著者
北山 夕華
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、イングランドとスコットランドのシティズンシップ教育についての政策分析と現地調査により、両国におけるシティズンシップ教育政策の社会的・政治的背景について検討を進めた。両国に共通しているのは、グローバル化とそれにともなう共同体内部の文化的多様性の深化を受け、その対応をシティズンシップ教育が担っている点である。一方、連合王国(UK)、EUといったより上位の共同体との関係性や、文化的多様性をめぐる課題の違いが、両国の国民/市民概念の形成への姿勢に影響を与えていることが分かった。特にスコットランドにみられる国民国家をシティズンシップの第一義的な帰属先としないアプローチは、シティズンシップ教育におけるポスト・ナショナルな次元と多文化社会における統合が両立しうる可能性を示唆するものである。