著者
勝又 隆
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.95-80, 2009-07-01

上代における「-ソ-連体形」文においては、「ソ」と述語との間に、格助詞「ヲ」を始めとして、格成分が主語を除いてあまり現れない。この現象について、本稿では以下のような考察を加えた。「ソ」は、述語と隣接または近接することで述部を構成し、述語を「焦点」に含むのが主たる用法である。そして、格成分は「ソ」がよく承接する要素である。それに加え、述語の項が「焦点」から外れる場合には「ソ」と述語との間には現れない。その結果、格成分の出現率が低くなっているものと推測できる。また、主語の出現率の高さは、主語そのものの出現頻度と重要度の問題であると考えられる。
著者
勝又 隆
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.93-79, 2005-10-01

上代における「-ソ-連体形」文は、「ム」「ラム」「ケム」「マシ」「ベシ」「ラシ」といったいわゆる推量系の助辞を結びの用言にとりにくい。一方、中古の「ゾ」の場合は「ラシ」結び以外は決して少なくない。上代と中古でこのような差異が見られるのは何故なのか。またそのことと構文構造とはどのような関わりがあるのだろうか。本稿では、まず「-ソ-連体形」文が発話の根拠となる情報を現実に存在する事態として認識している際に用いられることを示す。次に構文的特徴の面でも形容詞述語文と共通点を持ち、機能面と構文構造とに密接な関連が見られることを指摘し、最後に「-ソ-連体形」文の変化に形容詞述語文も影響を与えた可能性があることを指摘する。
著者
勝又 隆
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、古代日本語において述部に連体形が含まれるなどして名詞と共通する特徴を持つ文(名詞性述語文)について、それぞれの構文が互いにどのように影響し合い、上代から中古、中世にかけて変遷したのかを記述・考察し、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端に迫ることを目的とする。その過程で、構文的特徴や文意味・文機能等の観点から分析し、古代語の文終止体系におけるこれらの構文の位置づけを明らかにする。また、名詞性という基準によって各構文の変化を質的に捉えることにより、「述語」や「構文」の変化が起こる原理の一端を明らかにすることに貢献することを目指す。