著者
板見 智 高安 進 園田 忠重
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

ヒトの毛の発育の男性ホルモン感受性の違いを分子レベルで解析するために毛組織の上皮系、間葉系それぞれの細胞を培養し、男性ホルモンレセプター、5α-リダクターゼについてmRNAレベルで解析した。手術時に得た皮膚より手術顕微鏡下に頭髪、髭、脇毛等の外毛根鞘、毛乳頭を単離し継代数4-6代に達した細胞を実験に用いた。I型、II型それぞれの5α-リダクターゼのmRNAの発現をRT-PCR法で調べたところ、I型5α-リダクターゼのmRNAはすべての外毛根鞘、毛乳頭細胞に認められたがII型の5α-リダクターゼは髭及び前頭部毛乳頭細胞で強く発現していた。男性ホルモン受容体mRNAの発現は腋毛の毛乳頭細胞で最も強く後頭部毛乳頭細胞ではわずかに認めるのみであった。男性ホルモン受容体に対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織染色では、いずれの部位より得た毛包においても上皮系の細胞は陽性所見を示さず男性ホルモン受容体は毛乳頭細胞に局在していた。後頭部毛乳頭細胞には男性ホルモン受容体は認められなかった。以上の知見より髭、腋毛、男性型脱毛の前頭部毛の毛乳頭細胞はいずれも男性ホルモンの標的細胞であるが、II型の5α-リダクターゼは髭、男性型脱毛など強い男性化徴候を示すために必要と考えられた。毛乳頭細胞の分泌する男性ホルモン依存性の毛包上皮系細胞増殖因子について、in vitroで毛の発育作用が報告されているFGF、HGF、IGF-I等についてmRNAの発現を検討したところ、IGF-IのmRNAの発現のみが男性ホルモンにより促進されていた。また髭毛乳頭細胞と外毛根鞘細胞の混合培養では、男性ホルモンによる外毛根鞘細胞の増殖促進はIGF-Iに対する中和抗体により抑制された。これらの結果より髭組織においてはIGF-Iが毛乳頭細胞由来の男性ホルモン依存性の毛の増殖因子の一つであることが明らかとなった。
著者
櫻根 純子 福原 佐保 佐野 榮紀 田所 丈嗣 浅田 秀夫 板見 智 吉川 邦彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.162-166, 2000

原発性肢端紅痛症の27歳と6歳の母娘例を報告した。母娘共に幼少時より両足から下腿にかけて潮紅, 灼熱感, 疼痛を認め, 成長につれて症状は増悪した。持続性疼痛に対し消炎鎮痛剤等の投与は無効であったが, 冷水浸漬によりわずかに緩和された。なお母の姉にも同症を認めた。この3例はいずれも血液疾患などの基礎疾患は認めなかった。以上より家族性原発性肢端紅痛症と診断した。母娘ともにserotoninreuptake inhibitorである塩酸クロミプラミンを投与し, いずれも症状の著明な軽減を認めた。
著者
乾 重樹 板見 智
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

正常ヒトケラチノサイトの分化過程でHic-5はケラチノサイト内での局在が細胞質からFocal adhesionに変化し、内因性のHic-5はケラチノサイトの増殖、早期分化、接着能に正の影響を、運動能には負の影響及ぼしていることが示唆された。正常メラノサイトのモデル細胞として用いたB16-F1マウスメラノーマ細胞で、内因性のHic-5は増殖、遊走、浸潤能について正の影響を及ぼしていることがわかった。Hic-5はRho依存的なメラノーマの運動能調節経路を介してメラノーマの転移能に影響を与えた。これらのHic-5の役割は創傷治癒過程では上皮化過程および表皮の色素回復に関与していると考えられる。