著者
塚本 克彦 柴垣 直孝 齋藤 敦 長田 厚 北村 玲子 今井 佳代子 樋泉 和子 島田 眞路
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.515-519, 1999-08-01 (Released:2010-10-14)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

ユーカリエキスを配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎に対する有用性を検討するために, セラミド誘導体などの油性保湿剤を配合した入浴剤を対照とし, これにユーカリエキスを配合した入浴剤を用いて臨床試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者31例(ユーカリエキス配合入浴剤使用群15例, 対照入浴剤使用群16例)で, 入浴剤を4週間使用してもらい, 2週間毎に診察した。その結果, 1. 皮膚所見に関しては, 「そう痒」, 「紅斑」, 「落屑」において両群とも有意な改善が認められたが, 両群間に有意差は認めなかった。2. 「全般改善度」, 「有用性」に関しては, ユーカリエキス配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群に比し優れた傾向が認められた。特に, 入浴剤を20回以上使用した患者においては, 「有用性」に関して, ユーカリエキス配合入浴剤使用群(13例)の方が対照入浴剤使用群(12例)に比し有意に優れていた。以上の結果より, ユーカリエキスを配合した入浴剤の使用は, アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
著者
柴垣 直孝 猪爪 隆史 安藤 典子 北村 玲子 水谷 三記子 長阪 晶子 清水 顕 島田 眞路
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.152-159, 2005 (Released:2005-10-25)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

ジアミド誘導体を配合した入浴剤のアトピー性皮膚炎患者に対する有用性を検討するために,合成擬似セラミドなどの油性保湿成分とユーカリエキスおよびオーツ麦エキスを配合した入浴剤を対照処方とし,この対照入浴剤処方にジアミド誘導体を配合した入浴剤処方を用いて二重盲検法による入浴での使用試験を行った。対象はアトピー性皮膚炎患者21例(ジアミド誘導体配合入浴剤使用群13例,対照入浴剤使用群8例)で,入浴剤を3~6週間使用させ,身体部位の乾燥症状や痒みに対する効果を検討した。その結果,1.対照入浴剤使用群では「乾燥」および「落屑」において有意な改善効果が認められたのに対し,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群では「乾燥」,「落屑」に加え,「そう痒・そう破痕」および「角層水分量」において有意な改善効果が認められた。2.特に高頻度(毎週4回以上)の使用患者では,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群(7例)において「入浴中のかゆみスコア」の改善傾向と「入浴後のかゆみスコア」の有意な改善が認められたのに対し,対照入浴剤使用群(7例)においてはいずれも有意な改善を認めなかった。また,「入浴後のかゆみスコア」の改善を示す症例数は,ジアミド誘導体配合入浴剤使用群の方が対照入浴剤使用群と比較し,有意に多かった。以上の結果より,ジアミド誘導体を配合した入浴剤の使用は,アトピー性皮膚炎の治療において一つの有用な補助療法となる可能性が示唆された。
著者
北村 玲子
出版者
山梨医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

メラニンは皮膚の色調を支配する因子の一つであり、メラノサイトのメラニン合成は周囲からのサイトカインやホルモンによって調節されている。なかでも周囲のケラチノサイト由来のサイトカインはメラノサイトの増殖、分化に関与していることが報告され、色素異常症の病因に関与している可能性がある。我々は色素異常症の患者皮膚を用いてメラノサイト増殖、分化に関わるサイトカインであるSCF、ET-1、GM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現を免疫酵素抗体法及びRT-PCR法を用いて検討した。その結果、色素脱失症である尋常性白斑患者の皮膚では正常部に比べ白斑部表皮において免疫酵素抗体法ではその発現に明らかな差はみられなかった。しかしRT-PCR法を用いて正常部及び白斑部の表皮におけるサイトカインのmRNAの発現を検討したところ白斑部においてメラノサイト増殖に関わるサイトカインであるSCF、ET-1の発現はむしろ増加していた。またGM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現に明らかな差はみられなかった。次に尋常性白斑患者の正常部、境界正常部、境界白斑部、白斑中央部メラノサイトにおける前述のサイトカインのレセプター(c-kit、ET-BR)及びメラノサイト関連蛋白であるチロシナーゼ、S100蛋白の発現をこれらに対する抗体を用いて免疫酵素抗体法を用いて検討した。この結果境界白斑部では、他に比べてc-kitの発現が有意に減少し、白斑中央部ではこれら蛋白の発現は認められなかった。このことから尋常性白斑患者における病変部でのメラノサイト消失の要因としてメラノサイト上のc-kitの発現異常が関与している可能性が示唆された。