- 著者
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北村 義浩
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、(+)一本鎖RNAをゲノムとして有するレトロウイルスである。レセプターを介し標的細胞に進入した後、感染細胞の細胞質でゲノムRNAは逆転写酵素(RT)によって線状2本鎖DNAに変換される。この相補DNA分子はHIVの組み込み酵素(IN)を含む様々なタンパク質とともに巨大な核酸・タンパク質複合体(組み込み前複合体PIC)を形成する。しかし、この構造について、相補DNA、RT,INが含まれること以外はほとんど分かっていない。PICにVpr、MA、などウイルスタンパク質の他、さらに、宿主のHMG-I (Y)タンパク質などが共存しているという報告が散見されるもののその報告者とは異なる研究者による厳密な検証はなされていない。メカニズムは不明であるが、PICは細胞質から細胞核に移行し、細胞核内で宿主ゲノムDNAに組み込みを起こしてプロウイルスとなる。逆転写反応以降のステップのメカニズムを明らかにし、これをベクター開発に応用することを目的とし研究を行った。HIVのウイルス中央多プリン配列(cPPT)を挿入したHIVベクターの遺伝子導入効率はそのcPPTの長さあるいは、cPPTの近傍領域の配列に依存する場合があることを示した。従来の定説ではcPPTは核移行効率に関わるとされていたが、そうではなく核移行後のなんらかのステップに重要であることを明らかにした。cPPTの近傍領域にはHIVベクターのRNA量を低下させる働きのあることも明らかにした。