著者
中村美知子
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
no.15, pp.35-41, 1998
被引用文献数
2

類似エネルギー(約600kcal )でPFC(protein :fat :carbohydrate)比の異なる食物を,異なる日の朝食として健常者(n=7)が摂取し,食後の空腹感と血中脂肪酸・アミノ酸濃度の変化を調べた。その結果,食前は3回とも空腹感が強かったが,食後に満腹感を強く感じたのは蛋白食で,ついで脂質食であり,両食後5時間を過ぎても食前と比較して空腹感が強くはなかった。炭水化物食摂取5時間後は空腹感が強く耐えられない者が多かった。満腹感と有意の正相関を示したのは血清トリグリセリドとインスリン濃度であり,負相関があったのは血清総タンパク濃度だった。血漿アミノ酸は,蛋白食後に必須アミノ酸(EAA)が有意に上昇し,それとともに満腹感が増強する傾向にあり,EAAのすべてと満腹感,特に分枝鎖アミノ酸のLeu,Ile,Val や芳香族アミノ酸のPhe ,Tyr と相関が高い傾向であった。満腹感と血漿脂肪酸濃度との関係は,リノール酸とα-リノレン酸のみが満腹感と有意な正相関を示した。
著者
渡邉 タミ子 鈴木 奈緒 長嶋 純子
出版者
山梨医科大学
雑誌
紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.47-53, 2001
被引用文献数
3

本研究は,父親の育児認識や協力状況を把握し,さらに父親との意志疎通と母親の育児への満足度との関連性を明らかにすることを目的とした。その研究方法は,自記式質問紙法で保育園に通っている0~4歳児までの両親230組を対象にして実施した。その結果は,有効回収率が230組中140組(60.9%)で,以下のように要約される。1.父親の協力に対する母親の育児満足は,1日の対話時間が長い程,有意に高い傾向にあった。2.父親の育児協力の中で毎日行う行為は,「入浴の世話」40%,「遊び相手」36%,「啼泣時」19%の順で高かった。「時々する」行為の割合は,全項目共60~70%の割合であった。3.父親の育児観は,「夫婦主体」が全体の70%で,「妻が主体,夫は補助」の30%を大きく上回った。また,役割分担では,「自然に決まった」が全体の30%で,「話し合う」が9%とかなり少なかった。
著者
塩澤 全司 高橋 昭
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.10-19, 2000

向坂兌(1853年4月~1881年6月)は,明治維新に活躍した日本の法曹界の偉人である。28歳で夭逝したため,現在その名を知る人は少ない。向坂は佐野藩に育ち,明治3年に貢進生となり,大学南校に進み,東京開成学校で学び,学力優秀であった。入江陳重,岡村輝彦らとともに,明治9年に第2回文部留学生として英国に留学し,Middle Templeにて法律を学び,明治12年に英国の法廷弁護士・バリスター(barrister)の資格をとる。その後,ヨーロッパ各国を歴訪し,明治14年5月に帰国したが,肺結核のため,同年6月14日に他界した。夭逝を悼む人が多く,顕彰碑が建てられた。これは戦争で戦火に破損されてはいるが,今も龍巌寺に存在する。向坂兌の姉は「升」といい,名古屋大学第三代学長勝沼精藏の祖母である。升は,夫・精之允が35歳で自害し,息子・五郎が40 歳で遭難死したため,孫の精藏と六郎を養育した。国際的な活躍をし,多くの人々を導いた勝沼精藏は,若くして他界した向坂兌の遺影を大切にしていた。
著者
大矢正算 木戸啓 小松紀
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-26, 1988

