著者
北島 遼太郎 瀬田 史彦 城所 哲夫 片山 健介
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.603-608, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究は2011年のタイ大洪水後日系企業の立地動向の把握とその要因の解明を目的としており、調査方法としてはメールによるアンケート調査と日系企業の現地法人へのヒアリング調査によって研究を行った。調査の結果、多くの日系企業が洪水後も従来の立地場所へ留まる傾向があり、その要因としては取引先企業が留まること、入居工業団地によって洪水対策が行われていること、工場移転のための資金を確保できないこと、工場の製造形態によっては人材育成が求められ容易に労働力を手放せないこと、政府への不信感から工場移転による洪水回避に期待が持てないこと等が挙げられた。政府によって洪水後に発表された復興開発戦略をこの立地動向を踏まえて見てみると、長期的治水対策や洪水情報の提供、保険制度の改善等は企業も望んでいるのに対し、堤防や嵩上げ等の局所的治水対策や新経済圏の開発等の戦略を企業は望んでおらず、今後に対する両者の態度には違いがあることが明らかになった。また両者の今後の相乗的な関係性の構築のために、調査を通じて感じられた日系企業によるタイ政府への不信感とタイ政府の計画実現の不確実性は、改善していく必要があると考えられる。