著者
新井 達 小中 理会 脇田 加恵 勝岡 憲生 金森 晃
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.12, pp.2359-2364, 2009-11-20 (Released:2014-11-28)

糖尿病入院患者267名の皮膚症状を調査・検討した.平均年齢は58歳(男性15~86歳,女性19~80歳),糖尿病歴は平均13.2年,入院時HbA1cの平均値は9.13%であった.皮膚症状のなかでは真菌感染症,特に足白癬が高頻度(198例,74.1%)に認められた.カンジダ症は低頻度(14例,5.2%)であったが,13例に白癬を合併し,約半数が糖尿病Triopathyを伴っていた.直接デルマドロームとしては糖尿病性顔面潮紅(rubeosis)(53例),柑皮症(36例),手掌紅斑(23例)などが多くみられた.また,デュプイトラン拘縮は17例,前脛骨部色素斑は6例,糖尿病性浮腫性硬化症が5例にみられた.これらの皮膚疾患ではいずれも高率にTriopathyを伴っていた.また,因果関係は不明だが,掌蹠に色素斑を伴う症例が43例にみられ,男性に好発した.今回の我々の検討結果から,糖尿病に伴う皮膚症状と,その頻度,そして糖尿病の病態との関連性がより具体的に示されたものと考える.
著者
前島 英樹 齊藤 典充 天羽 康之 新山 史朗 向野 哲 勝岡 憲生
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.1757-1763, 2012-06-20 (Released:2014-11-13)

当科で治療した円形脱毛症383例(男性152例,女性231例)を対象に臨床所見,治療と予後につき検討した.初診時,易抜毛性がみられた症例は236例で,アトピー性素因を有する症例は142例であった.初診時の病型は,単発型34例,少数型60例,多数型146例,びまん型52例,全頭型15例,汎発型61例,蛇行型12例であった.治療は,SADBE外用塗布施行138例,ケナコルト局所注射施行126例,冷凍凝固施行126例であった.予後を略治(治癒後6カ月後再発なし),再発,離脱,治療中に分けて検討したところ,略治例は全体の23%であった.単発型では40%以上が略治したが,その他の病型では20%以下にすぎなかった.治療法では,ステロイド剤の内服とPUVA療法の組み合わせ療法で“易抜毛性あり”の症例が“易抜毛性なし”の症例より有意に略治率が高い.アトピー素因のある患者では,ステロイド剤の内服は有効であるが再発率が高い傾向があった.
著者
勝岡憲生
雑誌
皮膚病診療
巻号頁・発行日
vol.12, pp.807-810, 1990
被引用文献数
2
著者
三好 経子 高須 博 宮田 聡子 矢口 厚 太田 幸則 勝岡 憲生
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.603-607, 1998-10-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

46歳, 男性。骨髄線維症で北里大学医学部附属病院血液内科入院中に, 下腿に有痛性の隆起性紅斑が生じ同院皮膚科受診となった。初診時, 左下腿外側上方に拇指頭大で紅色の浸潤を有する結節性の紅斑が認められた。右下腿伸側から内側にかけては小児手拳大, 暗紅色の消退傾向にある浸潤性紅斑が認められた。その後も同様の紅斑が下腿や前腕などに出没した。無治療で経過観察していたところ, 初診から約1ヵ月半後に右下腿伸側に胡桃大, 暗紫紅色で軟らかな出血性の紅斑が再発し, その組織像では, 真皮中下層から脂肪織にかけて, 瀰漫性および巣状を呈する多数の好中球と出血が認められた。生検部位は直ちに難治性の潰瘍となったが, ステロイド剤の内服と局所処置の徹底により上皮化した。紅斑はその後も増悪·寛解を繰り返し, 皮膚病変と骨髄線維症の病勢とに相関があり, 自験例の紅斑は, 骨髄線維症に関連して生じたものと考えた。ステロイド治療の継続により皮膚病変はしばらく寛解期が継続していたが, 骨髄線維症の進行と肺炎の合併により死亡した。