著作者の意向により本文は非公開です。冊子版をご覧ください。 昭和61年2月13日、狩猟会のリーダーである50歳の男が山梨県の南アルプス山中でイノシシ狩中ライフル銃が暴発して死亡したとの届け出が警察になされた。法医解剖により、被害者には背面腰部に遠射による射入銃創が、陰茎根部直上に射出銃創が認められた。めずらしいことに陰茎包皮内に再貫通銃創もみられた。死因は腸および腸間膜破裂ならびに腰仙椎の粉砕骨折による腹腔内出血と考えられた。凶器は口径約8mm前後の小銃であると推定された。警察での取調べの結果、加害者は狩猟会の仲間の1人である43歳の男であることがわかった。彼は被害者をイノシシとまちがえ約70mほどの遠距離から口径7.8mmのライフル銃で射ってしまったと告白した。後の現場の見分によっても、被害者はおそらくしゃがんでいる姿勢で、背面を射たれたことが確かめられた。 On 13 February 1986, there was a report to the police that a 50-year-old man, leader of a hunting party ,accidentally shot himself to death with his rifle while hunting wild boars in the South Alps of Yamanashi Prefeture. Medicolegal examination revealed that the deceased sustained a distance entrance gunshot wound in the lumbar region of the back and an exit wound just above the root of the penis. A remarkable re-penetrating gunshot wound through the prepuce of the penis was seen, too. The cause of death was considered to be an intra-abdominal haemorrhage due to ruptures of bowels and the mesenterium as well as crush fractures of the lumbo-sacral vertebrae. The wearpon was determined to be a firearm of about 8 mm calibre. Crime investigation by the police disclosed that the assailant was a 43-year-old man, a member of the hunting party. He confessed that he misstook the victim for a wild boar and shot the victim with his rifle of 7.8 mm calibre at a range of about 70 m. Subsequent investigation of the scene confirmed that the victim had been shot in the back probably in a squatting posture.
著者
佐藤 章夫 金子 誉 王 培玉 上島 弘嗣 多和田 真人 岡山 明
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

まず、平成11年に遊牧民地区を調査した。モンゴル遊牧民の血圧水準は非常に高く、収縮期血圧が男性で141±23、女性で136±27と高く、さらに年齢階級別に示すと加齢に伴う収縮期血圧の上昇が日本に比べ男女とも大きいことが判明した。拡張期血圧も同様の傾向を示した。これらの遊牧民の血圧値は、脳卒中の多かった1965-1970年前後の秋田県住民の水準とほぼ同様の値を示すという結果となった。また、高血圧者の頻度も、現在の日本と性・年齢階級別に比較しても約2-10倍程度高いことが判明した。血圧を上昇させる要因の一つとして、塩分摂取量が多いことがあげられる。尿中ナトリウム排泄量から推定される遊牧民の塩分摂取量は男性で約17g/日、女性は約15g/日と非常に高いものであり、かつての秋田と同等の水準であることがわかる。また、遊牧民における糖尿病の調査結果は、304名中に、5名が糖尿病型、7名が境界型。年齢調節した遊牧民糖尿病の割合(2.1%)は、同じ自治区の都会住民のそれ(3.8%)に比べて低かった。次は、平成12年の同じ自治区のモンゴル族農民の調査を行った。モンゴル族農民の血圧水準は収縮期血圧が男性で125±15、女性で126±20;拡張期血圧が男性で80±10、女性で81±13、男女とも遊牧民の血圧水準より有意に低かった。農民の塩分摂取量は男女とも13g/日で、遊牧民のそれに比べて低い水準であった。また、農民における糖尿病の調査結果は、340名中に、8名が糖尿病型、18名が境界型であった。年齢調節した農民の糖尿病の割合(2.2%)は遊牧民と比ぺて差がなく、境界型の割合(4.7%)は遊牧民のそれ(2.1%)より高かった。平成13年に、栄養調査のデータを解析した。三大栄養素の摂取割合は、遊牧民には、脂肪が約35%、タンパク質が14%、糖質が51%;農民はそれぞれに10%、10%、80%であった。その結果が出る次第に、さらに遊牧民および農民の食生活と高血圧と糖尿病の関連について分析する。つまり、遊牧民の食事は高脂肪/低糖質なものに対し、農民には、低脂肪/高糖質の食事を取っている。本調査の結果から、モンゴル族遊牧民と農民の生活習慣病の現状は、糖尿病の有病率が遊牧民と農民のいずれも2%という低い水準であったが、高血圧に関しては、遊牧民の有病率が著しく高かった(やく50%)。その原因は食塩の多量摂取にあると考えられる。
著者
王 培玉 金子 誉
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

