著者
北村 正敬
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

喫煙は潰瘍性大腸炎の寛解因子として知られている。本研究は「喫煙は芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化を介して潰瘍性大腸炎の発症進展を抑止する」という仮説を実験的に検証することを目的に行った。その結果、タバコ煙を曝露させたマウスでは肺および肝臓等で AhRの活性化が生じること、高濃度のタバコ煙への曝露により大腸でも AhR 活性化が起こること、また AhR の活性化物質の経口投与により大腸での AhR 活性化マーカーの発現上昇が認められ、実験的潰瘍性大腸炎の発症進展を抑止できること、を明らかした。
著者
村戸 ドール 樋口 明弘 北村 正敬
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

喫煙は多くの疾患や健康被害の原因や増悪因子として考えられており、特に肺における閉塞性肺疾患や肺癌などの影響がよく知られている。眼表面は肺と同じくタバコの煙を含め外界からの影響を受けている。シトクロムP450(CYP)酵素系は眼表面に存在し、外因子に伴う障害を防ぐ作用も知られているがCYP1A1およびCYP2A6系は肺癌発症に関係することも報告されている。我々は6週齢雄SDラットをチャンバー内に入れ、シリンジを用いてチャンバー内に主流煙を添加することにより曝露した。暴露後、フルオレセイン染色液を用いて蛍光染色法により角膜障害を、綿糸法により涙液量を測定した。次に角膜および涙腺を摘出し、シトクロムP450(P450) 1A1, P4501B1および2B2のmRNA発現変動をリアルタイムPCR法により測定した。タバコ煙暴露ラットは角膜上皮障害が生じ、涙液量の著名な低下が認められた。角膜の免疫染色において角膜上皮障害を示すCYP1A1および8-hydroxy-2'-deoxyguanosineの酸化ストレスにより発現が上昇することが認められた。これらの結果は喫煙が角膜だけでなく涙腺にも影響したことを示唆する。
著者
北村 正敬 前田 秀一郎
出版者
山梨大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

センサー配列DRE(dioxin-responsive elemen;ダイオキシン応答配列)の下流にレポータータンパクSEAP(secreted alkaline phosphatas;分泌型アルカリフォスファターゼ)をコードする遺伝子を挿入した遺伝子構造を作製し、芳香族炭化氷素群に属する有害化学物質に反応するトランスジェニックセンサーマウスを作製した。樹立したDRE-based sensing via secreted alkaline phosohatase(DRESSA)マウスに5μg/kg体重の2,3,7,8-TCDDを強制経口投与したところ、血中のSEAP活性はべ一スの100倍以上に増加した。DRESSAマウスにおけるダイオキシンの検出限界は、2,3,7,8-TCDDを指標にした揚合、0.5μg/kg体重(強制経口投与)であった。また、雌雄差を比較検討したところ、雄のDRESSAマウスは雌のそれに比し高い反応性を示した。タバコ煙にはダイオキシンをはじめとするハロゲン化芳香族炭化水素や多環芳香族炭化水素など、ダイオキシン受容体を活性化する物質が数多く含まれる。われわれはまず遺伝子組換えセンサー細胞を用い、タバコ煙が極めて高レベルのダイオキシン受容体活性可能を有することを明らかにした。次に樹立したDRESSAマウスに能動喫煙の形でタバコ煙を曝露し、その後血中のSEAP活性を測定した。その結果、喫煙により有意かつ持続的な血中SEAP活性の上昇を認めた。同様の結果は、受動喫煙のモデルにおいても得られた。これらの検討結果は、樹立したセンサーマウスが環境モニタリングにおいて有用であること、すなわち有害化学物質を含む外気や室内空気に反応してSEAPを発現産生することを強く示唆するものであり、現在実験的喫煙環境および市中幹線道路近傍大気を用い、センサーマウスによる大気汚染検出の試みを継続中である。