著者
関口 敦 菅原 彩子 勝沼 るり 寺澤 悠理
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.225-229, 2022 (Released:2022-05-01)
参考文献数
19

近年,心身相関の認知科学的な背景の1つとして「内受容感覚」が注目されてきた.内受容感覚とは,呼吸・心拍・腸管の動きなど身体内部の生理的な状態に対する感覚を指し,ホメオスタシスの維持に必要な機能と考えられている.内受容感覚の障害はさまざまなストレス関連疾患で認められており,「脳」と「身体」をつなぐメカニズムでもある.Damasioらの研究により,リスク行動を選択する際には危険を認知する前に交感神経反応が亢進していることが確認されていることから,「身体」と「行動」の関連も説明可能で,内受容感覚は行動を規定する因子とも考えられる.本稿では,「脳」と「身体」と「行動」の相互連関の因果関係を示した研究として,われわれが行った内受容感覚訓練実験を紹介する.内受容感覚を強化する認知訓練により,不安および身体症状の軽減,行動の変化を観測し,将来的なストレス関連疾患治療への応用が期待された.