最近数十年、食生活の欧米化によって、糖質の摂取量が減らしつづけている。このことが日本における糖尿病増加の原因の一つと考えられる。申請者の実験によると、健康な若者でも、糖質の少ない食事によって耐糖能が悪化し、糖尿病と判定されかねないケースが約30%あった。このような低糖質による耐糖能の悪化が将来糖尿病に進展するのか否かを検証することは糖尿病の予防という実際的観点からも興味深い。ヒトでこれを確認することは不可能である(20-40年かかる)から、ラットをもちいて検証したいと考えている。実験方法は、9週令の雄性Wistarラット40尾を1週間馴化した後、ランダムに2群に分けた。実験群は低糖質/高脂肪食(糖質10%、蛋白質25%、脂肪65%)で、対照群は普通食(糖質60%、蛋白質25%、脂肪15%)で飼育した。2ヶ月ごとに腹腔内糖負荷試験(IPGTT)を行った。血漿インスリン濃度も測定した。飼育開始14ヶ月後、実験群の空腹時血糖値が対照群に比べて有意に高くなった。負荷後2時間値は、飼育2ヶ月後から実験群の方が対照群より高く、その後両群間に差が次第に大きくなり、実験終了時には実験群が256±44mg/dl、対照群が196±25mg/dlであった。血糖曲線下面積(AUC)においても、実験群の方が対照群より高かった(292±48vs183±34mg/dl・hr)。空腹時血漿インスリン濃度は、12ヶ月までは実験群の方が対照群(C-F)より高かったが、負荷後30分の血漿インスリン濃度は、実験群が対照群に比べて有意に低かった。体重は、飼育開始3ヶ月後から実験群の方が大きくなったが、14ヶ月後から急激に減少した。また、Woleverらのラット糖尿病型の判定基準(負荷後の最大血糖値>300mg/dlまたは負荷後2時間値>200mg/dl)によって分類すると、実験終了時には対照群ラット17尾中4尾が糖尿病型であったが、実験群では18尾中16尾が糖尿病型で、著しい差が認められた。結論を言うと、低糖質/高脂肪食でラットを長期間飼育すると、耐糖能が悪化し、インスリン分泌が低下して糖尿病型となる。
著者
渋谷 昌三
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.87-96, 1998

本論文ではaging に関する展望を試みた。aging についての社会心理学的な問題点を次の観点から考察した。(1) 老人イメージの歴史的な変遷とaging への適応,(2) 高齢者の孤独感と幸福感,(3) 結婚生活の変化の問題,(4) aging と性格特性との関係。本論文でとりあげたaging に関する論文からaging についての問題提起をすることができた。
著者
小玉 正弘
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
no.3, pp.50-56, 1986

宇宙線によって大気中で生成された二次宇宙線中性子つまり大気中性子が土壌中を伝搬するとき、土壌成分だけでなく、土壌中に含まれる水分による散乱と吸収の影響を大きく受けて減衰する。大気中性子と土壌水分量との定量的関係を地表からの深さの関数として実験的に求め、前者が後者のリモートセンシングに利用できる可能性を示す。地表面上下附近での大気中性子の振舞を考察しつつ、宇宙線の土壌科学的応用について述べる。
著者
キャラカー リチャード ラッセル
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
no.14, pp.61-65, 1997

Foreign language teaching in universities, like other disciplines is dependent upon the continuous evaluation of its students. Testing of language skills traditionally utilizes line item multiple choice questions types due to its ease of administering and evaluation. Students often view such examinations with a combination of anxiety and disinterest, rarely retaining any learning benefits. In addition, such test types do not get at all the skills acquired in spoken language classrooms. A different testing method is required which both adequately evaluates students' oral English proficiency, and raises students' interest in learning the language. Tests that are both motivating and serve the administrative interests of the institution and the students should be the goal of all English language classes.
著者
伊勢崎 美和 高野 和美 望月 優子
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.71-75, 1999

高齢患者のQOL(Quality of Life;生活の質)が満たされていることが重要であると言われているが,今回QOLのうち,特に主観的幸福感とADL(Activities of daily living;日常生活動作)との関係を明らかにするために,以下の調査を行った。方法は,本学医学部附属病院に入院あるいは通院中の,60歳以上の男女36 名を対象とし,QOLすなわち主観的幸福感にはPGC-L スケール,LSI-K スケール,ADLの評価には日常生活動作テストの尺度を用いて,面接法で実施した。その結果,主観的幸福感はADL(更衣動作と食事動作)と本人の楽観的な考え方と関係していた。更に,主観的幸福感はADLの更衣動作と負の関係であったことから,医療者の関わりが反映しやすいことが考えられる。
著者
村松 仁 森 千鶴 永澤 悦伸
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.42-47, 2000
被引用文献数
5

近年,香りの人体へ及ぼす影響について検討した研究により,様々な効果があることが明らかとなってきている。その中に不安の軽減やストレス軽減などの精神面への効果がある。この精神面に対する効果を精神看護に応用することは,精神看護の幅を広げることにつながり,非常に意義深いことと考える。今回はその基礎的なデータを収集する目的で,精神的ストレスがある状態でグレープフルーツの香りを提示した場合,どのような影響が起こるのかを実験により検証した。その結果,グレープフルーツの香りには,心理指標において状態不安を軽減し,覚醒水準を上昇させる傾向があり,リラクゼーションに応用できる可能性があることが示唆された。
著者
川田 殖
出版者
山梨医科大学
雑誌
山梨医科大学紀要 = 山梨医科大学紀要 (ISSN:09105069)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-51, 1987

