄米(52.5%配合)とカンショ(22.5%配合)を併給した。肥育前期(30kg∼70kg)と全期間(30∼120kg)をとおしての飼料摂取量は,玄米·カンショ併給区が高く(P<0.05),全期間をとおしての飼料効率は玄米·カンショ併給区で低かった(P<0.05)。しかし,肥育後期には飼料の影響はなかった。実験1,2,3をつうじて,玄米を給与すると皮下脂肪内層の飽和脂肪酸と1価不飽和脂肪酸の割合が高く,多価不飽和脂肪酸の割合が低くなった。とくに,オレイン酸の割合の上昇とリノール酸の割合の低下は,再現性が高かった。実験2では,皮下脂肪内層の融点が玄米の給与で高くなったが,実験1と3では変化しなかった。胸最長筋のドリップロスやせん断力価には,玄米あるいは玄米とカンショの併給の影響はなかった。これらの結果から,トウモロコシの全量を玄米で代替して肥育後期豚に給与しても飼養成績と肉質に問題はなく,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論した。
著者
勝俣 昌也
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、筋肉内脂肪がある程度含まれた高品質豚肉の需要が高まりをみせ、国内でも、育種改良や栄養制御による取り組みがなされている。このような時代の要請を受け、ブタの筋肉内脂肪含量を栄養によって制御する研究に、我々は取り組んだ。そして、リジン含量の低い飼料を肥育後期豚に給与すると、胸最長筋の脂肪含量が最大10%程度まで高くなり、脂肪交雑を形成できることを見出した(Katsumata、 et. al.2005)。一方、ブタにおいて筋肉内脂肪が高くなるメカニズムについては、ほとんど情報がなかった。このような背景から、リジン含量の低い飼料を豚に給与したときに筋肉で脂肪交雑が形成されるメカニズムを、分子生物学的・組織化学的手法を用いて解明しようとしたのが、本研究である。本研究は、以下の2つの実験から成り立っている。(1)リジン含量の低い飼料(以下、低リジン飼料)をブタに給与し、筋肉におけるadipogenesis関連遺伝子発現に及ぼす影響を検討する実験、(2)培養脂肪細胞を用い、培地中のリジン濃度の違いが、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化に及ぼす影響を検討する実験、である。これらの実験を通し、「1あるいは3週間という短期間低リジン飼料を子豚に給与すると、筋肉におけるPPARγやSREBP1cなどのadipogenesis関連遺伝子発現量が高くなり、菱形筋では低リジン飼料に反応して脂肪蓄積が促進された」、「低リジン飼料給与により筋肉内に脂肪を蓄積する反応は、筋肉によって差があり、I型(あるいは酸化型)筋線維の割合が高い筋肉のほうが、反応が大きい」、「培地中のリジン濃度を下げると、培養脂肪細胞の分化は抑制され、脂肪細胞分化を調節する転写因子の発現も低くなった」という結果が得られた。これらのことから、低リジン飼料給与による筋肉内脂肪蓄積には、筋肉におけるadipogenesis関連遺伝子の発現が関与しているが、脂肪細胞へ供給されるリジンの量の低下が、直接の原因となって筋肉内脂肪蓄積が促進される可能性は低いと結論した。
著者
石田 藍子 芦原 茜 勝俣 昌也
出版者
日本養豚学会
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.64-72, 2015

我々はこれまでに,飼料用玄米と規格外カンショを配合した飼料を肥育豚に給与することを想定して飼養試験をおこなってきた。その結果,玄米とカンショを肥育後期豚に併給するときの配合割合は,それぞれ50%程度と20∼25%程度がよいと結論づけている。また,茨城県内ではカンショ加工残さの飼料化がおこなわれている。そこで本実験では,実証試験として,茨城県内の養豚生産者の一般管理下において,飼料用玄米50%とカンショ加工残さ(試験1:干し芋残さ,試験2:芋ようかん残さ)22.5%を配合した飼料を肥育後期豚(体重65 kgから120 kg)へ給与し,飼養成績および肉質に及ぼす影響をトウモロコシ主体の市販飼料と比較して検討した。試験1では,日増体重が飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により高くなったが(P<0.05),試験2では差が無かった。背脂肪内層の脂肪酸組成は,試験1および試験2で,飼料用玄米とカンショ加工残さの併給により一価不飽和脂肪酸割合が高くなり,多価不飽和脂肪酸割合は低くなった(P<0.05)。以上の結果より,飼料用米およびカンショ加工残さの併給は,実際の養豚生産者の飼養管理下において,トウモロコシ主体の市販飼料と遜色ない飼養成績を示し,脂肪酸組成に影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
大森 英之 守谷 直子 石田 三佳 大塚 舞 小橋 有里 本山 三知代 佐々木 啓介 田島 清 西岡 輝美 蔡 義民 三津本 充 勝俣 昌也 川島 知之
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.189-200, 2007-05-25
被引用文献数
5 6

コンビニエンスストアから排出された消費期限切れ食品(コンビニ残さ)の肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料としての利用について検討した.コンビニ残さを分別し,弁当めし,おにぎり,菓子パンを主体とする発酵リキッド飼料を調製した.4頭を対照区(新豚産肉能力検定用飼料)に,10頭を発酵リキッド区(FL区)に割り当てた.さらにFL区を5頭ずつCa無添加区(FLN区)とCa添加区(FL+Ca区)に分けた.FL区の肥育成績は対照区と遜色なく,胸最長筋内脂肪含量は対照区(2.9%)に比べて有意に高い値を示した(<I>P</I><0.01,FLN区 : 4.9%,FL+Ca区 : 5.2%).またFL区の皮下内層脂肪中のリノール酸比率は対照区に比べて有意に低かった(<I>P</I><0.01).FLN区とFL+Ca区の肥育成績および肉質に大きな差はなかったが,FL+Ca区で血清中総コレステロール濃度は有意に低い値を示した(<I>P</I><0.05).以上の結果から,分別により粗脂肪含量を抑え,タンパク質源,ミネラル,ビタミンを適切に配合することで,コンビニ残さは肥育後期豚用発酵リキッド飼料原料として利用できることが示された.