著者
生田 奈穂 畑野 相子 蓑原 文子
出版者
滋賀医科大学
雑誌
滋賀医科大学看護学ジャーナル
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.29-35, 2016-03-31

本研究は、死期が迫った患者の心理面への看護の実際の特徴とそれを支える要因を記述することを目的とした。緩和ケア認定看護師3名を対象とし、半構成的面接調査を行い、逐語録を作成し、看護の実際とその要因分析を行った。 その結果、97の語り、34のサブカテゴリー、15のカテゴリーが得られた。看護の実際では、【希望を具体的に聞き取るように情報収集】【その人らしさを支えるように条件整備】【信頼関係が築けるように普段の会話】【自身の介入分野を見極めてスタッフと協働】【告知や死の受け入れ方に合わせて対応】【死に関する発言を受け止めて寄り添う】【患者のこれからの過ごし方を模索】の7つ、看護を支える要因では【緩和ケアに関する知識とその実践】【看取りの経験を知識に変える努力】【安心して逝ってもらえたと思えた体験】【看護師仲間での看取りの振り返り】【死との向き合い方の振り返りと模索】【死を否定せず生物体の死としての受け止め】【死に関する応答は自分自身が技術やスキル】【死生観を高めるためには日々の精進】の8つのカテゴリーが得られた。この中で終末期看護の特徴的なものとして【希望を具体的に聞き取るように情報収集】【告知や死の受け入れ方に合わせて対応】【死に関する発言を受け止めて寄り添う】が抽出された。
著者
畑野 相子 北村 隆子 安田 千寿
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、認知症高齢者の行動・心理学的症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia :以下 BBPSD とする)に対する非薬物療法として、赤ちゃん人形を用いたケア(以下人形療法とする)を展開し、その効果を科学的に実証することを目的とした。様々な BPSD を有する高齢者に人形療法を行い観察した結果、焦燥感や暴言・暴力の緩和に最も効果があった。人形に対する態度や言葉を分析した結果、人形の意味として(1)現在と過去の自分の存在をつなげる役割(2)気持ちの移行対象(3)高齢者自身が能動的に働きかけができる存在であることが示唆された。また、療法のポイントは、(1)高齢者が好みの人形を選択できること(2)導入は、自尊心に配慮して、対象者のために人形を準備したのではなく、セラピストの人形として提示すること(3)人形と高齢者の目線をあわせること(4)人形を渡し放しにするのではなく、療法として人形を用いることである。共通して好まれた人形は、目が開眼しているまたは開閉することであった。