新約聖書の生命観は旧約のそれを前提し、ある点でそれにとって代っている。本稿は新約聖書記者の関係記事を検討して、そこに見られる生命観の特質を明らかにしようとする試みである。イエスの奇蹟物語と譬話の叙述には、生命の創造者・維持者たる神との正ししい関係に人を生かす「神の国」の現実的到来の事実が示されている。また初めからイエスを霊的存在としてとらえたバウロにとって、イエスは救い主・キリストであるとともに、人間生命のいっそう大きな広がりを啓示する存在であった。福音書記者ヨハネにとってイエスは神の子であり、神に至る道であり、復活であり、生命であり、彼を信ずる者は死を味わうことなき「神の国」で永遠の生命を現に受けている。以下この枠組の中で新約聖書の病気観、死生観、復活観が論じられ、キリスト教の信仰・希望・愛の究極的基礎たる終末論的生命観の検討をもって結ばれる
著者
石束 嘉和 碓井 章 石束 嘉和
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

月経時に出現する睡眠障害の詳細を調べた。平成8年度は主に実態調査を中心とした研究を行い、月経に関連して多くの女性が睡眠の変動を自覚していることが明らかになった。またその際に、月経に関連して、主に過眠症状が出現することが明らかになり、月経随伴睡眠障害は月経随伴「過眠」障害と言い得ることがわかった。平成9年度と10年度は、主にこの月経随伴「過眠」障害の対処法の検討を行った。この睡眠障害を呈するものは主に妊娠と関係する年齢層の女性であることから、催奇形性を懸念することが多い。そこで薬物療法以外の対処法の可能性について検討した。平成9年度は高照度光照射療法の有効性についての検討を行った。方法としては、日常的に月経時に眠気が増強する以外は問題のない成人女性を対象とし、高照度光を、就床前の2時間、あるいは起床後の1時間半に照射した。非月経時、月経時(光なし)、月経時(就床前の光)、月経時(起床後の光)の4つの時期で、諸検査の結果を比較した。測定したいずれの指標でも劇的な変化は見られなかったが、OSA睡眠調査票で途中覚醒を反映する因子が、非月経時に比較して月経(光なし)で悪化し、光照射で改善した。また、24時間中の睡眠時間が、非月経時に比較して月経(光なし)で延長し、光照射で非月経時のレベルに戻った。しかもその変化は夜間睡眠でではなく、昼間睡眠でのものだった。このようなことから、高照度光照射療法は、月経随伴睡眠障害の過眠症状に多少なりとも効果があると結論した。平成10年度は、同じく過眠症状に対する日中の仮眠の効果について検討した。方法は、先の高照度光と同様の被検者に、日中30分の仮眠をとらせた。非月経時、月経時(仮眠なし)、月経時(仮眠あり)の3つの時期で諸検査の結果を比較した。その結果、仮眠をとったあとの自覚的眠気尺度が仮眠をとらないときに比較して低下することがわかり、月経時の眠気に対しては積極的に仮眠をとることが推奨される。
著者
神庭 重信 竹内 潤一 久保田 正春
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

