著者
畑野 相子 北村 隆子 安田 千寿
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、認知症高齢者の行動・心理学的症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia :以下 BBPSD とする)に対する非薬物療法として、赤ちゃん人形を用いたケア(以下人形療法とする)を展開し、その効果を科学的に実証することを目的とした。様々な BPSD を有する高齢者に人形療法を行い観察した結果、焦燥感や暴言・暴力の緩和に最も効果があった。人形に対する態度や言葉を分析した結果、人形の意味として(1)現在と過去の自分の存在をつなげる役割(2)気持ちの移行対象(3)高齢者自身が能動的に働きかけができる存在であることが示唆された。また、療法のポイントは、(1)高齢者が好みの人形を選択できること(2)導入は、自尊心に配慮して、対象者のために人形を準備したのではなく、セラピストの人形として提示すること(3)人形と高齢者の目線をあわせること(4)人形を渡し放しにするのではなく、療法として人形を用いることである。共通して好まれた人形は、目が開眼しているまたは開閉することであった。