躁うつ病は、一般住民の5〜15%が障害に罹患するといわれる高頻度な疾患である。また、働き盛りを襲う疾患であることから、本人や家族の苦悩は大きなものがある。死亡率が高く、ガン患者など身体疾患患者におけるうつ病の合併も多く、したがって、躁うつ病の原因解明と予防法の確立は急務であるといえる。本研究では躁うつ病の原因の解明をめざして、二つの研究目標を設定した。第一には躁うつ病の発生と強くかかわっていることが考えられる、視床下部機能の障害を明らかにすることである。また、躁鬱病の病態を明らかにするために、遺伝子組換え技術を用いてモデル動物を作成し、この検討を試みた。1)躁鬱病と関係すると考えられる視床下部-下垂体-副腎皮質系の中でも、視床下部のバソプレッシンの制御にかかわる、脳内サイトカインの影響に関して検討をおこない、報告し、また本報告書でまとめた。2)躁うつ病の病態と深くかかわっていると考えられる、視床下部-下垂体-副腎皮質系の異常に関する所見と、上記1の結果をまとめて報告した。3)ムスカリンM5受容体のアンチセンス核酸を投与した動物に関する検討結果を報告し(文献一覧9)、また、遺伝子組換え動物を用いた研究の問題点や、アンチセンス核酸による検討過程と、その問題点を報告し、まとめた。
著者
大西 正俊 大月 佳代子 一條 尚
出版者
山梨医科大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研究ではハイドロキシアパタイトの臨床応用、特に下顎骨再建について検討し以下の結論を得た。I.動物実験による検討成犬下顎骨による顎骨欠損部への補填実験の結果、下顎臼歯部15mmの欠損部の補填では約8週でアパタイト多孔体は近心、遠心両側からの気孔内に至る骨形成により埋めつくされる所見を得た。この場合の骨形成性は顎骨とアパタイト多孔体との固定に大きな関連性があることから、動物実験系での顎骨、頬舌側固定法であるダブルプレ-ト法を開発した。II.臨床応用-下顎骨再建症例の経過観察動物実験の結果をふまえて、臨床応用したアパタイト多孔体ブロックによる下顎骨再建例は現在までに29例、そのうち区域切除後の架橋補填7例での検討から、補填部の骨形成状態はX線所見、骨シンチグラムより推測しうること、またそのうちの1剖検例(73才女性)より高齢者に於ても骨形成が行なわれていることが明らかとなった。これらのことから、一定期間後のX線、骨シンチグラム所見から骨形成性を診断し、その結果によっては補填材としての再建プレ-トの除去が可能となる症例を経験した(35才男性、59才女性)。III.再建下顎骨に対する補綴的処置の検討下顎骨再建29例に対してはほぼ全例再建部への通常の補綴装置の装用を行っており、良好な結果を得ている。以上の検討より、アパタイト多孔体の補填部は骨伝導による骨形成が期待しうること、骨形成がある程度行われた時点で補強材チタンプレ-トの除去は可能で相応の物性が得られること、術式は骨移植に準じるが、人工骨との強固な固定が重要であることなどが確認された。本研究からもアパタイト多孔体は下顎骨再建用の人工骨として十分に臨床適用可能な材料であることが明らかとなった。
著者
佐藤 章夫 田坂 捷雄
出版者
山梨医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

1)新潟県下のトリクロロエチレン作業者を対象にしてトリクロロエチレン暴露と消化器症状および強皮症様症状の出現頻度との関係を調べた。腸管嚢腫様気腫と関連の深い症状(腹部膨満感、排ガス、腹痛、交代性便通異常、泡沫状粘血便)は女性のトリクロロエチレン作業者に症状合併率が有意に高かった。強皮症様症状(手足・顔・体幹の皮膚の硬化、指の皮膚が硬くつっぱる、指のこわばり、寒さで皮膚が変色する)の合併率は男女ともトリクロロエチレン作業者に多いことが確認された。また、長野県下で行った同様の調査で、トリクロロエチレン作業者における腹痛と腹部膨満感の訴え率とトリクロロエチレン暴露の間に量ー影響関係が認められた。2)腸管嚢腫様気腫新発生4例の作業環境を調査するとともに、長野県下で過去に発生した15例(計19例)の腸管嚢腫様気腫症例の労働衛生状況について調査した。その結果、多くの症例がトリクロロエチレンと同時に高濃度のメタノ-ルに暴露されていることが判明した。トリクロロエチレンとメタノ-ルの混合暴露が腸管嚢腫様気腫の発生にどのような影響を与えるか検討する必要が示唆された。3)トリクロロエチレンとメタノ-ルを単独あるいは混合して経口的に与え、腸管の変化を観察した。2回のバリウム注腸・X線検査で腸管に変化は認められなかったが、トリクロロエチレンあるいはメタノ-ル群の腸管(下降結腸)の粘膜下組織あるいは漿膜下組織に浮腫が認められた。同一部位から採取したコントロ-ル群には全く認められなかったので、この変化はトリクロロエチレンあるいはメタノ-ルの投与によって起こったものと思われる。しかしこの変化が腸管嚢腫様気腫とどのような関係にあるのか不明である。
著者
北村 玲子
出版者
山梨医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

メラニンは皮膚の色調を支配する因子の一つであり、メラノサイトのメラニン合成は周囲からのサイトカインやホルモンによって調節されている。なかでも周囲のケラチノサイト由来のサイトカインはメラノサイトの増殖、分化に関与していることが報告され、色素異常症の病因に関与している可能性がある。我々は色素異常症の患者皮膚を用いてメラノサイト増殖、分化に関わるサイトカインであるSCF、ET-1、GM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現を免疫酵素抗体法及びRT-PCR法を用いて検討した。その結果、色素脱失症である尋常性白斑患者の皮膚では正常部に比べ白斑部表皮において免疫酵素抗体法ではその発現に明らかな差はみられなかった。しかしRT-PCR法を用いて正常部及び白斑部の表皮におけるサイトカインのmRNAの発現を検討したところ白斑部においてメラノサイト増殖に関わるサイトカインであるSCF、ET-1の発現はむしろ増加していた。またGM-CSF、bFGF、IL-1、TNF-αの発現に明らかな差はみられなかった。次に尋常性白斑患者の正常部、境界正常部、境界白斑部、白斑中央部メラノサイトにおける前述のサイトカインのレセプター(c-kit、ET-BR)及びメラノサイト関連蛋白であるチロシナーゼ、S100蛋白の発現をこれらに対する抗体を用いて免疫酵素抗体法を用いて検討した。この結果境界白斑部では、他に比べてc-kitの発現が有意に減少し、白斑中央部ではこれら蛋白の発現は認められなかった。このことから尋常性白斑患者における病変部でのメラノサイト消失の要因としてメラノサイト上のc-kitの発現異常が関与している可能性が示唆された。
著者
南澤 汎美 渡辺 みどり
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究は新設の看護学科が将来付属病院を中心としてどのような看護を開発してゆく必要があるかについて考える資料にするために、当該病院を利用している入院患者の実態を知るとともに看護婦の独自な機能役割の一つとして将来とも重要な終末期の看護について大学病院という従来、先端医療を掲げてきた場所で殆ど重点が置かれて来なかった領域を実際にこれに携わってきた看護婦の意見を通じて考察することである。今年度はこの後半の目的のために、当該病院に3年以上勤務している看護婦を対象としてアンケート調査を行った。質問紙の内容構成は看護婦個人の臨床経験歴および終末期看護についての関心度、実際に自分が経験したターミナルケアの中で評価できると考える看護事例の内容とその理由、もしあれば逆に評価できない事例の内容とその理由を記述する、そして現実にターミナルケアを行う上で当院で困難があると考える問題は何か、それらを総合して大学の付属病院で終末期看護を進めることが望ましいと考えるか否かについて意見を求めた。約100名の看護婦から回答が得られた。半数以上の看護婦が5年以上当該病院での経験者であった。43名の看護婦が良い看護ができたと評価できる事例を記述しており、34名が良くなかったという事例を記述していた。回答した大部分の看護婦は終末期看護については積極的に取り組みたいとしているが、最終的に当該病院もその一つである大学付属病院で終末期看護を行うことについては意見があい半ばした。この理由を明らかにするために調査の記述についての分析をもう一歩深めることが必要と考えている。
著者
坪井 良子 石川 ふみよ 平尾 真智子 奥宮 暁子 佐藤 公美子 村松 仁
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究期間を通して,国立国会図書館所蔵のGHQ/SCAP Recordsから公衆衛生福祉局(PHW),民間情報教育局(CIE),民間史料局(CHS)及び経済科学局(ESS)のSheetsから,看護改革に関連する英文書を検索・収集し,分析を行ってきた。平成13年度に翻訳したNursing Education Council(看護教育審議会)の第1回から第6回分(1946.3〜1946.6)の会議録,議事録を統合して,看護教育改革の経緯を明らかにした。さらには,Council on Medical Education(医学教育審議会)の翻訳も進め,両方の会議のあり方,審議内容,その経緯など,関連性を追究してきた。これら会議での決定方針を具現化した,看護のモデルスクールであるTokyo Demonstration school of Nursingにおける設立時の教育内容(カリキュラムを含む)を見出し,占領初期の看護教育改革の実施過程を明らかにした。また,占領当時GHQ/SCAPに関与した看護職や占領期研究者へのインタビューを行った。研究活動の主な成果は,医学・看護系学会の学術集会で発表してきた。そして,従来の日本側の看護改革研究にGHQ/SCAP文書からの視点を加えて,新たな知見を提言した。特に,看護教育の改革構想に影響を与えた参加者名及び発言内容を明らかにしたことで,GHQ/SCAP, PHWが遂行した看護改革の意図,目標及び目的,経緯が明らかになり,今後の研究発展のための基礎資料となった。